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2021年3月13日 (土)

クレイジーだよ!その綱渡り

   Walk

 1974年8月7日。舞台は完成を間近にひかえたNYワールド・トレード・センター。当時世界最高の高さ411m、110階建のツインタワーの北棟と南棟の屋上にワイヤーを張り、天空の綱渡りを敢行した男がいた。ちょうどその日、たまたまですがニクソン大統領がウォーターゲート事件で辞任する。そんな時代の冒険物語。

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 その実話を基に製作された作品が、ロバート・ゼメキス監督の『ザ・ウォーク』。高所恐怖症の方にはお勧めできない、背筋がゾワゾワする映像美です。「史上最も美しい犯罪」と称されたこの冒険。フランスの大道芸人フィリップ・プティが友人(共犯者)たちの協力を受け、さまざまな困難を乗り越え、無謀な夢を実現するまでを描く。

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 最新の映像技術で映し出されるスリリングなシーン。ドンパチはなく静かさの極みだけれど、最高にスペクタクル。手に汗握るとはこのことか、と思えるリアリティです。そして細部までこだわった緊張感あふれる演出も見事です。主演のジョセフ・ゴードン=レビットも情熱的だけど強引で頑固なキャラクターをうまく演じている。

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 「綱渡り師が失敗して命を落とすのは、最後の3歩だ」という師匠の教えを胸に、集中力を切らさず快挙を成し遂げたフィリップ。空中から屋上に戻るとき、心の中で感謝を述べる。「師よ、友よ、ワイヤーよ、NYの街よ、ありがとう」。自分のエゴのために多大な迷惑をかけたみんなに。狂気から覚めたように謙虚になった彼。

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 冒険と言えばキレイに聞こえますが、これを無許可でやるとなれば、れっきとした犯罪行為。(申請したとしても誰がこんな計画を許可するものか) だから協力者もみんな共犯者。しかし彼の夢の実現は、彼らの夢でもあった。逮捕されたフィリップへの判決は「セントラルパークで綱渡りを見せること」。粋な判事がいるものですね。

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 残念なことに、今は存在しないワールド・トレード・センター。完成前は不愛想なデザインだと評判が悪かったツインタワーですが、彼の冒険のおかげで一躍名所になりました。そして忘れられない滅亡の時。いい意味でも悪い意味でも、深くみんなの記憶に残る建築になりました。この映画の陰の主役でもあります。

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