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2020年11月

2020年11月29日 (日)

本来、サクラは秋に咲く !?

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 JR六甲道駅から西へ少し歩いた南北の道。花園線という名がついているようですが、いまサクラがきれいに咲いている。道路整備にともなって植えられた、高さ3mに満たないまだ若い街路樹です。その数ざっと4~50本。ところで、近ごろ秋に咲くサクラをよく見かけるようになったと思いませんか? で、品種を調べようとネット検索。
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 十月桜、冬桜、四季桜、不断桜、小福桜・・・。いっぱいあるんですね、秋から冬にかけて咲くサクラ。小春日和に誘われて季節を勘違いしたうっかりもの、と思っていたけど間違いでした。調べているうちに東京農業大学のサイトで興味深い記事を見つけました。好奇心へのアドベンチャー VOL.5「サクラは実は秋咲きだった⁉」

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 秋に咲くネパールのサクラと日本のヤマザクラやソメイヨシノなどは遺伝子的に非常に近いこと。亜熱帯で標高が高く一年中温暖なネパールから、中国などを経て北上し日本にまで分布を広げる過程で、春に開花するように進化したことなどが説明されている。厳しい冬を「休眠」して生き延びる「種」としての知恵。秋に咲く十月桜や冬桜は「狂い咲き」ではなく、先祖返りによってよみがえった姿。

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 そして近所で見たサクラは花の色、八重でない、長い雌しべを持つことから「ヒマラヤザクラ」だという(個人的)結論に至りました。なんだ「元祖」じゃないか。二酸化炭素や窒素化合物の吸収率がソメイヨシノの5倍と高いヒマラヤザクラは、いま環境浄化に役立つ木として注目されている。なぜ日本に?という話はまた次の機会に。

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2020年11月26日 (木)

オシャレな哲学アニメ

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 切断された自分の体を探すため、パリの街をさまよう男の手。なんてシュールなアニメなんだ! なんてオシャレな映画なんだ! ジェレミー・クラパン監督にとって長編アニメーションのデビュー作だという。大人のメルヘンと言うには、ちょっと哲学的過ぎ? でもそのあたりが、さすがフランスの作品、トレビアン!

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 あの『アメリ』の脚本を担当したギョーム・ローランの小説が原作。なるほどね、という感じの日常的な道具立て。だけどもそれらが合わさると、なぜかシュールな世界になってしまうから不思議。こっそりと徘徊する手が中心の画面には、アリやハトやネズミが相対的に大きな体であらわれる。気味悪さより乾いたユーモアを感じる。

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 ハエの羽音から始まるこの映画。同じアニメーションでも宮崎駿監督や新海誠監督の作品とはテイストがまったく違う。可愛くないキャラクターも、シックな色調も、流れているクールな音楽も。文化の違いか、作家の個性か。(たぶんその両方です) 世界にはいろんな表現、いろんな感性があるものだ、と改めて感心しました。 

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 町を動き回る手がなにかに触発されると、連想ゲームのように温かい過去の記憶がよみがえる。回想シーンはモノクロだ。両親の愛に包まれた夢あふれる子ども時代と、思い通りにいかない現実の日々の対比が絶妙だ。シンボリックにあらわれる小さなハエと、巨大な建築用クレーン。ミクロとマクロ。世の中の見方がおもしろい。

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 切断された手が自分の体を求めるアヴァンチュール。それ自体が意識を持つ存在として自立している手が、地下鉄やゴミ処理場など都会の片隅を巡る冒険。幸せな記憶。悲しいトラウマ。淡い恋心。希望への旅立ち。さまざまな感情を乗せた美しい映像詩。いいモノに出会えました。これもNetflixのおかげです。 

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2020年11月23日 (月)

ソフィア・ローレンは健在です!

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 えっ! ソフィア・ローレン主演? Netflixオリジナル『これからの人生』(LA VITA DAVANTI A SE'   英語ではThe Life Ahead)というヒューマンドラマで素晴らしい演技を見せている。86歳ですよ。さすが、世界の名女優。監督はエドアルド・ポンティ。ポンティ?もしかしたら、と思ったあなた、そうなんです、彼女の息子さんです。

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 アウシュビッツを生き延びたユダヤ人女性の元娼婦マダム・ローザ。自宅で子守をして生計を立てている。セネガル難民の男の子モモは、母を亡くして独りぼっちのすさんだ暮らし。心に傷を持つ二人が出会い、共に暮らすうちに少しずつ心を開いていく。そんな気持ちの機微を丁寧に描いて、感動的な映画に仕上がっている。

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 ユダヤ人と黒人。ユダヤ教徒とイスラム教徒。ホロコーストと難民。ゲイの親子と認知症。イタリア南部プーリア州を舞台に、社会の底辺で生きる少数派の人たちが繰り広げる日々の生活。暗いお話になりがちなシチュエーションですが決して暗くない。それは悪人が出てこないからか。ヤクの売人ですら、すごくやさしい。

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 過去の壮絶な体験からの心理的逃避。現実を脱出するために見る幻覚。それぞれに秘密を抱えたまま一生懸命に生きる二人を見守る、ちょっとアンバーな映像が温かい。大きなテーマを扱いながら重くなり過ぎない。グッと胸にくるラストまで引っ張っていく、イタリア伝統の人情劇は健在です。ソフィア・ローレンも健在です。

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2020年11月20日 (金)

ロンドンから西洋絵画史

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 ルネサンスから19世紀ポスト印象派まで、粒ぞろいの西洋絵画をコレクションしているロンドン・ナショナル・ギャラリー。1,824年、ヨーロッパでは珍しく王室の収集を母体としない、市民の力で市民のために設立された世界有数の美術館です。熱心なコレクターの寄贈や市民の寄付により、今では2,300点を超える名品を所蔵。

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 ギルランダイオ、ボッティチェッリ、ティツィアーノ、ティントレットなどイタリア・ルネサンスの巨匠。レンブラント、フェルメールなど黄金時代のオランダ絵画。エル・グレコ、ベラスケス、ゴヤ、ムリーリョなどのスペイン絵画。レンブラント絶頂期の「34歳の自画像」やムリーリョの「窓枠に身を乗り出した農民の少年」は新しい発見でした。。

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 コンスタブルやターナーの風景画や、アンソニー・ヴァン・ダイクをはじめホントホルストやトマス・ローレンスの肖像画。イギリス美術の精華が日本へ。そして19世紀以降のフランス近代絵画。アングルからポスト印象派まで、コロー、ドガ、ルノワール、モネ、ゴーギャン、セザンヌ。まさに西洋美術史を復習しているような61作品です。

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 さすがにダ・ヴィンチの「岩窟の聖母」は来ていませんが、今回の目玉はゴッホの「ひまわり」。彼は7点の「ひまわり」を描いていますが、最高傑作の誉れが高いのがこの4作目。黄色に背景に黄色のひまわり。明度も濃度もさまざまな黄色づくしで表現する新たな挑戦。彼が愛したアルルの太陽の光がほとばしっています。

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展
2020年11月3日(火・祝)~2021年1月31日(日)
国立国際美術館

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2020年11月16日 (月)

衝撃の現実、『マザー』

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 これは実際にあった少年による祖父母殺害事件を基にした映画だ。大森立嗣監督の『MOTHER マザー』。この事件を映画にしようとした動機は、たぶん理解を超えた人間をなんとか理解したいと思ったからだろう。しかし、いくら努力してもこのモンスター母親に近づけない無力感と絶望。でも実在するものを否定はできない。

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 男たちと行きずりの関係を持ち、その場しのぎで暮らす母とその息子。母は息子に命令し、可愛がり、支配する。息子はそんな歪んだ愛に翻弄されながらも、母以外に頼るものもない。そこからお互いに離れられない奇妙な絆が生まれる。近ごろよく話題になる児童虐待や育児放棄とはまったく次元の違う親子関係なのだ。ペットとどうしようもなく悪い飼い主との関係。いやそれ以下か。

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 社会から孤立し、身内からも絶縁された親子が問いかけるもの。母親とは? 親子の愛とは? こんな問いが陳腐に感じられるほど、世の中の仕組みや子育ての意味を根底から破壊する衝撃。現代の日本の片隅で、こんな人物が存在し、こんな事件が起こっているという衝撃。異様な生き方を救う方策はなかったのでしょうか。

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 映画を観ている間、「なんで?」という疑問がいくつもわいてくる。でもこれは現実にあった出来事なのだ、不条理だけれど。格差が広がる社会の底辺で生きる家族の姿は、是枝裕和監督の作品でも描かれるがどこか共感する部分がある。わずかかもしれないけれど希望がある。それに対して『マザー』はただ痛い。

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 「自分の子どもを自分で思うように育てて、そのどこが悪いんですか?」。こんな母親に育てられる不幸。親を選べない子どもの不運。長澤まさみが覚悟して熱演する母親は、ドストエフスキー的世界の妖怪のようです。名優と呼ばれるためには悪人や汚れ役を務めないとダメなのか。演じることも苦悩だねぇ。お疲れさまです。

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2020年11月13日 (金)

栗の季節の最後の旨味

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 そろそろ終わりに近づいた栗の季節。締めは中津川、国道19号線沿いにある「すや 西木」店の甘味処「榧(かや)」で。信州・小布施と並んで有名な栗の産地が中津川と恵那。ここには栗きんとんを売り物にする和菓子屋さんがいくつもある。その元祖と言われているのがこの老舗「すや」。創業は元禄年間だそうだ。

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 いただいたのは季節限定の栗しるこ。栗だけでつくった温かいおしるこにお餅が入った名物です。栗の実をつぶしてドロドロにしたしるこは、黄色い栗そのものの色。ほんのり上品な甘さで、ほっこりする美味しさです。ちょっと他に例えようがない滋味あふれる秋の味覚。ほうじ茶と野沢菜漬けがセットでついてくる。

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 「すや」と言えば外せないのが、栗きんとん。なにせ元祖ですからね。栗を炊いてつぶし茶巾で絞った栗きんとん。お節料理のきんとんとはまったく別物です。そしてやはり栗ならではの滋味にあふれ、粘り気のないぼそぼそした独特の食感が魅力。中津川あたり東農の郷土料理で、日持ちしないため他の地域には出回らない。

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 「すや」という変わった店名は、「酢屋」から来たそうだ。創業時は酢の店で屋号は「十八屋」。中津川宿の酢は江戸時代から有名で、太田南畝の著作にも、酢の十八屋の記述があるそうだ。そして菓子作りを始めたのは7代目から。和菓子の老舗として今に至る。ケヤキ製の看板の文字は良寛の書からとったものだという。

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2020年11月10日 (火)

サンタクロースの新たな伝説

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 クリスマスが近づいてきた今の時期にぴったりの映画をNetflixで観ました。スペイン発の長編アニメーション、2019年セルジオ・パブロス監督の『クロース』です。まったく新しい解釈で生まれたサンタクロース誕生秘話。英国アカデミー賞やアニー賞7部門を受賞したのもナットクの、子どもも大人も楽しめるいいお話です。

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 落ちこぼれの郵便配達人ジャスパーは最果ての島に飛ばされる。そこは極寒の地、2つの氏族が何代にも渡っていがみ合い、戦い続ける村。一刻も早く逃げ出したいジャスパーは、ひょんなことで世を捨て森に住むオモチャ職人クロースに出会う。次第に友情を育んだ二人は子どもたちにオモチャを配達するようになる。

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 やがて2つの氏族の子どもたちは仲良くオモチャで遊ぶようになり、大人たちもわだかまりを解いていく。こうして村は平和になるという物語。クロースへの手紙。オモチャの配達。トナカイが引くソリ。さまざまな困難に立ち向かいながら、サンタクロース伝説の要素がうまく繋がっていく展開は心地よい。

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 「本当に欲のない行いは、人の心を動かす」という言葉に導かれて成長するジャスパー。人との関わりを拒んでいたクロースはたくさんの人の愛に包まれて天国へ。クリスマスの時期にはこんな性善説の物語がふさわしい。気持ちが落ち込むニュースが多いこの頃、せめて映画は心が優しくなるものを観たいと思います。

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 ここに挙げた画像でもお分かりだと思いますが、とても斬新で美しい。日本アニメとは一味違うでしょ。2Dの手描きアニメながらキャラクターを照らすライティングの技術で、3Dのような立体感を表現。CGも使っていないとは驚きです。観る者の心に干天の慈雨のように、温かくてじわっと沸き起こる感動をもたらせてくれる新伝説!

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2020年11月 7日 (土)

カキのシーズン到来

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 急に冷え込むようになりましたね。そうです!カキのおいしい季節です。で、たつの市室津までカキを食べにドライブ。瀬戸内海を眺める絶景に建つ津田宇水産のレストランへ。なんと家族の二人が「チンクエテッレみたい!」と声を上げました(嫌味なセリフでごめんなさい)。ビーチやカキの筏が見えて、ほんとに素晴らしい景色。

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 生ガキ、焼きガキ、カキグラタン、カキ鍋、カキのアヒージョ、カキフライ。あとで帰り際に見たら、カキのパン粉焼きというのもある。入れ放題バケツ1杯2,000円というメニューがあって、テイクアウトかなと思ってました。けれども。食べている時に周りのテーブルを見ると、みんなそのバケツを置いて食べている。コレかぁ。

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 コレがこのお店の名物。蒸しガキだそうです。広いテラスの中にステンレスで囲まれた調理台。そこに何台も並ぶガスコンロ。そこにそれぞれ自分でバケツをコンロにかけて蒸すそうだ。ある人は、入れ放題と聞いてタテにもたっぷり詰め込んだら汁が出てしまって失敗した、という。つぎは水平に重ねて蒸そうと思ったそうだ。

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 これまでさんざんカキ料理の話をしてきました。ところがこのお店はカキ以外の料理もおいしいんです。生シラス丼、海鮮てんぷら丼、オマールエビやカキのパエリャなどなど。ここは何代も続く網元がオーナー。魚介の品質と鮮度は間違いなし。津田宇水産のレストラン、何回もクルマを走らせたいところでした。 

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2020年11月 4日 (水)

秋刀魚の味はほろ苦い?

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 海流の変化によりサンマの漁獲量が激減。庶民の味は今年も高値の花になりました。これも地球温暖化の影響なのか。そんなことを考えながら、小津安二郎監督の遺作になった『秋刀魚の味』デジタルリマスター版を観る。1962年(昭和37年)の製作。初老の男の心のひだをコメディタッチで描く、しみじみ味わい深い名作です。

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 お酒を飲むシーンはいっぱいあるのに、サンマを食べるシーンはいっさい出てこない。焼く煙どころか、話題にすら上らない。魚で話題になったのはハモだけ。タイトルの『秋刀魚の味』は、人生はほろ苦いけれど味わい深い、というぐらいの意味でしょうか。お話は妻に先立たれた初老の父親と、いっしょに暮らす婚期を迎えた娘。小津監督の得意とするシチュエーションです。

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 しかし「婚期」という言葉にはとんでもなく時代を感じる。結婚には「適齢期」があって、親の知人たちまで心配して「縁談」の話を持ち込むなんて。今なら大きなお世話でしょ。家事ができない父親の心配をして、家を出ていけない娘も絶滅危惧種。わずか半世紀ほどで家族の関係も、生活のスタイルも、ずいぶん変わったものだ。

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 しっかり者の娘・岩下志麻の若さが輝いています。笠智衆の繊細な演技も安心して観ていられます。特筆すべきは、恩師役を演じた東野英治郎の名演技。主人公の反面教師ともいえる、落ちぶれた老後、ちょっと卑屈な態度。酔っぱらってつぶやく「人生は寂しい、人間は孤独です」というセリフが、この映画のキーにもなっている。

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 カメラポジションが低い独特の小津アングル。日本家屋の住まいやビルの廊下で見せる、左右だけではなく天井と床面もシンメトリーになった幾何学的な美。登場人物たちも少し下から見上げて撮られると、気持ちの機微がよくあらわれるようだ。ちょっとした達成感とその陰にある寂寥感。オズの魔法にやられました。

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2020年11月 1日 (日)

お子さま不向きパーク

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 「夢と魔法の国」ディズニーランドを風刺した、「悪夢と絶望の国」ディズマランド。バンクシーが「子どもには不向きなファミリーテーマパーク」と称した大規模な施設です。英国ブリストル・ベイの海沿いの町ウェストン・スーパー・メアで2015年8月から9月の5週間、期間限定で開かれました。dismalは、陰惨な、憂鬱な、という意味。

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 陰険な係官が嫌がらせをするセキュリティチェック。やっと中に入ると、廃墟になったお城。事故にあったカボチャの馬車。群がる報道陣。どうやらシンデレラ(らしき乗客)は死んでいるようだ。池のリトル・マーメイド(らしき姫)は歪んでいるし、メリーゴーラウンドは危険なスピードで回転している。運河には難民ボートが。

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 一見華やかな夢の国が、じつは残酷でおぞましい絶望の世界。おまけにパーク内で働くキャストたちは不機嫌、無気力。スマイルとは無縁の存在です。恐怖を味わい気分を害したゲストは、疲れ切って意気消沈して帰路につく。楽しいはずだったお出かけが・・・。こんなファミリーの1日を描いた映像作品が上映されている。

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 貧困や格差、テロや戦争など、過酷な現実に目を背け、非日常のテーマパークを楽しむ私たち。悲惨な事件もエンターテインメントに仕立てるTVのニュースショー。豊かな社会や暮らしをコントロールする商業主義に対する反発は、彼の作品の大きなテーマのひとつ。これからもますます鋭い表現が生み出されることでしょう。

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 この記事で正体不明のアーティストと言いながら、ふつうに「彼は」と書いてきた。でも「彼女」かもしれない。「グループ」かもしれない。活動が世界に広がり、プロジェクトがここまで大規模になってくると、とても一人の手には負えない気もする。でも何者か?の詮索に興味はない。謎は謎のままでいいのじゃないでしょうか。

バンクシー展 天才か反逆者か
2020年10月9日(金)~2021年1月17日(日)
大阪南港ATC Gallery(ITM棟2F)

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