コロナと生きる世界
コロナと共に生きるって、どういうこと? 世界はどんな風に変わるの? まずはマスクをつける。ソーシャルディスタンスを保つ。そして非接触のために仕事も暮らしもデジタル化を進める。そんなところでしょうか。『横尾忠則の緊急事態宣言』展で興味深かったのが、パロディとして笑い飛ばしたインスタレーション。
「WITH CORONA」と題され、SNSで発信され続けているシリーズ。いろんなビジュアルに象徴的にマスクをつけたもので、コロナと生きるこれからの社会をあらわしているのでしょう。素材は過去の自分自身の作品や、資料として保管している写真、新聞の切り抜きなど。次々と発信する行為そのものがアートでもある。
登場するのはビートルズや毛沢東やアインシュタインほか、さまざまな人たち。しかもマスクには、横尾さんの典型的なシンボルである歯を見せて笑う口と赤い舌が描かれている。世間の常識に挑戦するふてぶてしいシンボル。A4パネルに貼った作品が、展示作品の周りを太陽をめぐる惑星のように掲出されている。おもしろいのでじっくり見ていく。結構時間がかかる。けれど楽しい。
マスクをつけさせられたのは人間とは限らない。信号機やソフトドリンク、トイレットペーパーや川にかかる太鼓橋まで白い歯を見せて笑っている。権力や権威がまじめくさって指導する姿の、どことなく胡散臭い上から目線をうまく茶化してしまうアートのパワー。同調化圧力に対する自由の叫びを、やんわり笑いで表現。
一点だけなら単なる悪ふざけになるところを、次から次へとアイデアを繰り出すと、立派なアートとなり、確かな批評となる。SNSや新しい技術をおもしろがって貪欲に取り込み、日々発信を続ける横尾忠則。84歳、老け込むどころかますます精力的に創作を続ける、現役の、しかも最先端のアーティストだ。
横尾忠則の緊急事態宣言
2020年9月19日(土)~12月20日(日)
Y+T MOCA
横尾忠則現代美術館
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