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2020年8月17日 (月)

大林監督、3時間の遺言

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 肺ガンで余命3ヵ月を宣告された後も制作をつづけ、この春4月10日に亡くなった大林宣彦監督。コロナがなければ、まさにその日が『海辺の映画館 キネマの玉手箱』の公開予定日だった。奇跡というか、運命というか、何者かの不思議な力を感じます。監督の遺作にふさわしく、舞台は尾道の映画館。さぁ最後の興行です。

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 新選組や白虎隊や娘子隊。坂本龍馬に西郷どん。満州事変に沖縄戦。原爆投下に玉音放送。スクリーンの中に入り込んでしまった観客(?)が時空を超えて駆け回る。白黒からカラーへ。無声映画からトーキーへ。ミュージカルあり、SFあり、悲劇あり、純愛あり、アクションありの盛りだくさん。何が出てくるかわからない玉手箱。

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 戦争の歴史と映画の歴史を交錯させながら、平和の希求、映画が持つ力への信念、これからの若者への期待を描いた快作です。こんな文字面を見ると堅苦しく感じるかもしれませんが、決して説教臭くはないし退屈でもない。テンポ良く快調に進むストーリーに身をゆだね、「監督、どこへ連れて行ってくれるのですか?」という感じ。

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 この作品を「遺言」だと思うのは、最後の作品になったからだけではない。ここに大林監督の世界観、歴史観、美学がすべて詰まった密度の濃い179分だから。ポスター表現のとおり、いろんな要素のどこにも映画作家の情熱とサービス精神があふれている。場面転換、あるいは狂言回しに使われる中原中也の詩も素晴らしい。

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 出演者もとても多い。厚木拓郎、細山田隆人、細田善彦、吉田玲、成海璃子、山崎紘菜、常盤貴子、小林稔侍、高橋幸宏、白石加代子、尾美としのり、武田鉄矢、片岡鶴太郎、柄本時生、村田雄浩、稲垣吾郎、蛭子能収、浅野忠信、伊藤歩、入江若葉、渡辺裕之、根岸季衣、中江有里、笹野高史、満島真之介、川上麻衣子、渡辺えり、窪塚俊介、長塚圭史、ミッキー・カーチス、犬塚弘ほか。

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 日本が世界が、また不穏な空気に包まれつつあるいま、大林監督が現代の若者へ残してくれた遺言。オシャレな映像美とユーモア感覚で、極上のエンターテインメントに仕上っている。童心に帰ったような自由奔放さで、映画作りを心から楽しんでいる様子も伝わってくる。終戦記念日に観るのにふさわしい映画でした。

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