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2020年11月16日 (月)

衝撃の現実、『マザー』

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 これは実際にあった少年による祖父母殺害事件を基にした映画だ。大森立嗣監督の『MOTHER マザー』。この事件を映画にしようとした動機は、たぶん理解を超えた人間をなんとか理解したいと思ったからだろう。しかし、いくら努力してもこのモンスター母親に近づけない無力感と絶望。でも実在するものを否定はできない。

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 男たちと行きずりの関係を持ち、その場しのぎで暮らす母とその息子。母は息子に命令し、可愛がり、支配する。息子はそんな歪んだ愛に翻弄されながらも、母以外に頼るものもない。そこからお互いに離れられない奇妙な絆が生まれる。近ごろよく話題になる児童虐待や育児放棄とはまったく次元の違う親子関係なのだ。ペットとどうしようもなく悪い飼い主との関係。いやそれ以下か。

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 社会から孤立し、身内からも絶縁された親子が問いかけるもの。母親とは? 親子の愛とは? こんな問いが陳腐に感じられるほど、世の中の仕組みや子育ての意味を根底から破壊する衝撃。現代の日本の片隅で、こんな人物が存在し、こんな事件が起こっているという衝撃。異様な生き方を救う方策はなかったのでしょうか。

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 映画を観ている間、「なんで?」という疑問がいくつもわいてくる。でもこれは現実にあった出来事なのだ、不条理だけれど。格差が広がる社会の底辺で生きる家族の姿は、是枝裕和監督の作品でも描かれるがどこか共感する部分がある。わずかかもしれないけれど希望がある。それに対して『マザー』はただ痛い。

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 「自分の子どもを自分で思うように育てて、そのどこが悪いんですか?」。こんな母親に育てられる不幸。親を選べない子どもの不運。長澤まさみが覚悟して熱演する母親は、ドストエフスキー的世界の妖怪のようです。名優と呼ばれるためには悪人や汚れ役を務めないとダメなのか。演じることも苦悩だねぇ。お疲れさまです。

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