「泣き猫」ファンタジー
コロナの影響で6月5日から予定していた劇場公開ができなくなり、NETFLIXで全世界配信を始めた長編アニメーション『泣きたい私は猫をかぶる』。監督:佐藤順一と柴山智隆、脚本:岡田麿里で、スタジオコロリド制作の最新作品。みずみずしい思春期の感性を美しい映像と色彩で描いた青春ファンタジーです。
主人公は中学2年生。自由奔放、明るく元気いっぱいの女の子ですが、突飛な言動でいつも周りを振り回す。呆れるクラスメイトからは「ムゲ」というあだ名で呼ばれている。つまり"無限大謎人間“の略。他人のことなどお構いなしに見える彼女。じつは人一倍他人の思いを気にするし、他人に言えない悩みや苦しみがある。
そんな彼女の唯一の楽しみは、猫に変身して好きなカレに会いに行くこと。夏祭りの夜、奇妙なお面屋にもらった「猫のお面」をかぶると猫に変身できるのだ。猫になっている時だけ、わずらわしい人間関係や思ったことが言えない不自由さから解放される。しかもどこからでもスッと入り込んで、カレに寄り添える。
気持ちが伝わらず空回りばかりする人間界。気ままに自由に生きていける猫の世界。二つの世界を行き来することは、人間の二面性を表現しているとも言える。本来の自分と、本心を隠し猫をかぶったもう一人の自分。そのうち猫と自分(人間としての)の境界があいまいになっていく。意識の混濁が始まるのか。
そうなって初めて気が付いたこと。それは、自分が誰に支えられているのか。ほんとうに大切なものは何か。このまま猫の世界から帰れなくなったら大変だ。人間界へ戻って、これらの問題にちゃんと向きあわなきゃ。人間に帰るための大冒険とは、自己を確立するための道程。若い人たちの成長を応援するさわやかな物語でした。
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