未来の子どもたちに
「2020年、新型コロナウイルス感染症による世界規模の医療や経済の崩壊。それは、戦時中の途方にくれた日々に極めて似ている」コシノヒロコは展覧会場でこうメッセージを寄せている。そして「明日への希望をつなぐために、未来の子どもたちに"ときめき"のバトンを手渡したい」。たしかに、夢のある楽しい展示がいっぱい。
展示された洋服の幾何学模様をモチーフにした錯視を使った小部屋。床も壁も揺らぎ、うねり、のたうって迫ってくる。ほんとうは垂直の平面なのだが。また何やら光の壁からニョキニョキ突き出たモノが。ナゾの宇宙生命体のようなこのオブジェは、カラフルなストッキングをはいた足。ファッションの部分を取り上げ強調している。
天女か? 妖精か? ふわふわ空中に浮かんだワイヤーメッシュでできたマネキン。淡く優しいパステルトーン、透明感のある生地でできたコスチューム。天使もいっしょに飛んでいる、軽やかな春を感じるファンタジックな展示です。コシノ 3姉妹を表しているのでしょうか、3羽の鳥が世界をめぐるシュールな映像作品もおもしろい。
体操の日本代表チームのユニフォームは、力強さと躍動感。歌舞伎の隈取をデザインのモチーフにしている。彼女は墨絵の絵画作品も多数発表していて、日本人ならではの表現にも優れた才能を発揮。多彩に、多方面に、いろんなアーティストともコラボしながら長年最前線に立ち続けてきたコシノヒロコ。再確認しました。
これはドレスの一部を撮影したものですが、素材そのものもアートでしょ。展示というマクロの視点でも、素材というミクロの視点でも、自由に好きなことを貫く姿勢は変わりません。明るく楽しく個性を表現することの素晴らしさを伝えたい。子どもたちに”ときめき“のバトンを手渡したい、という彼女からのメッセージは・・・。
「it is as it is. あるがままに なすがままに」 それは自分の心にしっかり向き合い、自身に正直に生きること。他人の意見や社会の常識にとらわれず、自分自身が見たものや考えたことをたいせつにする生き方。その先にきっと未来への希望が見えるはずだ。
コシノヒロコ展
EX・VISION TO THE FUTURE 未来へ
2021年4月8日(木)~6月20日(日)
兵庫県立美術館
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