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2021年2月

2021年2月24日 (水)

オレを捕まえてみろ

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 スピルバーグ監督の2002年作品『Catch Me If You Can』。The true story of a real fake.(日本語ポスターでは、本物の偽者を描いた真実のドラマ)とキャッチコピーが入っている通り、21歳で逮捕された天才的詐欺師の自伝的小説(『世界をだました男』新潮文庫)を原作にしている。40年ほど前に単行本で読んでメチャ面白かった。ただし、この邦題だったか記憶は定かじゃない。

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 逃げる詐欺師ディカプリオと、追うFBI捜査官トム・ハンクスの奇妙な交流。犯罪者を描いているけれど、軽快でとても明るい映画だ。ある時はパンナムの操縦士、ある時は医者、またある時は弁護士になりすます。天才的な頭脳とチャーミングな魅力を持つ主人公は、若き日のディカプリオが演じるからこそ説得力がある。

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 それにしても16歳から21歳の間、世界を股にかけて大金を稼いで豪遊していたとは。小切手の偽造というのどかな手口で、金融機関から大金をだまし取っていたとは。まだ社会が情報化や電子化がされていない時代。知的で花形の職業人になりすます姿は実に痛快です。偽者とバレないように、つい応援したくなる。

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 ストーリー展開も、挿入されている当時のヒット曲も、ミッドセンチュリーのインテリアも、すべてが素晴らしい。なかでもオープニングタイトルが秀逸だ。レトロモダンでカッコいいソール・バス風のデザインには、60年代の懐かしい映画文化を感じます。Art OF THE TITLEというサイトに紹介されているのでご参照ください。

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 フランス人のオリヴィエ・クンゼルとフローランス・デガのアーティストデュオが手掛けたタイトルデザイン。手法は、手彫りの消しゴム印で作るローテクなアニメーション。ハンコならではのカスレやスムーズじゃない動き。ジョン・ウイリアムスの音楽とマッチして60年代アメリカならではのオシャレ感がプンプン香ってきます。

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 タイトルの Catch me if you can。アメリカの子どもたちが鬼ごっこで逃げるとき、この掛け声をかけるそうだ。この映画でも、逃げる方と追う方が一緒にゲームを楽しんでいるような風情で、なるほどなと思いました。敵対しているハズなのにある種の親密さが生まれる人間関係。捕まった後の人生も含めていいお話だったと思います。

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2021年2月20日 (土)

荒野に咲いた壮大なドラマ

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 1870年、南北戦争(The Civil War)が終わって5年後のテキサスを舞台にしたヒューマンドラマです。ポール・グリーングラス監督の新作『この茫漠たる荒野で』(NEWS OF THE WORLD)。米国の、わずか150年前とは思えない、荒野のごとき不毛と混沌をリアルに表現した傑作だ。原作はポーレット・ジャイルスのベストセラー。

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 北部と南部の分断、戦争の傷跡、ネイティブ部族との争い、野生動物の乱獲、合衆国の支配が行きわたらない無法地帯。南軍の退役軍人とネイティブ部族に育てられた10歳の少女が、さまざまな危機を乗り越えながら旅をする。言葉も通じない状況から徐々に打ち解けていく心の交流を描く、感動的な冒険ロードムービーです。

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 いろんな新聞記事から選んだ世界各地のニュースを読み伝える、いわばニュース屋を稼業にする男。ラジオやテレビはないし、字を読めない人も多かったことでしょう。そんな時代だからこそ成り立った仕事がおもしろい。いろんな人の思惑。それぞれの事情。人生の苦悩。南部だからこその特殊性もまじえながら旅は続く。

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 トム・ハンクスが演じる勇気があって銃の腕もたつ優しい退役軍人。この男臭いカッコ良さは、ジョン・ウェインやクリント・イーストウッドの域まで達している。こういうのが米国人が理想とする大人の男なのだろうなぁと思いました。少女役のヘレナ・ゼンゲルも凄惨な過去に苦悩する難しい役どころを見事に演じている。

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 テキサスやニューメキシコで撮影された壮大な自然。開拓民の質朴な暮らしぶり。そんな細部の描写が物語に奥行きを与え、深い余韻を残す。撮影センスもVFXの使い方も秀逸です。米国史の一面を鮮やかに切り取ったグリーングラス監督の手腕。バックに流れる音楽、ブルーグラスも素晴らしい。(ダジャレではなく・・・)

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2021年2月16日 (火)

まだ薪ストーブの季節

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 もう2月半ば。信州奈川高原でも春の気配を感じる日があります。でもまだまだ薪ストーブが大活躍。グッと冷え込む日はそれでも足りず、寒冷地仕様の石油ストーブも燃やす。ただし石油ストーブは火に向いている側だけ熱くなって背中は冷え冷え、なんてことも。その点薪ストーブの火は柔らかくて体の芯から温まる。

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 燃料は基本は敷地内で間伐した直径30~40cmのカラマツやナラ。伐り倒して玉切りにしてもらったものを斧で薪割り。それを2~3年乾燥させて使っています。薪に水分含有量が多いと燃えが悪く温まらない。シューシューと湯気が出ることも。まず薪自身を乾燥させるために熱量を使い、そのぶん暖房にまわる熱が減るからだ。

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 木の種類によって温かさも違う。カラマツなど針葉樹はヤニが多いので高温になりすぎてストーブを痛めると言われる。ナラやクヌギは硬くて火持ちがよく理想的な薪材。ほかにシラカバやミズキも燃やす。燃える音も香りも、木によって違うから楽しい。上の写真がカラマツの薪。下がナラなど広葉樹。色も木目も違うでしょ。

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2021年2月12日 (金)

木こりと映画監督

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 岐阜県の恵那や長野県の南木曾あたりでロケした映画『キツツキと雨』は、山村を舞台に人間のやさしさとおかしみを描いた良質のコメディです。『南極物語』や『モリのいる場所』の沖田修一監督・脚本の2012年に公開された作品。見た感想を言葉であらわすと、ほのぼの、くすり、ほっこり、しみじみ。心にそっと寄り添ってくれる。

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 山奥の村にゾンビ映画の撮影クルーがやってくる。ひょんなことから役所広司さん演じる無骨な木こり(60歳)と、小栗旬さんが演じる気が弱く優柔不断な新米映画監督(25歳)が出会う。ギョーカイ用語に戸惑いながらも撮影を手伝うハメになった山の男。いつしかおもしろさに目覚めて撮影現場にのめりこんでいく。

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 林業で暮らすのどかな村人と、身勝手な撮影クルー。お互いの気持ちのズレが巻き起こすドタバタ劇。低予算の映画作りの舞台裏も見せながら、気の弱い映画監督の成長を描く。彼と木こりの息子の名前が幸一と浩一。どちらもコウイチなのも物語に深みを増す。ポスターのキャッチコピーは「雨でも・・・きっと晴れるさ」

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 19号線「大桑道の駅」で食事をすると、この映画のポスターが貼ってあって以前から気になっていた。今回観てみたら、このレストランも旧妻籠小学校もロケ地になっていた。もしかしたらここで働く人たちも出演していたかもしれません。木こりの熱意に巻き込まれて、村人が多数エキストラ出演して映画を仕上げるお話ですから。

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2021年2月 9日 (火)

メッセージは何でしょう?

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 こんなに知的刺激にあふれた映画も珍しい。2017年に公開されたドゥニ・ビルヌーヴ監督の『メッセージ』(原題 ARRIVAL)。世界の12か所に突如あらわれた謎の巨大飛行物体。いったい何のために? どこからやってきたのか? 『未知との遭遇』や『インターステラー』の系譜につながる哲学的SF映画の傑作です。

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 謎の飛行物体と聞くと、人類滅亡の危機から地球を守る的なストーリーを思い浮かべるかもしれません。しかしこれは、ネピュラ賞を受賞したテッド・チャンの小説「あなたの人生の物語」(ハヤカワ文庫SF)を原作にした、時間の概念をテーマにしたヒューマンドラマなのです。派手なアクションシーンは一切ありません。

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 主人公は異星の生命体とコンタクトを図るため、軍に召集された言語学者ルイーズ。宇宙人(?)と言えば姿カタチも言語も思考形態も、つい人類から類推される枠の中で考えがちだけれど、地球の生命体とはまったく関連性がないほうが自然でしょう。そして人は未知なるものを前にすると恐怖でパニックに陥る。

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 科学者は冷静に事象を分析し、それらを集めて真実に至ろうとする。そこが軍人や政治家とは違うところだ。まったくヒントもとっかかりもないスミを流したような図形を文字と認識し、細かい違いの解析から規則性を見出す。徐々に解読していく過程はとてもスリリング。そこから導き出されたいくつかの単語。彼らは敵か、味方か?

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 わかってきたのは「彼ら」の世界には時間の流れがない、ということ。人間の世界で言うところの過去も未来も、同列でランダムに存在する。理解不能だけれど、そんな世界もあるという衝撃。言葉も習慣も違う異文化とのコンタクトは、歴史上たくさん経験してきた。しかしどれも地球上での出来事。彼らに比べれば身内の話。

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 宇宙生命体とのセッションの過程で、彼女は死ぬまでの記憶を獲得してしまうハメになる。自分の辛い未来を知ってしまうなんて、こんな不幸はないでしょう。でもそれを受け入れて次の一歩を踏み出す勇気に感動します。タイトル「メッセージ」は。原題「ARRIVAL」は。観る人によって多様な解釈ができると思いますよ。

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2021年2月 6日 (土)

死ぬまでにやりたいこと

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 ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンが共演した2007年の作品『最高の人生の見つけ方』。余命半年のガン宣告を受けた二人が、人生最後の旅に出る物語でした。原題は The Bucket List 、意味は棺おけリスト。この名作を日本に置き換えて、吉永小百合さんと天海祐希さんの主演でリメイクした同名の映画も素晴らしい。

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 人生のほとんどを家庭のために捧げてきた主婦と、仕事だけに生きてきた大金持ちの女社長。出会うはずのない二人が末期ガンで入院した病院で偶然知り合うことになる。そして入院中の少女が書いた「死ぬまでにやりたいことリスト」をたまたま手にする。なんか暗そうに感じられるけど、犬童一心監督の演出は明るくコミカル。

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 虚しさを感じていた二人は、残された時間をリストに書かれたことをすべて実行しようと決断。スカイダイビング、エジプト旅行、ももクロのアリーナライブ、ウエディングドレスを着る、親にありがとうを言う、宇宙旅行をする・・・。最後の旅に出た二人は、これまで決してやらなかったことを次々と体験。自らの殻を破っていく。

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 気づかなかった生きる楽しさと幸せをかみしめていく二人。家族との関係も見つめ直し、死後のこともポジティブに考えるようになる。チャレンジする心、前向きなエネルギーに、生きる勇気をもらいました。たくさんの幸福感に包まれる2時間のハートフルドラマ。死は誰にでも訪れますが、その時になってうろたえないようにしなきゃ。

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 死を前にした二人に振り回される役どころのムロツヨシ、満島ひかり、前川清など、みんなピタッと役にはまり、作品の完成度をアップしている。伏線と解決がうまくはめ込まれた脚本も出色の出来。始まりと終わりも洒落ていて、とても良かった。(ネタバレになるので書きませんが) ハイ、さわやかな気分になる映画でした。

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2021年2月 3日 (水)

考古学は発掘する学問

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 イングランドのサフォーク州に、ストーンヘンジに並ぶ重要な遺跡「サットン・フー」がある。バイキングより古い中世の初期、アングロ・サクソン時代の船葬墓です。長さ27mの船がそのままの姿で、豪華な装飾品、武具、カロリング朝の金貨とともに埋まっていた。

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 この世紀の発見の顛末を描く、静かだけれど見ごたえのある映画です。サイモン・ストーン監督の『時の面影』(原題は THE DIG)。発掘を依頼した未亡人をキャリー・マリガン、学歴はないけれど知識と経験が豊富な発掘人をレイフ・ファインズが演じる。

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 イングランドの美しい風景。広々とした平原に点在する墳丘。1939年、社会は第二次世界大戦が迫り不穏な空気におおわれていた。そんななか運命に導かれたように一つの古墳の発掘作業に取りかかる。これは実話に基づいた映画です、とクレジットが。

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 考古学は埋もれていた歴史を発掘し、再び目に触れるようにする学問。しかしサットン・フー発掘の功労者たちは考古学会から正当な評価を受けることなく、時間のなかに埋められてしまいました。学会が犯した皮肉な矛盾。この事実を発掘したのが、このお話。

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 太古の墓が並ぶ広い敷地、ヒトラーのニュース、召集令状、心臓の不治の病と、色濃く死の気配が漂う。宇宙飛行を夢見て未来に生きる少年だけが一筋の希望の光。埋もれた古の時間と未来へ続く時間。船葬墓に埋葬された王も時間を超えることを夢見たのか。

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 階級社会、女性蔑視、権威主義。古い体質の英国で日の目を見なかった功績にスポットを当てたこの作品。全編を通して曇り空、弱々しい光とレトロな色調、しっとりと湿度を感じる美しい映像が雰囲気をよく伝えている。英国トラッドのファッションもカッコいい。

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