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2020年11月 4日 (水)

秋刀魚の味はほろ苦い?

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 海流の変化によりサンマの漁獲量が激減。庶民の味は今年も高値の花になりました。これも地球温暖化の影響なのか。そんなことを考えながら、小津安二郎監督の遺作になった『秋刀魚の味』デジタルリマスター版を観る。1962年(昭和37年)の製作。初老の男の心のひだをコメディタッチで描く、しみじみ味わい深い名作です。

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 お酒を飲むシーンはいっぱいあるのに、サンマを食べるシーンはいっさい出てこない。焼く煙どころか、話題にすら上らない。魚で話題になったのはハモだけ。タイトルの『秋刀魚の味』は、人生はほろ苦いけれど味わい深い、というぐらいの意味でしょうか。お話は妻に先立たれた初老の父親と、いっしょに暮らす婚期を迎えた娘。小津監督の得意とするシチュエーションです。

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 しかし「婚期」という言葉にはとんでもなく時代を感じる。結婚には「適齢期」があって、親の知人たちまで心配して「縁談」の話を持ち込むなんて。今なら大きなお世話でしょ。家事ができない父親の心配をして、家を出ていけない娘も絶滅危惧種。わずか半世紀ほどで家族の関係も、生活のスタイルも、ずいぶん変わったものだ。

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 しっかり者の娘・岩下志麻の若さが輝いています。笠智衆の繊細な演技も安心して観ていられます。特筆すべきは、恩師役を演じた東野英治郎の名演技。主人公の反面教師ともいえる、落ちぶれた老後、ちょっと卑屈な態度。酔っぱらってつぶやく「人生は寂しい、人間は孤独です」というセリフが、この映画のキーにもなっている。

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 カメラポジションが低い独特の小津アングル。日本家屋の住まいやビルの廊下で見せる、左右だけではなく天井と床面もシンメトリーになった幾何学的な美。登場人物たちも少し下から見上げて撮られると、気持ちの機微がよくあらわれるようだ。ちょっとした達成感とその陰にある寂寥感。オズの魔法にやられました。

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