ビートルズというパンデミック
ロン・ハワード監督の『ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK The Touring Years 』は、誰もが知っているバンドの、知られざる舞台裏を記録映像と貴重な証言で構成したドキュメンタリー。初期のハンブルグ、リバプール時代から、1963年にスタートした15ヵ国90都市166公演におよぶコンサート・ツアーのライブ映像を中心に、その後の音楽を変えた、その後の世界を変えた彼らの活動をたどる。
1960年代に突如現れ、まるでパンデミックのように世界中の若者に感染したビートルズ。この映画を観るとあらためてそのすさまじさに驚く。その音楽、その髪型、そのファッション、その言動、その思想・・・。いままで世界に存在しなかったアイドルとして、カリスマとして社会現象となった4人のグループ。ビートルマニアと呼ばれたファンの熱狂的な行動は各国で社会問題化する。
青少年に悪影響を及ぼす、風紀の乱れを招く、とビートルズは大人からは新型ウイルスのように嫌悪されることとなる。ジョンの「僕たちはキリストより人気がある」という発言も火に油を注いだ。その結果、多くの国でビートルズは放送禁止に。ほかにもアメリカ南部の黒人と白人の人種隔離政策に公然と異議を唱えるなど、彼らの存在は保守的な人たちからは世界の敵のように攻撃される。
そのうち彼ら自身も巨大なスタジアムで開催する野外コンサートに疑問を持つようになる。そしてスタジオでの音楽制作に専念、アイドルからアーティストへと進化していく。1969年1月30日、ロンドンのアップル・コア社の屋上でゲリラ的に行われた久しぶりのパフォーマンスが、歴史的な最後のライブになった。それを収めたのがアルバムや映画の『Let It Be 』だ。いろいろ紆余曲折があったが。
いま私たちはビートルズ後の音楽新世界を当たり前のように生きている。これまで何度もあったパンデミックの後も、確実に世界は変わったことを歴史が証明しています、決して元に戻るのではなく。ではコロナ後、この世界はどう変わるのでしょうか。できればより良い方向に変わってほしいと願います。
さてこの作品は、ビートルズ「公式」ドキュメンタリー映画と名乗っている。その所以はポール・マッカートニー、リンゴ・スターをはじめオノ・ヨーコ、ジョージ・ハリスンの未亡人オリビア・ハリスンなど、関係者の同意と全面協力のもとに製作されたから。見どころ満載の『THE BEATLES EIGHT DAYS A WEEK』。きっとこれからビートルズを語るうえでのスタンダードになることでしょう。
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