オレを捕まえてみろ
スピルバーグ監督の2002年作品『Catch Me If You Can』。The true story of a real fake.(日本語ポスターでは、本物の偽者を描いた真実のドラマ)とキャッチコピーが入っている通り、21歳で逮捕された天才的詐欺師の自伝的小説(『世界をだました男』新潮文庫)を原作にしている。40年ほど前に単行本で読んでメチャ面白かった。ただし、この邦題だったか記憶は定かじゃない。
逃げる詐欺師ディカプリオと、追うFBI捜査官トム・ハンクスの奇妙な交流。犯罪者を描いているけれど、軽快でとても明るい映画だ。ある時はパンナムの操縦士、ある時は医者、またある時は弁護士になりすます。天才的な頭脳とチャーミングな魅力を持つ主人公は、若き日のディカプリオが演じるからこそ説得力がある。
それにしても16歳から21歳の間、世界を股にかけて大金を稼いで豪遊していたとは。小切手の偽造というのどかな手口で、金融機関から大金をだまし取っていたとは。まだ社会が情報化や電子化がされていない時代。知的で花形の職業人になりすます姿は実に痛快です。偽者とバレないように、つい応援したくなる。
ストーリー展開も、挿入されている当時のヒット曲も、ミッドセンチュリーのインテリアも、すべてが素晴らしい。なかでもオープニングタイトルが秀逸だ。レトロモダンでカッコいいソール・バス風のデザインには、60年代の懐かしい映画文化を感じます。Art OF THE TITLEというサイトに紹介されているのでご参照ください。
フランス人のオリヴィエ・クンゼルとフローランス・デガのアーティストデュオが手掛けたタイトルデザイン。手法は、手彫りの消しゴム印で作るローテクなアニメーション。ハンコならではのカスレやスムーズじゃない動き。ジョン・ウイリアムスの音楽とマッチして60年代アメリカならではのオシャレ感がプンプン香ってきます。
タイトルの Catch me if you can。アメリカの子どもたちが鬼ごっこで逃げるとき、この掛け声をかけるそうだ。この映画でも、逃げる方と追う方が一緒にゲームを楽しんでいるような風情で、なるほどなと思いました。敵対しているハズなのにある種の親密さが生まれる人間関係。捕まった後の人生も含めていいお話だったと思います。
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 漫画家の世界と殺人鬼の世界(2023.09.06)
- OLの世界は力が全てだ(2023.09.01)
- ゾンビになるまでに?(2023.08.28)
- サバカンを見ると思い出す(2023.08.24)
- 愛を求めたエルトン・ジョン(2023.08.20)
コメント