キャッツを実写で作る時代
ウエスト・エンドの初演からもうすぐ40年。世界でロングランを続けた超人気ミュージカル、『キャッツ』。ノーベル文学賞を受賞した20世紀を代表する詩人、T.S.エリオットの『キャッツ ― ポッサムおじさんの猫とつき合う法』が原作です。ミュージカルとしては大傑作なのですが、映画については批判と反発の嵐。そりゃまたどういうこと?
『レ・ミゼラブル』のトム・フーパ―監督によって実写映画化されました。アメリカで昨年公開されるやいなや、「気持ち悪い」とか「ホラーだ」とか、さんざんな評価です。それは最新の映像技術がスゴすぎることによるのだと思う。ユーモアあふれる猫ファンタジーが、リアルな猫人間物語になってしまったから。人形がリアルになるほど不気味に感じる感覚に近いかも。
ミュージカルの舞台では、着ぐるみ的キャラが歌ったり踊ったりする。いろんな個性豊かな猫に、「そんな人いるいる」と似た人間を思い浮かべて、笑ったりハラハラしたり。それに対して映画ではCG技術で毛並みをつけられた出演者たちが、きわめて自然で生々しい。この距離感に戸惑いを隠せない評論家もいるでしょう。拒絶反応を起こす観客もきっといるでしょう。
でも映画人なら想像上のイメージをできるだけリアルに映像化しようと考えるのは当然だ。ペットとして生きている猫とは別種の生き物『ジェリクルキャット』の物語と受け取られてもいいじゃないか、と。もともと猫が歌ったり踊ったりする不自然を、「作り話ですよ」という舞台の設えで許していたのに、一線を越えてしまった? この違和感は理屈じゃない。生理的な嫌悪からくるものだと思う。
jewelryとmiracleからエリオットが考えたと言われる造語『ジェリクル キャッツ Jellickle cats』。その世界観をトム・フーパ―監督はうまく表現していると思います。『キャッツ』のことを書いて作者・作曲家のアンドリュー・ロイド=ウェバーに触れないわけにはいかないでしょう。『ジーザス・クライスト・スーパースター』、『エビータ』、『オペラ座の怪人』など歴史に残るミュージカルの傑作をありがとう。舞台、映画の別なく、あなたの素晴らしい音楽は永遠です。
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