METシネマ再開はガーシュウィン
コロナ禍で中断していたメトロポリタン・オペラのビューイング・シネマが再開しました。ジョージ・ガーシュウィンの名作『ポーギーとベス』。コロナ騒動の直前、2月1日に上演された舞台です。METでは30年ぶりとなる上演で、ジェイムズ・ロビンソンによる新演出。幕間のインタビューやカーテンコールを含めて合計3時間40分の上映。
死の2年前、1935年に作曲されたこの作品。南部の港町に住む貧しい黒人たちの暮らしを生き生きと描いている。1920年代初頭のサウスカロライナ州チャールストンが舞台。ガーシュウィン自身は「アメリカのフォーク・オペラ」と評しているそうだ。黒人霊歌やジャズのエッセンスがこもった音楽。もちろん英語オペラです。
ブルース調の子守歌「サマータイム」で幕が開く。いまはジャズのスタンダードナンバーのように思われていますが、じつはこのオペラで歌詞を変えながら3度歌われる名曲。当時の風俗や色鮮やかなコスチュームに、ちょっとソウルっぽい味を効かした歌唱から、南部のむんむんした熱気が伝わってくる。
貧困、麻薬中毒、ハリケーンの被害、警察からの圧力などなど、現代に通じるさまざまな困難が襲ってくる。弱い人間もいれば世話好きもいる。働き者も悪党も。貧しいながらもささやかな喜びを見つけて、なんとか日々を生きていく人たち。純粋な愛と不屈の精神が、すべてを突破していく希望となるのか。
「黒人以外が歌うことを禁ずる」とガーシュウィンに厳命されたというオペラ『ポーギーとベス』。とうぜん出演者は黒人ばかりで、白人キャストは警官だけ。警官は昔も今も白人か(これは事実ではありませんが、イメージとして) 全米でBLMのデモが巻き起こっているいま、期せずしてタイムリーな上映になりました。
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