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2020年6月23日 (火)

スパイク・リーの DA 5 BLOODS

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 スパイク・リー監督が、またまたすごい映画を作ってしまいました。ハリウッド大手がすべて尻込みした『DA 5 BLOODS(ザ・ファイブ・ブラッズ)』を、NETFLIXが製作。ヴェトナム戦争で共に戦った黒人の退役軍人4名が、半世紀を経て戦地ヴェトナムに舞い戻り、極秘に埋蔵された大量の金塊を探すというお話。タイトルは『5』となっているのに、なぜ4名か? それは作品を観ればわかります。

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 お宝探しの映画だけれど、ほんとのテーマはアメリカ社会に根深く残る黒人差別。アフリカ大陸から奴隷として連れてこられて400年。奴隷解放や南北戦争、公民権運動や最近のBlack Lives Matterまで。さまざまな歴史を経験しつつも差別はなくならない。直近も黒人男性が警官に首を膝で押さえつけられて死亡。全米で、世界で、人種差別反対のデモが広がる今、タイムリーな作品だ。

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 新型コロナによる死亡率は黒人は白人の約2.4倍。ヴェトナム戦争でも黒人兵士の死亡率は白人兵士の倍以上。差別は社会生活だけではなく、戦場にも浸透していたという事実は衝撃だ。私たち日本人は知らなかったけれど。当時の映像でキング牧師やマルコムX、ジョンソン大統領やニクソン大統領も登場。ドキュメンタリーの要素をうまく取り入れて、ドラマにリアリティを生んでいる。

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 ヴェトナム人はこの戦争を「アメリカ戦争」と呼んでいるのが印象的だった。立場が変われば、呼ぼ名も変わるのだ。差別される黒人も、無意識のうちにヴェトナム人を差別している。イジメる側とイジメられる側、虐げる側と虐げられる側、それぞれの立場の違いと意識のギャップ。スパイク・リーの眼は公平でしかも冷静だ。またどの出演者も苦悩をうちに抱える難しい役を見事に演じて盛り上げる。

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 帰還兵のPTSD。親子の情愛。友情と反目。枯れ葉剤の散布や地雷除去。過去と現在の激しい戦闘場面。さまざまな要素を盛り込んで、ストーリーは見事な結末へ。暑くて湿度の高いアジア特有の空気の中、登場人物はいっぱい死んでいく。でも観終わった後はとても爽やかな気分です。映画作家として成熟してきたスパイク・リー監督の、これは最高傑作かもしれないと思いました。 

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