パラサイト、上と下の物語
カンヌ国際映画賞でバロンドール、アカデミー賞で作品賞や監督賞に輝いた韓国映画『パラサイト 半地下の家族』。さすが、期待にたがわずおもしろい。家族全員が失業中で家賃が安い半地下暮らしの家族と、高台の豪邸に住むリッチなファミリー。格差社会の韓国で上層と下層との関わりから巻き起こされる悲喜劇とは。
宅配ピザのケースを組み立てる内職で食いつないでいる家族。Wi-Fiの電波を求めて天井のスミまでスマホをかざして室内をうろつくありさま。そんなとき息子は友人から金持ちの娘の家庭教師を頼まれる。面接に出かけると、そこは有名建築家が建てたモダンな豪邸。主はIT企業の社長で美男美女のセンスいい夫婦。
暮らしぶりも服装もルックスも、まるで人種や時代が違うぐらいの大きな差。そんな貧富の差をポン・ジュノ監督は「上」と「下」の構成で見事に対比して描いている。高台から流れ落ちた豪雨で水没する半地下の家。ソファの上でいちゃつく夫婦とテーブルの下に隠れる家族。常に金持ちが「上」、貧乏人が「下」になる構図だ。
うまく夫婦に取り入って家族みんなが(もちろん身分を偽って)この豪邸で職を得る。トントン拍子で進むコメディが、一転サスペンスの様相に変わるのが大雨の夜。元家政婦がびしょ濡れになって訪れたところから、緊迫感あふれる驚きの展開に。あとは息もつかせず衝撃のラストへ。そして下層のさらに下に最下層があったとは。
貧乏家族は金持ち一家をだましたけれど、みんな働き者で有能だ。どこか憎めない愛嬌のある人たち。ただ何とも言えないニオイに、違和感を感じられ始める。かび臭いすえたニオイ、それは身に染み付いた地下室のニオイ。貧乏のニオイだ。パラサイトとは寄生生物の意味。格差社会をユーモラスかつ残酷に描いた傑作です。
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