デスゾーンの冒険ツアー
強風と極寒と薄い空気で、人間を寄せ付けない世界最高峰のエベレスト。しかし1953年にエドマンド・ヒラリーとテンジン・ノルゲイが初登頂に成功して以来、わずか40年あまりでエベレスト登山のパッケージツアー?まで行われるようになっていた。そんな商業主義が批判されるようになったころ、大きな遭難事故が起こる。
バルタザール・コルマウクル監督の『エベレスト』は、1996年5月10日に起こったこの大遭難を描いた、いわば再現ドラマ。主人公はニュージーランドの登山ガイド会社の代表です。ガイド付きツアーと言えばお手軽そうだけど、誰もができることではない。強靭な体力と厳冬期登山の経験と700万円(当時)もの費用が掛かるのだから。
当然お客さんは世界各国の登山家だ。そんな彼らでも天候や体調などすべての条件に恵まれないと登頂できない。それだけ厳しいデスゾーンでの登山。「三度目のチャレンジで今回が最後のチャンス」「7大陸最高峰の最後に残されたのがエベレスト」など理由は様々だけど、みんな人生をかけて、命をかけて参加しているのだ。
ツアー会社は万全の体制で客を受け入れる。ベースキャンプに専任のマネージャーを常駐させ、登山のプロ、安全のプロ、医療のプロがあらゆるリスクを想定し準備する。高度順応も40日かけて念入りに。それでも天候の急変や予期せぬハプニングで、計画は見直しを迫られ対応に追われる。それも極限状況の中で。
雪崩、突然の嵐、固定ロープの設置不備、山頂直下の渋滞、補給地点の酸素ボンベが空っぽ。いろんな悪条件が重なって過酷なサバイバルに。そして主人公も含めて8人の登山家が死亡。主人公は遅れてきたメンバーの懇願に負け、彼をサポートしながら再び頂上へ。そこで時間をくい、体力を消耗し、嵐の直撃を受ける。
プロ中のプロが、なぜ命を落とす危険を承知で情に流されたのか。優しさか、弱さなのか。人間らしくて好きですが・・・。エベレストには120体もの遺体が収容されず、いまも放置されているという。回収するには莫大な費用がかかるからだ。商業登山やゴミ問題とともに、なんとか解決してもらいたい事柄の一つです。
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