当分の間 お湯は沸きません
湯気のごとく
店主が蒸発しました
当分の間
お湯は沸きません
幸の湯
中野量太監督・脚本、宮沢りえ、杉咲花、オダギリジョー出演の『湯を沸かすほどの熱い愛』は、こんな張り紙から始まります。
パートに出て娘を厳しく育てる、明るく強いお母ちゃん。ところがある日、末期ガンで余命宣告を受ける。残される家族のために、彼女は死ぬまでにやるべきことがあった。困難に正面からぶつかっていく勇気。強い意志で奮闘する一生懸命な姿。逃げない姿勢と大きな愛が家族全員を巻き込んで、少しずつ絆は深まっていく。
こんなふうに簡単にまとめると、よくあるヒューマンドラマのようですが、実際はもっとパワフルでシュールでおもしろい。物語が進むにつれて次第に明らかになってくる複雑な人間関係と、幾重にも絡み合った家族のカタチに、もう驚きの連続です。もつれた糸をほぐしていくミステリータッチに思わず引き込まれてしまう。
後半になるにつれ、散りばめられた様々な伏線が気持ちよい手際で回収されていく。何から何まで納得できる脚本が見事です。そしてシリアスな話をちょっとコミカルに、かつ軽快にまとめた演出も素晴らしい。登場人物もいい人ばかり。だらしなかったり、気が優しすぎたり、ダメなところはあるけれど・・・。笑えて、泣ける傑作です。
物語の舞台になる銭湯の煙突がビジュアルのシンボル。煙が出ていない煙突。一年ぶりに煙が復活した煙突。赤い煙を吐く煙突。ストーリー展開の重要な局面で象徴的にあらわれる煙突のシーン。2017年の日本アカデミー賞で最優秀主演女優賞と最優秀助演女優賞を受賞しましたが、最優秀シンボル賞もあげたいくらい。
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