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2021年6月

2021年6月28日 (月)

石内都は皮膚を撮る

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 人間の皮膚の傷跡を撮った「Scars」と「INNOCENCE」のシリーズ。病気や事故、暴力や自損など理由はさまざまだろうけれど、肌に残る傷にはその人の人生が刻み込まれている。たとえ大きな傷でなくても、しわもカサブタもシミもその人が生きてきた履歴書のようなもの。生きた証。意味のない痕跡はないのだ。

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 自分の母が残した衣服や被爆者の遺品を撮影して、その人たちの生前の記憶や息づかいを表現してきた石内都。彼女にとって、皮膚は衣服と同じなのか。人間の本質である精神や心を覆う表面にあるモノが、使い古されたあるいは焼け焦げた衣服、と考えれば合点がいく。この考えをもっと研ぎ澄ませれば皮膚に行きつく。

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 「Scars」などと同じ部屋にランダムに展示されている「sa-bo-ten」シリーズ。種々のサボテンを思い切ったアングルでとらえた作品です。人間とはまったく似て非なるものである多肉植物の表面が、アップにすると傷ついた皮膚と実によく似ているのだ。しおれたバラの花びらに毛細血管が浮かんだような「Naked Rose」も同じ感覚。

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 メキシコ現代絵画を代表する画家、フリーダ・カーロが遺した衣服や民芸品コレクションなどの遺品が、彼女の壮絶な人生を象徴していて興味深い。なかでも義足や医療器具、左右でまったくサイズが違う靴など、小児マヒや交通事故の後遺症に苦しめられたフリーダが直接身に着けていたものに強いインパクトがある。

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 それらはフリーダ・カーロ記念館の依頼を受けた石内が撮影したシリーズです。身体性と精神性が染みついたモノの本質を発見する能力。過去の時間をよみがえらせる技法。ヒトの皮膚やモノの表面に残された傷や汚れから、生々しい情念まで拾い上げる石内都の制作意欲が、どこへ向かうのか楽しみです。

石内都典
見える見えない、写真のゆくえ
2021年4月3日(土)~7月25日(日)
西宮市大谷記念美術館

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2021年6月25日 (金)

石内都と遺された時間

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 見える見えない、写真のゆくえ。こんなサブタイトルで開催されている西宮市大谷記念美術館の『石内都展』。1978年~80年に全国に残る元遊郭を撮影した初期作品「連夜の街」シリーズから、最新の「Moving Away」や「The Drowned」シリーズまで網羅した、日本を代表する写真家・石内都の現時点での集大成となっている。

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 焼け焦げた衣服や、煤で汚れた道具。代表作「ひろしま」は被爆者が身に着けていた衣服や遺品を撮影したシリーズです。それは戦争の悲惨さや原爆の残酷さを伝えるだけの作品ではない。モノをいつくしむように撮られた写真からは、その持ち主の記憶やかつて存在したはずの日常の息づかいが見えてくるのだ。

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 そこからは死のイメージではなく、もっとポジティブな生の喜びが伝わってくる。愛に包まれた時間。幸せの瞬間。物質の裏に隠れた、科学的には記録できないはずの何か。カメラという光学機械と現像とプリントという化学反応で。見えるものをカタチにするに過ぎない写真で、見えないものを表現できたのは石内の才能だ。

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 「ひろしま」シリーズは、広島原爆資料館に寄贈された服やカバンや靴などを撮影したもの。これまで多くの写真家が作品化しているが、どれも怖くておどろおどろしい。戦争は悪だ、原爆は神への冒涜だ、と糾弾するスタンス。石内の素晴らしい作品は、遺品の背後に存在する人々の気持ちや心にに寄り添う姿から生まれている。

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 広島原爆資料館にはいまも遺品が寄贈され続けているそうだ。だから石内都もこのテーマを撮り続けている。現在進行中で未完の「ひろしま」。まだまだ新しい作品に出会える楽しみが待っています。そのほかにもユニークで興味深いシリーズがいくつかありました。独創的なそれらについては次回お伝えしたいと思います。

石内都展
見える見えない、写真のゆくえ
2021年4月3日(土)~7月25日(日)
西宮市大谷記念美術館

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2021年6月22日 (火)

ニセSF映画でイラン脱出

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 イランでまた保守強硬派の大統領が生まれましたね。ホメイニ師が主導するイラン革命で、反米の宗教国家が誕生したのが1979年。イスラム教シーア派、革命防衛隊、イスラム原理主義など聞きなれない言葉と共に、世界中に衝撃を与えた出来事です。あれから40年あまり、いろんなことが起こりましたが、始まりはコレです。

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 アメリカ大使館に暴徒が乱入し占拠、大使館員52人を人質にとる。世界の常識では外国の公館は警察や軍が警備し守る義務がある。ところがイランの場合は革命防衛隊つまり国家がデモ隊を扇動して襲撃させているのだ。そのとき6人の館員が密かにカナダ大使公邸に逃れる。この6人を無事に国外に脱出させる方法は?

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 CIAの人質救出の専門家が見事に作戦を成功させるのですが、関係者の身の安全のためにその内容は18年間封印されていたそうだ。ベン・アフレック監督・製作・主演の『アルゴ』は、奇想天外なこの救出作戦を描いた実話に基づいたサスペンス。当時のTVニュースやドキュメンタリー風の映像で、緊迫感をうまく出している。

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 では、どんな方法だったのか。それはなんと架空のSF映画(タイトルが「アルゴ」)のカナダ人撮影クルーがロケハンでイランにやって来て、2日後に出国するという計画。笑っちゃうでしょ。でも事実です。それぞれプロデューサー、監督、カメラマン、脚本家などに偽装し、名前も別名でパスポートや入国証明書も偽造する。
 
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 台本も絵コンテも用意。ハリウッドで事務所も構え、新作映画の記者発表も大々的に行って新聞記事にしてもらう。すべてがニセモノ。しかしそれぐらい徹底的にやらないとダマせない。詐欺師のコンゲームと同じ。そして79日間かくまわれていた6人は危機一髪のところスイス航空で空路チューリッヒへ脱出する。

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 大使館で人質になっていた52人は、政治交渉により444日後に解放されることになる。主役のモデルであるCIA局員は2019年に78歳で死亡。イスラム原理主義で世界の在りようを変えたイラン革命は、アルカイダやイスラム国などにも影響力を与え続いている。理解不能な価値観の違いに不気味さを感じます。

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2021年6月19日 (土)

不眠をめぐる異色スリラー

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 人間は眠れないと集中力が低下する。それが数日続けば脳が膨張して意識の錯乱を招く。そして人体のあらゆる部分が影響を受け、やがて死に至る。マーク・ラソ監督の『AWAKE/アウェイク』は、全人類を襲った不眠によるパニックを描いたSFスリラー。不眠が原因で人類が滅亡に向かう、という発想がユニークです。

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 ある日主人公が息子と娘を乗せて走っていた車は、突然コントロール不能になる。まわりの車も暴走し、街は狂ったような多重事故でカオス状態に。すべての電子機器が使えなくなるなったのだ。街全体が停電。病院も大パニックに。増幅される不安が生む破壊衝動。善良な普通の市民まで無差別の殺戮を始め出す。

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 警備員をしている母親はワケありの元軍人。娘のマチルダが眠れることに気づいた彼女は、家族で軍が警備する謎の研究所を目指す。電子化されてない古い車を探し出し、狂気の集団や囚人の群れから逃れながら走る家族の危険な冒険行。果たして娘は人類を救う救世主なのか、人体実験の犠牲者にされてしまうだけのか。

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 主演ジーナ・ロドリゲスが問題を抱えながらも勇敢に戦う母親を。アリアナ・グリーンブラットが幼いながらも聡明な娘を熱演。人間の崩壊と日常の消滅から、家族の再生へ向かう物語は感動を誘う。太陽フレアの異常によってリンパ機能が狂わされて不眠に陥る、という理由はもうひとつ説得力に欠けるとは思いますが・・・

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 パニック映画も時代に合わせて恐怖のネタに流行があるようだ。核戦争の勃発、モンスター出現、エイリアンの侵略、小惑星の衝突、未知のウイルス、人間を支配する植物、そして今回は不眠。現実の危機と近未来への不安が、次々と新たな恐怖を生み出すのでしょう。でも自分の問題として真の危機感はあるのかないのか。 

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2021年6月16日 (水)

坂本龍一の最終楽章

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 2012年から5年間、スティーブン・ノムラ・シブル監督が坂本龍一に密着取材して完成させたドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto : CODA』。日常の思索と独自の創作過程を、つまり極めてプライベートな"生”坂本を記録している。大病のことを含めて、あまり人には見せたくない部分でしょうけれど、よく撮らせたと思います。

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 世界を席巻したYMO。「戦場のメリークリスマス」や「ラストエンペラー」の音楽。NY同時多発テロ、東日本大震災と原発事故。時代から影響を受け、また時代に影響を与えながら、いろんな時の先端を生きてきた。「アーティストやミュージシャンは炭鉱のカナリアのようなものだから、感じるんだよ」と言い、社会的発言も躊躇しない。

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 津波ピアノに唯一無二の個性を認め、雨音に神経を集中させ、シンバルをバイオリンの絃でこする。楽器=人工の音で作り上げるのが音楽だ、という考えから自由になった坂本龍一は、楽器以外の音にも関心を向け、音源を求めて世界中を旅する。北極圏の氷の音。枯れ葉の森を歩く足音。そして音から音楽が立ち上がる。

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 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトウ監督「レヴェナント」の音楽やアルバム『async』については、創作の秘密を知った(つもりの)興奮でゾクゾクする。製作がこのドキュメンタリーの撮影中の事なので、まさに同時進行。語られるエピソードも生々しい。音楽が生まれてくる現場に立ち会えてよかった。(じつは映画を観ただけ)

Async

 この映画は妙に創造意欲を刺激するのだ。音楽でも美術でもいいから、無性になにか作りたくなりました。坂本龍一さんが「決まりなんてない。自分が好きなように自由にやればいい」と背中を押してくれている気がする。才能などなくても。創造の神が下りてこなくても。無から有を生み出す喜びを、自分だけの楽しみとして。

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2021年6月13日 (日)

お殿さまに金を貸す?

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 ポスターや予告編から、おふざけ系のコメディ時代劇かと見くびって、5年前の公開時には観ていませんでした。中村義洋監督の『殿、利息でござる』。見事に予想を裏切られる感動作でした。いやぁ監督はじめ関係者の皆さん、すみません。士農工商、厳しい身分制度の時代に、町を救う熱情と親子の絆に涙しました。

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 原作は磯田道史の「無私の日本人」(文春文庫)。江戸時代を経済的側面から見直した「武士の家計簿」で、日本史に新風を吹き込んだ歴史学者の磯田さん。古文書を読み解き史実に基づいて書いている。舞台は東北の貧しい宿場町。厳しい年貢と使役で民は疲弊し、夜逃げが多発。もう町は寂れる一方です。

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 このままでは宿場はなくなる。なんとかしなきゃ、と立ち上がる人があらわれる。それにしても、この窮状から逆転を狙う秘策は、藩にお金を貸して利子をもらうこと⁉ 密かに集めるお金はなんと千両! 現代の価値で3億円。簡単に集められる金額ではない。しかも、利子で街を再建なんて企みが見つかれば打ち首は免れぬ。

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 積もる確執を克服し、お金儲けを度外視し、さまざまな苦難を乗り越えて町のために奔走する造り酒屋やお茶屋に両替商。生活を切り詰めて必死でお金を集める町の衆。涙ぐましい努力の結集は、果たして藩の上層部に届くのか。これは実話。こんな人たちが実際にいたのだ。封建社会の人々の、無私の心が胸を打つ。

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 出演は阿部サダヲ、瑛太、妻夫木聡、竹内結子、千葉雄大、松田龍平、きたろう、西村雅彦、草笛光子、山崎勉。みなさん芸達者です。立場の違い、身分の差。それぞれが親子に、友人に、商売敵になりきって、シリアスにまたひょうひょうと楽しんで演じている。ナレーションの濱田岳も肩の力が抜けていい感じです。

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 最後に出てくる伊達藩の若き殿様を演じたのがフィギュアスケートの羽生結弦選手。これはうれしいサプライズ! じつに堂々とした凛々しい演技でした。主題歌はRCサクセションの「上を向いて歩こう」。忌野清志郎のロックンロールな歌声が、虐げられた庶民が立ち上がる勇気を称えるテーマに、ピッタリはまっていました。

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2021年6月10日 (木)

トム・フォードの美学

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 『イヴ・サンローラン』と、トム・フォードの監督第一作『シングルマン』を立て続けに見た感想は、モードの世界はやっぱりゲイばかりなのか、ということ。ひとつは伝記映画。もうひとつは大学教授を主人公にした監督デビュー作。どちらもゲイのお話で、超一流ファッションデザイナーならではの格別な美意識に貫かれている。

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 クリストファー・イシャーウッドの同名小説を原作にした映画の舞台は1962年のLA。16年間同棲していた恋人を交通事故で失った大学教授は、深い喪失感から立ち直れず、絶望の時間の中にいた。ふとした瞬間に記憶の断片がフラッシュバックし、哀しみは募るばかり。儚さ、切なさに耐えきれず、ついに自殺を決意する。

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 コスチュームはもちろん、乗っているクルマ、部屋のインテリア、食器や雑貨類の趣味にいたるまで、トム・フォードの美学があふれている。端正で、繊細で、ディテールに対するこだわり。滅びの美学。主人公の意識の流れのままに脈絡もなく進んでいくストーリー。しかし彼は死へ向かって確実に突き進んでいる。

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 主演のコリン・ファースがさすがの名演です。着こなし、表情、立ち居振る舞いが、めちゃくちゃカッコいいのだ。そして涙を流さず、泣き叫ぶこともなく、感情を抑えた静かな演技が悲しみをより深く浮かび上がらせる。彼の姿そのものが、まさにトム・フォードの美学。バックで流れる「ノルマ」のアリアもドラマチックで素晴らしい。

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 この映画は意外なカタチの結末が待ち受けている。新たな生きる希望を見出したところへ、突然お迎えが来るという皮肉が。でもこれで良かったと思うのだ。純愛物語の終わり方としては、また滅びの美学の締めくくりとしては。登場人物も、セリフも、時代設定も、映像表現も、すべてがトム・フォードの世界でした。

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2021年6月 7日 (月)

サンローランの光と影

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 モードの帝王と呼ばれたサンローランの生涯を、ずっと支え続けた恋人で事業のパートナーでもあったピエール・ベルジュの視点で振り返る『イヴ・サンローラン』。彼が集めた美術コレクションをオークションにかけるシーンから、ベルジェの回想が始まる。ジャリル・レスペール監督。ピエール・ニネとギョ-ム・ガリエンヌ主演。

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 クリスチャン・ディオールの後継者として、1957年、21歳にして偉大なメゾンのデザイナーになった天才。そして兵役に就いたあと26歳で自らのブランドYSLをベルジェと二人で設立。2002年に引退するまで世界のファッション界をリードする。しかし栄光の裏には、華やかな表面からはうかがい知れない苦悩と孤独があった。

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 極度の緊張とストレスから、麻薬に溺れ、危険な夜遊びと、愛人との浮気に逃避するサンローラン。そんな彼を保護してきたベルジェ。その愛は献身的であると同時に、支配的で息苦しいものでもあった。切ないラブストーリーに、センスのいい音楽がマッチする。当時を思い起させるジャズ。ノルマ、椿姫、トスカなどのアリア。

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 アルジェリア独立戦争。クリスチャン・ディオールやカール・ラガーフェルドとの交友。メゾンからプレタポルテへ。マラケシュの家。ゲイの美意識。耽美的で背徳的なニオイ。半世紀以上も前のモード界の事情と社会状況を手際よくまとめた佳作です。やたら多い喫煙シーンは気になりましたが、タバコの害悪が叫ばれる前のお話です。

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2021年6月 4日 (金)

東山魁夷、水墨の中国

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 鑑真和上座像が安置されている唐招提寺の御影堂。北側の三室には水墨画で描かれた「黄山暁雲」、「揚州薫風」、「桂林月宵」が配置されている。5度の渡海に失敗し、失明してもなお渡日をあきらめなかった強い精神に捧げられました。ちなみに墨の線とぼかしの濃淡で表現する水墨画は、唐代に成立したと言われている。

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 鑑真が目で見ることのなかった日本をみずみずしい色彩で描き、二度と帰れなかった記憶の中にある中国をモノトーンで描く。対照的な手法で表現された二つの世界。ただ単に目で見えるかどうかではなく、意識の問題として、希望にあふれる新しい世界と過去に置いてきた世界を、鮮烈にイメージさせられました。

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 寺院や教会に捧げられた美術作品は、洋の東西を問わず、そのアーティストの代表作になる場合が多い。純粋に魂の平安を祈り、全身全霊を傾けて制作するから、質の高い作品になるのは当然でしょうか。作家から見れば時代を越えて作品が残るのも魅力。この障壁画と東山魁夷の名前も千年以上残っていくことでしょうね。

東山魁夷
唐招提寺御影堂障壁画展
2021年4月24日(土)~6月9日(水)
神戸市立博物館



 

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2021年6月 1日 (火)

東山魁夷、青と緑の日本

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 奈良時代、仏教の戒律を伝えるために鑑真は苦難の末に日本渡航を果たした。そして修行の道場として創建された唐招提寺には、「鑑真和上座像」(国宝)がある。これを安置するために、千二百年忌を記念して御影堂が建立される。その障壁画の制作を依頼されたのが東山魁夷。彼は10年の歳月をかけてこれを完成させる。

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 全68面、全長80mを超える障壁画の大作。神戸市立博物館で開催中の『東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展』を観てきました。失明した鑑真が見ること叶わなかった日本の海と山の風景を描いた「濤声」と「山雲」。南側の二室に配置された、このみずみずしい青と緑を基調とした作品は、彼の代表作ではないでしょうか。

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 「日本画の色彩に、古来、最もよく使われている群青と緑青という絵の具がある。岩絵の具と呼ばれている種類で、孔雀石を粉末にしたものである。かなり鮮明な色であるが、華美という感じではなく、落ち着きと深みを持っている。」 解説にあった東山自身の文章。生涯かけて追及した気品あるブルーグリーンの世界です。

東山魁夷
唐招提寺御影堂障壁画展
2021年4月24日(土)~6月9日(水)
神戸市立博物館

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