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2021年6月25日 (金)

石内都と遺された時間

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 見える見えない、写真のゆくえ。こんなサブタイトルで開催されている西宮市大谷記念美術館の『石内都展』。1978年~80年に全国に残る元遊郭を撮影した初期作品「連夜の街」シリーズから、最新の「Moving Away」や「The Drowned」シリーズまで網羅した、日本を代表する写真家・石内都の現時点での集大成となっている。

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 焼け焦げた衣服や、煤で汚れた道具。代表作「ひろしま」は被爆者が身に着けていた衣服や遺品を撮影したシリーズです。それは戦争の悲惨さや原爆の残酷さを伝えるだけの作品ではない。モノをいつくしむように撮られた写真からは、その持ち主の記憶やかつて存在したはずの日常の息づかいが見えてくるのだ。

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 そこからは死のイメージではなく、もっとポジティブな生の喜びが伝わってくる。愛に包まれた時間。幸せの瞬間。物質の裏に隠れた、科学的には記録できないはずの何か。カメラという光学機械と現像とプリントという化学反応で。見えるものをカタチにするに過ぎない写真で、見えないものを表現できたのは石内の才能だ。

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 「ひろしま」シリーズは、広島原爆資料館に寄贈された服やカバンや靴などを撮影したもの。これまで多くの写真家が作品化しているが、どれも怖くておどろおどろしい。戦争は悪だ、原爆は神への冒涜だ、と糾弾するスタンス。石内の素晴らしい作品は、遺品の背後に存在する人々の気持ちや心にに寄り添う姿から生まれている。

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 広島原爆資料館にはいまも遺品が寄贈され続けているそうだ。だから石内都もこのテーマを撮り続けている。現在進行中で未完の「ひろしま」。まだまだ新しい作品に出会える楽しみが待っています。そのほかにもユニークで興味深いシリーズがいくつかありました。独創的なそれらについては次回お伝えしたいと思います。

石内都展
見える見えない、写真のゆくえ
2021年4月3日(土)~7月25日(日)
西宮市大谷記念美術館

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