総理大臣になれない?
2003年から2020年まで、17年間にわたり無名の野党議員を追いかけたドキュメンタリー映画がおもしろい。大島新監督による『なぜ君は総理大臣になれないのか』。香川県選出、5期目の衆議院議員を務める小川淳也、50歳。誠心誠意、奮闘を続ける姿を、撮る側も誠心誠意、ありのままをカメラでとらえて爽やかだ。
32歳で総務官僚をやめ、2003年の総選挙に民主党から出馬するも落選。そのあと2005年に初当選。以後、苦戦しながらも5回の当選を重ねる。しかし所属政党は民主党、民進党、希望の党、無所属、立憲民主党とコロコロ変わる。この10数年の野党のふがいなさをそのまま背負って活動を続けているのだ。
政治の世界は、小川が信じる「誠意」「意欲」「一貫性」より、「したたかさ」が求められるのか。悩みは深い。家族からも「政治家には向いていない。大学教授のほうがいいんじゃない」と言われる始末。そんな彼にとって選挙は毎回苦労の連続だ。家族全員で戦う手作り選挙。小さかった娘たちも今では応援してくれる。
最近、政治家の言葉が軽く、雑で、汚くなった。SNSの普及もあって世界共通の現象かもしれない。そんななかでも熱量を持って一生懸命に語る小川。迷いや葛藤も隠さず、本心をさらけ出す。カッコ悪いかもしれないけれど、この誠実さを笑うことはできない。むしろ、なぜ彼が総理大臣になれないのか、を考えるべきだ。
大島監督は小川の魅力をこう語っている。「一言でいうと正直者。最初に会ったときに、こんなに心の底から社会をよくしたいと、テライもなく言える人っているんだなと思った。本気度に頭が下がりました。もちろん人間なので弱いところもあるし、間違いをしないということはないですが、誠実であることは今後も変わらないと思う」
衆議院議員を5期務めてもエラそうにしない。質素な生活を変えない。理想の追求をあきらめない。政治不信、政治家不信の現代に、こんな人がいるなんて。日本の未来に希望を感じる。逆に彼が陽の目を見ない日本の政治状況に、怒りを覚える。だが待てよ、それってわれわれ選挙民の意識も問われているんだよね。
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