オシャレな哲学アニメ
切断された自分の体を探すため、パリの街をさまよう男の手。なんてシュールなアニメなんだ! なんてオシャレな映画なんだ! ジェレミー・クラパン監督にとって長編アニメーションのデビュー作だという。大人のメルヘンと言うには、ちょっと哲学的過ぎ? でもそのあたりが、さすがフランスの作品、トレビアン!
あの『アメリ』の脚本を担当したギョーム・ローランの小説が原作。なるほどね、という感じの日常的な道具立て。だけどもそれらが合わさると、なぜかシュールな世界になってしまうから不思議。こっそりと徘徊する手が中心の画面には、アリやハトやネズミが相対的に大きな体であらわれる。気味悪さより乾いたユーモアを感じる。
ハエの羽音から始まるこの映画。同じアニメーションでも宮崎駿監督や新海誠監督の作品とはテイストがまったく違う。可愛くないキャラクターも、シックな色調も、流れているクールな音楽も。文化の違いか、作家の個性か。(たぶんその両方です) 世界にはいろんな表現、いろんな感性があるものだ、と改めて感心しました。
町を動き回る手がなにかに触発されると、連想ゲームのように温かい過去の記憶がよみがえる。回想シーンはモノクロだ。両親の愛に包まれた夢あふれる子ども時代と、思い通りにいかない現実の日々の対比が絶妙だ。シンボリックにあらわれる小さなハエと、巨大な建築用クレーン。ミクロとマクロ。世の中の見方がおもしろい。
切断された手が自分の体を求めるアヴァンチュール。それ自体が意識を持つ存在として自立している手が、地下鉄やゴミ処理場など都会の片隅を巡る冒険。幸せな記憶。悲しいトラウマ。淡い恋心。希望への旅立ち。さまざまな感情を乗せた美しい映像詩。いいモノに出会えました。これもNetflixのおかげです。
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