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2020年2月11日 (火)

日本の美学で演出、蝶々夫人

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 今回のMETライブビューイングは、2019年11月9日に上演されたプッチーニの『蝶々夫人』。ミラノのスカラ座で1904年に初演された異国情緒にあふれたこのオペラ、一途な愛に生きる凛とした日本人女性と気ままで軽薄なアメリカ人男性にまつわる悲劇です。この設定は原作小説のものですが、当時の欧米社会の東洋趣味とアジア蔑視の感情が下敷きにあるは確か。でもそれはプッチーニのせいではなく、物語が作られた時代の反映でしょう。

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 演出は映画『イングリッシュ・ペイシェント』を監督した故アンソニー・ミンゲラ。2006年の初演からMETで何度も上演されている名舞台です。障子やふすま、提灯などを使って「省略」を極めたシンプルな舞台美術。音楽のない出だしや効果的な照明。幻想と現実が入り混じった見事な演出で、歌舞伎より能に近い世界を生み出している。ミニマルでいて多くを語る。豊かなイメージが膨らむ。侘茶や禅に通じる日本文化をよく研究していると感心しました。

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 生身の子役よりピュアな存在感を醸し出す文楽風の人形や黒衣の活躍も印象的。エンディングには筆で書いた「蝶々夫人」のタイトルが舞台の背景に大きく映し出される。予定されていたキャスティングからピンカートン役と領事役が交代となったけれど、どの出演者も熱演でした。なかでも素晴らしかったのが「スズキ」を演じたエリザベス・ドゥショング。難しい役どころを微妙な心理まで繊細に演じ分けていた。このオペラはコスチュームが多少ヘンでも、余りあるおもしろさ。期待を大きく上回る公演でした。

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