ブルースの母、怒れる若者
昨年8月、ガンのため43歳で亡くなったチャドウィック・ボーズマン。遺作になった『マ・レイニーのブラックボトム』のエンディングでは、彼への追悼の言葉が捧げられている。オーガスト・ウィルソン(黒人の作家です)の戯曲を原作に、ジョージ・C・ウルフ監督が映画化。あらためてBLMを考えさせられる、いい映画でした。
1927年シカゴ。黒人というだけで、不信の眼でジロジロ見られたり、嫌がらせを受けたり。いまよりもっと露骨で厳しい差別。そんな状況下、ブルースの母と称される人気絶頂の歌手 マ・レイニーのレコーディングが始まろうとしていた。彼女とバックバンドが不協和音を奏でながらも、スタジオ録音を終えるまでを描く。
白人のレコード会社員やマネージャーに傲慢な態度でわがままを通すマ・レイニー。それは決してスター気取りの思い上がりから来るのではない。自分の流儀で差別と戦っているのだ。「彼らは金になるなら黒人を利用するが、それ以外は野良犬以下の扱いしかしないんだ」と告げる彼女。ヴィオラ・デイヴィスが迫力の演技です。
チャドウィック・ボーズマン演じる野心家の若きトランぺッター。軽そうな若者に見える彼も、子どものころに差別で負った心身の傷が深く刻まれている。緊張感のある会話。怒り! 泣き!喚く! 祈っても助けてくれなかった理不尽な神に対する感情の爆発。あふれる才能と狂気、それらの激しい心の動きを表現して見事です。
あらゆるカタチの黒人差別と、白人至上主義が常態の社会。それに反発したり、従順なふりをしたり。白人との接し方も人それぞれに違う。絶望と諦め。しかしプライドは失わず。そんな黒人の魂が宿っているのがブルース。100年経っても本質は変わっていないのか。製作陣の一人にデンゼル・ワシントンも参加しています。
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