名も無き世界のエンディング
神戸大丸の東、イルミネーション輝く京町筋をサンタクロースの赤い服を着て歩く男。このシーンから始まる佐藤祐市監督の『名も無き世界のエンドロール』がメチャおもしろい。原作は行成薫が小説すばる新人賞を受賞した同名のデビュー小説。伊坂幸太郎や米国のサスペンスを思わせる極上のエンタテインメントです。
小学生のころからずっと一緒につるんでいたキダ(岩田剛典)とマコト(新田真剣佑)。そこに転校生のヨッチ(山田杏奈)が加わる。それぞれに複雑な家庭環境を抱えた3人。まわりになじめない3人は、傷をなめ合うように彼らだけの親密な世界を築いていく。小さいけれどそこが幸せのすべて、日々の喜びのすべてだった。
ひんぱんに交錯する現在と過去。時制の変化と予期せぬ展開に振り回されながらも、いろんな事実が浮かび上がってくる快感に酔う。佐藤監督の演出の妙です。整備工場に持ち込まれた高級車。泡が噴き出る缶コーラ。交通事故にあった犬。そして突然いなくなったヨッチ。はたして物語はどこへ向かっていくのか。
数年後、再会したキダとマコト。それぞれ表社会と裏社会でのし上がっていた2人は、憧れのトップモデルへのプロポーズ大作戦を企てる。日本中を巻き込んだ壮大な計画。小さいころから「ドッキリ」を仕掛けるのを生きがいにしていたマコトと、いつも引っかかっていたキダ。10年におよぶ作戦の総仕上げはクリスマスの夜。
ラストのクライマックスは、ポートアイランド市民広場とポートピアホテルが舞台。本館とアネックス南館を使ったトリックも神戸っ子を喜ばせます。ヨッチがいちばん怖いのは「自分の存在が消されること」という言葉をキーにして、物語の全体像が明らかになる。真実を知ったとき、さわやかな感動が訪れます。見事なエンディング!
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