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2021年6月13日 (日)

お殿さまに金を貸す?

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 ポスターや予告編から、おふざけ系のコメディ時代劇かと見くびって、5年前の公開時には観ていませんでした。中村義洋監督の『殿、利息でござる』。見事に予想を裏切られる感動作でした。いやぁ監督はじめ関係者の皆さん、すみません。士農工商、厳しい身分制度の時代に、町を救う熱情と親子の絆に涙しました。

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 原作は磯田道史の「無私の日本人」(文春文庫)。江戸時代を経済的側面から見直した「武士の家計簿」で、日本史に新風を吹き込んだ歴史学者の磯田さん。古文書を読み解き史実に基づいて書いている。舞台は東北の貧しい宿場町。厳しい年貢と使役で民は疲弊し、夜逃げが多発。もう町は寂れる一方です。

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 このままでは宿場はなくなる。なんとかしなきゃ、と立ち上がる人があらわれる。それにしても、この窮状から逆転を狙う秘策は、藩にお金を貸して利子をもらうこと⁉ 密かに集めるお金はなんと千両! 現代の価値で3億円。簡単に集められる金額ではない。しかも、利子で街を再建なんて企みが見つかれば打ち首は免れぬ。

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 積もる確執を克服し、お金儲けを度外視し、さまざまな苦難を乗り越えて町のために奔走する造り酒屋やお茶屋に両替商。生活を切り詰めて必死でお金を集める町の衆。涙ぐましい努力の結集は、果たして藩の上層部に届くのか。これは実話。こんな人たちが実際にいたのだ。封建社会の人々の、無私の心が胸を打つ。

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 出演は阿部サダヲ、瑛太、妻夫木聡、竹内結子、千葉雄大、松田龍平、きたろう、西村雅彦、草笛光子、山崎勉。みなさん芸達者です。立場の違い、身分の差。それぞれが親子に、友人に、商売敵になりきって、シリアスにまたひょうひょうと楽しんで演じている。ナレーションの濱田岳も肩の力が抜けていい感じです。

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 最後に出てくる伊達藩の若き殿様を演じたのがフィギュアスケートの羽生結弦選手。これはうれしいサプライズ! じつに堂々とした凛々しい演技でした。主題歌はRCサクセションの「上を向いて歩こう」。忌野清志郎のロックンロールな歌声が、虐げられた庶民が立ち上がる勇気を称えるテーマに、ピッタリはまっていました。

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