« 2020年6月 | トップページ | 2020年8月 »

2020年7月

2020年7月30日 (木)

90歳の運び屋がいた?

   Photo_20200726152201

 クリント・イーストウッド監督が『グラン・トリノ』以来10年ぶりに主人公を演じた『運び屋』(2018年)は、期待にたがわず面白い。メキシコの麻薬組織にスカウトされ、大量のコカインを運ぶことになった老人。実際にあった事件を基にしたクライム・ムービーです。だけど暗くはないし、残虐でもない。残るのは爽快感と正義感。

Photo_20200726152401

 90歳の老人が危険な運び屋に? 運転するな!さっさと免許を返納しろ!と言われる日本とは大違い。しかも危険な麻薬組織と渡り合い、警察の眼をかいくぐって1,000km以上の長距離ドライブ。事情を知らないし、知りたくもない。だから緊張もしない。鼻歌を歌いながら目的地へ向かって淡々と運転するのみ。

Photo_20200726152302

 外面はいいものの、家族をないがしろにして仕事一筋で生きてきた男。(日本の爺さんたちはもっとひどいかも?) 第二次世界大戦の退役軍人でユリの栽培で成功するが、その後没落。時代に取り残され、家族に見放されても、日々の生活を楽しみ飄々と生きている。この爺さんは犯罪者だけど、ユーモアもあるしカッコいい。 

Photo_20200726152303

 元妻や娘との絆を取り戻そうと努力するが、認めてもらえない。実の娘アリソン・イーストウッドが父を憎む娘役を演じているのも面白い。実生活を彷彿とさせるキャスティングに、いろいろあった自身の人生を客観視する余裕を感じます。時間は戻せないし、肩の力を抜いて生きていく決意。彼は人生を達観しているのでしょうか。

Photo_20200726152301

 イーストウッドが演じてきた人物は、みんなカッコいい。ガンマンも、刑事も、ボクシングのトレーナーも・・・。しかし順調に人生を歩んできた苦労知らずは一人もいない。翳のある無名のダーティヒーロー。寡黙で頑固で不器用で、苦悩や悲しみを内に秘めた信念の人。そのキャラが年を経るごとに渋くなる。そんなカッコ良さです。 

| | コメント (0)

2020年7月27日 (月)

美しい花には魔力が潜む

   Photo_20200721214201

 出だしから尺八の旋律が響き不穏な雰囲気に。怖~い映画です。オーストリア・イギリス・ドイツの合作で『リトル・ジョー Little Joe』で、監督はジェシカ・ハウスナー。人が幸せになる香りを放つ新種の植物「リトル・ジョー」を開発した研究者が主人公です。演じたエミリー・ビーチャムがカンヌで主演女優賞に輝きました。

Photo_20200721214302

 舞台はロンドン、遺伝子工学を駆使して新種の植物を創り出す最先端の研究所。クリーンルームの作業、さまざまな検査装置。コロナの病棟を連想します。そこでは「人を幸せにする」妖しい深紅の花が、完成間近になっている。研究室内の基調色は淡いグリーン。アルヴァ・アアルトのサナトリウムのような清潔で気持ちを穏やかにする色です。そこに対照的な真っ赤な花。色彩設計が見事です。

Photo_20200721214301

 この映画では、目黒の panenka(パネンカ)さんのコスチュームが使われている。それを聞いていたので、公開されたらぜひ観ようと思っていました。使われているどころか、半分ぐらいのシーンで出てくるじゃないですか。白衣ならぬ、緑衣(?)。淡いパステル調の色、大きめのボタン。さすが panenka さんのファッションです。

Photo_20200721214401

 「人を幸せにする花」は人類をウツから解放するかもしれない。こんな成果に期待していたとき、ふとした疑念が浮かびだす。ウイルスか何か、この花が出す成分が人を惑わし静かに精神を侵食していくのではないだろうか? 人類はこの花に支配される? 疑心暗鬼が連鎖する異色の植物ホラーの様相を呈してくる。

Photo_20200721214402

 この花の香りをかいだ人々が変わっていく。息子も、同僚も、友人も。いや、周囲の人が変わったのではなく、自分自身が変わったのか。静かに進行する心理サスペンス。遺伝子工学の裏に潜む恐怖や、生命の問題と洗脳や集団心理の危うさを描いて極めて現代的。劇的なシーンはないけれど、じわじわと怖さが増幅しますよ。なお和楽器をフィーチャーした音楽は故・伊藤貞司の楽曲でした。

| | コメント (0)

2020年7月24日 (金)

梅雨の晴れ間のヒマワリ

Photo_20200723202001

 38万本の大輪の花が咲き誇っています。小野市ひまわりの丘公園の南側。5月に種をまいたヒマワリが、いま2.5ヘクタールの畑を埋め尽くして咲いている。漢字では「向日葵」、英語は「Sunflower 」。たしかにどの花も、ほぼ同じ東の方を向いて咲いている。太陽が出てくる方向を向いて首をかしげています。梅雨の晴れ間の近場観光。同じ考えの人が多かったのか、ちょっと密でした。

   Photo_20200723201903

 ヒマワリは北アメリカ原産、キク科の一年草。1510年にスペイン人が種を持ち帰り、マドリードで栽培を開始。17世紀にはフランスへ、次にロシアへと伝わったという。宗教上の理由もあって種子を煎って食べたり油を搾ったり、ロシアで一般的な食用植物となった。国花にもなり、現在もウクライナと並んで世界の2大産地だ。

Photo_20200723201801

 福島の原発事故の後、セシウムを吸収する性質を持つということでたくさん植えられた。ニュースでご覧になったことがあると思います。残念ですが効果は認められていない。でも大きな被害にあった人々を、明るく大輪の花がなぐさめてくれたのは確かでしょう。ゴッホの名画もそうだけど、この花は人を元気にする力がある。

   Photo_20200723201901

 ところでビットリオ・デ・シーカ監督の傑作『ひまわり』が、50周年を記念してデジタル修復され、各地で公開されているようだ。ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニの名演技、ヘンリー・マンシーニの音楽、ウクライナの広大なヒマワリ畑。美しい画質と音質でぜひまた楽しみたい。だけど関西の上映情報がないのは、なぜ?

| | コメント (0)

2020年7月21日 (火)

不死身のシャーリーズ・セロン

   Photo_20200720203201
  
 古代ギリシャや十字軍、アメリカ南北戦争やコソボの内戦・・・何世紀にもわたって歴史の裏で暗躍し、秘密のうちに人類を守り続けてきた不死身の身体を持つ戦闘集団『オールド・ガード THE OLD GUARD』。ジーナ・プリンス=バイスウッド監督のSFアクション映画です。2020年7月10日からNETFLIXで世界配信がスタートしました。

Photo_20200720203204

 ボスのシャーリーズ・セロンがカッコ良すぎ! 戦闘場面のアクション、リーダーとしての立ち居振る舞い、数千年も生きてきた者が持つオーラ、人を殺し続けてきた翳り。こんな多面的で難しい役を見事に表現しています。哀しい記憶や後悔の痛みが心の底にオリのようにつもり、生きていく意欲をむしばんでいく。でも死ねない。

Photo_20200720203302

 撃たれても、斬られても、すぐに傷がいえて起き上がる。歳を取らない不死身ゆえの苦悩。もう愛する人と時間を共有できないのか。いつまで戦い続けなければいけないのか。いくつもの時代を越え、各地を巡り、恐ろしい敵と対戦し続ける運命。「彼らの戦いに終わりはない」というキャッチコピーには深い意味があったのだ。

Photo_20200720203202

 彼らは世界中どこへでも素早く影のように駆け付ける。古い教会の廃墟でも、砂漠の真ん中でも、超高層のバイオ研究所でも。そしていつでもどこでも、殺すことに躊躇はない。登場する人物は、テロリスト、アメリカ海兵隊員、創薬ベンチャーのCEO、アフリカの難民、元CIA工作員など、まさに2020年の厳しい現実を反映。

Photo_20200720203301
 
 派手なアクションが見ものの映画だと思って観ましたが、人間ドラマとしてもおもしろかった。違うタイプの作品だけど『ベンジャミンバトン 数奇な人生』を思い出しました。人生と時間。どうも思い通りにいかないようです。でも予期せぬ幸せを運んでくれるのも時間だと思う。幸運を祈って、希望を持って、日々を大切に。

| | コメント (0)

2020年7月18日 (土)

日本沈没2020 の見どころ

Photo_20200717164501

 小松左京の1973年の大ベストセラー『日本沈没』。湯浅正明監督が全10話NETFLIXオリジナルアニメーションとして作ったのが、『日本沈没 2020 』です。急激な地殻変動により、日本の国土が海に沈んでしまう、という基本以外は原作とはまったく別の物語になっている。国家・国民がどうなるか?と、個人はどう対処するのか?の視点の差。「重い」に対して「軽い」。賛否の分かれるところだ。

Photo_20200717164601

 政府や政治家や学者が国や国民をどう守るかという大きなスケールの話から、破滅的な災害に翻弄されながらも前向きに生きていく家族のサバイバル物語へ。大地震や豪雨など100年に一度の災害が慣れっこになっている現代。SFの世界と現実との境界がどんどんあいまいになってきた。そんな時代のリアリティとは、個人の意識や生き方に求めるしかないのかもしれません。

Photo_20200717164603

 巨大災害が起こった場合、専門家やメディアの情報が正しいとは限らない。また国家ができることの限界など、いろんなことがわかってきた。結局、自分自身が道を選択して前に進むしかしようがない。生と死。出会いと別れ。それが自分が選んだ道なら何があっても納得できるハズだ。本当の意味での自己責任。そんな強い意志を持って懸命に生き抜く個の大切さをテーマにしている。

Photo_20200717164801  
 もうひとつ湯浅監督が言っていることは、ポジティブシンキング。個人の力で、あるいは国家の力をもってしても解決できない未曽有の危機に悩んでもしようがないじゃないか。大切な人を失っても前へ進み続けろ。そうすることによって希望が見えてくるから。主人公の女の子は歩(あゆむ)、弟は剛(ごう GO)。象徴的な名前でしょ。

Photo_20200717164702

 お父さんが日本人でお母さんはフィリピン人の主人公ファミリー。人気ユーチューバーやゲーマー。カルトコミュニティやパラアスリート。今風の人物がいっぱい出てきて、まさに2020年の日本らしさを表現している。それにしても唐突にあっけなく主要な人たちが死んでいきます。それでも懸命に進み続けることで、人間として成長する姉と弟。まぁ、なるようになるということでしょうか。

| | コメント (0)

2020年7月15日 (水)

熊谷守一の、わたし流

Photo_20200712203401

 その昔1979年のこと、熊谷守一を知って感動した生誕100周年記念の展覧会。その後いくつも彼の展覧会を観てきましたが、今回の『熊谷守一展 わ た し は わ た し 』は構成も展示内容も最高に充実していると思いました。生誕140周年と伊丹市政施行80周年という欲張った冠がついている伊丹市立美術館での企画展です。

1965

 赤や茶色の輪郭線に囲まれた単純なカタチと明瞭な色彩。「モリカズ様式」と呼ばれる独自のスタイルで現代でも評価が高い。『へたも絵のうち』という著書もあることから、ヘタウマの元祖のように思われていますがメチャウマです。本質をとらえているからこそ描ける簡潔な線。それが表現する存在感は写実をはるかに超える。

   Photo_20200712204001

 猫が有名だけれど、庭で見かける昆虫や小動物もたくさん描いている。アリやカタツムリ、カマキリやメダカ。他の画家があまり取り上げないものに、科学者のような目を向けて観察し描写する。映画『モリのいる場所』で沖田修一監督が描いた通りの生活だったのでしょう。生命あるものをいとおしむ心が人一倍強かったのか。

   Photo_20200713133701

 描きたいものを、描きたいように。他人の思惑など気にせず、どこまでも自分流を貫いた先に到達した斬新なスタイル。抽象度の高い具象画。いや抽象や具象などという範疇を超えた世界に、「いい絵」を花咲かせたのだ。どこまでも自分の美を追求した熊谷守一。97歳で亡くなるまで意欲的に創作を続けました。

   Photo_20200713133702

 その風貌と生き方から「画壇の仙人」「超俗の画家」と呼ばれる。家から一歩も外へ出ないし、文化勲章は断るし。知らない人からは変人だと思われてもしかたがない。でも人嫌いではなく、ひっきりなしに客が訪れるにぎやかな家だったらしい。自然のままに「わたしはわたし」を貫いた人生。憧れてもできることではありませんね。

わ た し は わ た し
熊 谷 守 一 展
2020年6月23日(火)~7月31日(金)
伊丹市立美術館

| | コメント (0)

2020年7月12日 (日)

曲げ木と二人のアアルト

Photo_20200711230201

 アイノとアルヴァ。20世紀フィンランドを代表する建築家、アアルト夫妻。夫のアルヴァが主に建築を、妻のアイノがインテリアデザインやプロダクトデザインを受け持ち、共同で多くの素晴らしい仕事をしました。いま神戸の竹中大工道具館で、『アイノとアルヴァ 二人のアアルト 建築・デザイン・生活革命』展が開催中です。

Photo_20200711230401

 アルヴァの生誕120周年を記念して、2018年秋から日本各地の美術館でアアルト展が開催されてきた。昨年の春、東京ステーションギャラリーでの展覧会を見て、当ブログで「アルヴァ・アアルト もう一つの自然」(2019年4月13日)として紹介しています。今回の企画展は大工道具館らしく、『木材曲げ加工の技術革新と家具デザイン』というググッと焦点を絞った展示。

   L

 曲げ木と言えばト―ネットが19世紀半ばに発明したカフェチェアが有名です。柔らかいブナ材を使ったアールヌーヴォーっぽい曲線美。アアルトはフィンランド産の無垢バーチ材(シラカバ)を使って革新的な曲げ木の技術「L - レッグ」を発明。この脚をイスの座面やテーブルの天板に直角にネジ止めすることで、効率よく量産できる。上質の家具が安く手に入るようになったのです。

Photo_20200711230501

 木の温かさを持ちつつモダンでシャープなデザインを可能にしたL型の脚。これを使った北欧モダンらしい涼しげな家具は、20世紀のインテリアに革命をもたらしました。ゴテゴテ飾らない、ギラギラ主張しない。リラックスして心からくつろげて、不要な刺激をいっさい与えない。まるでシベリウスの音楽のように。 

   Photo_20200711230502

 アイノの仕事として有名なのが、イッタラのガラス器シリーズ『ボルゲブリック』(スウェーデン語で水の波紋の意味)。手から滑りにくく、スタッキングもできる、シンプルで機能的な名品です。1932年の発売から90年近くたって今も、世界で愛されている超ロングセラー。アアルト夫妻は一点ものの作品より量産品を普及させて、人々の生活をより良くしたいという理想を追求していたのでしょう。

アイノとアルヴァ 二人のアアルト 建築・デザイン・生活革命
木材曲げ加工の技術革新と家具デザイン
2020年3月28日(土)~8月30日(日)
竹中大工道具館

| | コメント (0)

2020年7月 8日 (水)

ユーロビジョンって?

   Photo_20200707114701

 「ユーロビジョン・ソング・コンテスト」はヨーロッパ各国から代表が集まる音楽祭です。1国につき1曲のエントリー。欧州放送連合によって1956年から毎年開催され、全参加国で生中継されるテレビ番組。それぞれの国の投票によって点数をつけ、優勝者を決める。各国予選で本戦出場者を決め、準決勝、決勝と候補が絞られて頂点を目指す、ヨーロッパ大人の歌手の甲子園。

Photo_20200707114801

 NETFLIXの『ユーロビジョン歌合戦~ファイア・サーガの物語~』は、この音楽祭の優勝を目指して奮闘するアイスランドのデュオ「ファイア・サーガ」を主人公にしたコメディ映画です。妖精エルフや幽霊まで出てくるドタバタ劇ですが、登場するメンバーたちがメチャクチャ歌がうまい。しかも得点を稼ぐため、テレビ映えするよう工夫を凝らした派手なパフォーマンス。ショーとしても大盛り上がり。

Photo_20200707114802

 1974年の優勝者はスウェーデンのABBA。幼い頃このテレビ中継を見て「歌手になりたい!」と決意した二人。もう40歳代半ばになったけれど。いまだまったく芽が出ないけれど。ユーロビジョン優勝の夢は決してあきらめない。彼らは不器用だけれど意志が強いバイキングの末裔。陰謀や誘惑や事故など、さまざまなトラブルに打ち勝って、はたして栄冠を勝ち取ることができるのか。

Photo_20200707122401

 アイスランドの大自然。本戦会場のエジンバラ。美しい風景の中で繰り広げられる彼らの挑戦。知らず知らずのうちに審査員になった気分で彼らを応援している。久々に心から笑えるコメディに出会いました。見終わった後の気分もサイコー。監督はデヴィッド・ドブキン。主演はウィル・フェレルとレイチェル・マクアダムス。軽い作品だけれど上質のエンターテインメント。とても良かったです。

| | コメント (0)

2020年7月 5日 (日)

ミナ ペルホネンの展覧会です

  Photo_20200703211301

 はじまり おわり すすみ もどる 心と象(かたち)の つくるとつづく・・・『ミナ ペルホネン / 皆川明 つづく』展が兵庫県立美術館で始まりました。コロナの影響で1週間ほど遅れての開催です。『つづく』というタイトルは、ブランドが継続するという意味を示すのはもちろんですが、繋がる、連なる、手を組む、循環するなど、多様なイメージを想起させるおもしろい切り口の言葉です。

Photo_20200703220603

 流行に左右されず、長年着用できる普遍的な価値を持つ「特別な日常着」をコンセプトに、ミナ ペルホネンは今年で25周年。日本各地の生地産地と深い関係性を築き、オリジナルの生地を作り、プロダクトを生み出す。他に類を見ない独自のものづくりです。自然環境に親和的なテイストや、丁寧なローテクだからこそにじみ出る温かみ。その哲学に共鳴する根強いファンがいるのは納得だ。

Photo_20200703220501

 テキスタイル、ファッションからスタートした活動は、いまやインテリアや食器のコレクションなど生活全般のデザインへと広がっている。国内外のブランドやクリエイターとの協働事業も多い皆川さんが、将来の夢として構想している「簡素で心地よい宿」のプロトタイプ「シェルハウス」。たくさんのスケッチや模型と共に展示されている。これは建築家の中村好文とのコラボで内部も見学できる。

Photo_20200703222901

 この展覧会の見どころは、デザイナーとしての仕事だけではなく、アーティストとしての皆川明をフィーチャーしているところ。谷川俊太郎と作った絵本や新聞小説の挿絵や旅先で描いたスケッチなど、さすが若いころ画家を目指した技量とセンスがうかがえる。それらは創造エネルギーの発露であると同時に、仕事でのアイデアの基にもなっているようだ。創作と仕事の幸せな連鎖。柔軟な思考。

Photo_20200703220602

 鑑賞していた時にたまたま皆川さんが来場され、作品の前で気さくに写真撮影に応じてくださいました。この作品は昨年の秋、東京都現代美術館での展覧会でライブペインティングされたもの。偉ぶらず何事にも真摯に取り組む皆川さんにすっかり魅了されました。
 なお展覧会のポスターやチラシは、メインビジュアルの撮影が上田義彦さん、グラフィックデザインは葛西薫さんだそうです。

ミナ ペルホネン / 皆川明 つづく
2020年7月3日(金)~11月8日(日)
兵庫県立美術館

| | コメント (0)

2020年7月 2日 (木)

「泣き猫」ファンタジー

   Photo_20200701133801
   
 コロナの影響で6月5日から予定していた劇場公開ができなくなり、NETFLIXで全世界配信を始めた長編アニメーション『泣きたい私は猫をかぶる』。監督:佐藤順一と柴山智隆、脚本:岡田麿里で、スタジオコロリド制作の最新作品。みずみずしい思春期の感性を美しい映像と色彩で描いた青春ファンタジーです。

Photo_20200701133802

 主人公は中学2年生。自由奔放、明るく元気いっぱいの女の子ですが、突飛な言動でいつも周りを振り回す。呆れるクラスメイトからは「ムゲ」というあだ名で呼ばれている。つまり"無限大謎人間“の略。他人のことなどお構いなしに見える彼女。じつは人一倍他人の思いを気にするし、他人に言えない悩みや苦しみがある。

Photo_20200701133804

 そんな彼女の唯一の楽しみは、猫に変身して好きなカレに会いに行くこと。夏祭りの夜、奇妙なお面屋にもらった「猫のお面」をかぶると猫に変身できるのだ。猫になっている時だけ、わずらわしい人間関係や思ったことが言えない不自由さから解放される。しかもどこからでもスッと入り込んで、カレに寄り添える。

Photo_20200701133902

 気持ちが伝わらず空回りばかりする人間界。気ままに自由に生きていける猫の世界。二つの世界を行き来することは、人間の二面性を表現しているとも言える。本来の自分と、本心を隠し猫をかぶったもう一人の自分。そのうち猫と自分(人間としての)の境界があいまいになっていく。意識の混濁が始まるのか。

Photo_20200701133901

 そうなって初めて気が付いたこと。それは、自分が誰に支えられているのか。ほんとうに大切なものは何か。このまま猫の世界から帰れなくなったら大変だ。人間界へ戻って、これらの問題にちゃんと向きあわなきゃ。人間に帰るための大冒険とは、自己を確立するための道程。若い人たちの成長を応援するさわやかな物語でした。

| | コメント (0)

« 2020年6月 | トップページ | 2020年8月 »