2019年12月 6日 (金)

旧・南蛮美術館の逸品

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 まじわる文化、つなぐ歴史、むすぶ美 ― というキャッチフレーズで、神戸市立博物館が約2年をかけたリニューアルを記念して『神戸市立博物館名品展』を開催している。教科書にも出ている有名な聖フランシスコ・ザヴィエル像。長崎の出島にもコピーが飾ってあったが、所蔵しているのはここです。もともと神戸の資産家・池長 孟(いけながはじめ)がコレクションし、1938年には熊内町にアールデコ調の美術館まで建てて展示していた作品。その美術館は戦後に大量の所蔵作品ごと神戸市に寄贈され、1982年まで市立南蛮美術館という名で親しまれていた。


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 1982年に旧横浜正金銀行の建物を活用した市立博物館の開館。それに合わせてこちらに移されたコレクションが今の市立博物館の中心です。国内に何点か残っている南蛮屏風の中でも質が高いこの作品は、狩野内膳による桃山時代のもの。ほかにも神聖ローマ皇帝、トルコ皇帝、モスクワ大公、タタール王を描いた泰西王侯騎馬図屏風も素晴らしい。宣教師の教えを受けた日本人絵師が西洋の画法と和の技法を折衷させて完成したおもしろい作品です。

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 神戸の歴史に因んだ展示物は、市立考古館から引き継いだ作品が中心だ。1964年に宅地造成中の灘区桜ヶ丘で出土した国宝の銅鐸(どうたく)14点と、銅戈(どうか)7点。2千年前のモノが状態よく残っている。楽器だとか祭礼用だとか、その用途はいまだ謎のようですが。我が家から歩いて行ける桜ヶ丘にそんなお宝が埋もれていたとは意外です。源平合戦図や近代のブルーム氏個人アルバムまで、神戸のさまざまな時代を垣間見ることができるリニューアル記念の名品展。主な作品は新しくなったコレクション展示室でこれからも見ることができます。

まじわる文化、つなぐ歴史、むすぶ美
神戸市立博物館 名品展
2019年11月2日(土)~12月22日(日)

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2019年10月16日 (水)

バウハウスが100周年

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 これはBauhaus!展の入場チケットです。若いころは(はるか遠い昔ですが)先輩デザイナーが発する「バウハウス」という音の響きだけでも、うっとりするほど神々しい存在でした。1919年、グロピウスによってヴァイマールに開校されてから100年。ナチスの弾圧を受けて1933年に閉鎖されるまで、わずか14年と短い活動期間でしたが、後世のアートやデザイン界に多大な影響を与えた造形学校です。いわばモダニズム建築やモダンデザインの偉大な神殿のようなもの。合理主義的、機能主義的な美の世界。

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 100周年のいま、この実験精神に満ち溢れた伝説的な教育機関を見直し、ユニークな授業内容や作品を紹介する展覧会が『きたれ、バウハウス』。西宮の大谷記念美術館で開催中です。建築、金属、陶器、織物、家具、印刷、広告、舞台美術など様々な分野での成果や資料など約300点を展示。教師陣の顔ぶれがスゴイ。グロピウス、ミース・ファン・デル・ローエ、パウル・クレー、カンディンスキー、モンドリアン、マルセル・ブロイヤー・・・名前を聞いただけでワクワクする。時代を代表する芸術家が指導していたのです。

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 時代を代表する芸術家が指導する革新的な授業の一部を体験できるのがおもしろい。色分けされたプレートを回したらどんな色に見えるかを体験する「回転混色」、光線の色とそれにより生じる影の色の関係を体験する「色の影」、円と正方形と1/4円の3つを要素にしてアルファベットや数字を作る「組み合わせ文字」などなど。頭で考えるだけではなく、実際に見て触れて手を動かして、五感をフル活用する教育。アカデミーで絵画を習うか、親方について修業するしかなかった時代に画期的です。

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 優れたデザイナーや建築家を輩出したバウハウスですが、ポストモダン、ポストポストモダンなどの流れを経て、いつしかカビが生えかけたレトロな趣になってしまいました。でも改めて展覧会を見てみると、永遠に新しいと感じる。それは学校の基本方針である、想像力を刺激し創造性を引き出す、という理念。伝統からも社会常識からも自由に、より美しいもの、より良いものを目指す姿勢。これからどんなに時代が変わっても、バウハウス流のモダニズムはひとつの指針として美の底流にずっと続いていくことでしょう。

きたれ、バウハウス
造形教育の基礎 開校100年
2019年10月12日(土)~12月1日(日)
西宮市大谷記念美術館

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2019年10月 4日 (金)

クリムトもシーレもありますが

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 19世紀末から20世紀初頭にかけて、ウィーンで花開いたきらびやかで装飾的な世紀末芸術に光を当てる『ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道』というタイトルの展覧会。日本とオーストリアの外交樹立150周年を記念して国立国際美術館で開催されている。主要展示作品は大改修中のウィーン・ミュージアム(ウィーン市立歴史博物館)から運んだという。ナポレオン戦争後のウィーン会議の議長・メッテルニヒの赤皮アタッシュケースなんて珍品も展示。そんな展覧会なので、サブタイトルのクリムトやシーレに惹かれて観に来た美術ファンは肩透かしに合うかもしれません。

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 長く中欧を支配したハプスブルグ家のオーストリア=ハンガリー帝国。その首都ウィーンに集まる多くの文化人たちでサロン文化が花開く。展示はクリムトやシーレの有名な絵画だけではなく、その時代のファッションや日用品、ポスターや雑誌、建築や家具のデザインなど多岐にわたり、モダニズムの先駆けとなった多様な文化を知ることができるよう企画されている。短いけれど絢爛豪華だったウィーン文化。なるほど、『黄金時代』と呼ばれる理由がよくわかる。歴史好きにこそ楽しめる展覧会、というのは言い過ぎですが。


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 文化が爛熟した背景はブルジョアジーの台頭。それによって暮らしの中に美を見出す動きが高まり、多彩な才能が花開いた。シェーンベルクやマーラーなどの音楽。ヴァーグナーやロースの建築。フロイトの精神分析。この辺りの事情は9月1日の当ブログ「世紀末ウィーンに咲いた花」でも書いています。つまり芸術が王侯貴族だけのものではなくなったのだ。この展覧会はウィーンを芸術の都たらしめた所以を、ここに至る歴史を踏まえてさまざまな作品や製品の展示でたどっている。ウィーン世紀末文化の総体を理解するのに最適です。


ウィーン・モダン
クリムト、シーレ 世紀末への道
2019年8月27日(火)~12月8日(日)
国立国際美術館

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2019年9月28日 (土)

滝の霊性と横尾忠則

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 横尾忠則さんのモチーフのひとつが滝。展覧会でたくさんの作品を観ていると、メインでないにしても背景に滝が流れている絵が多いことに改めて気づく。滝は昔から日本人の信仰を集める存在でした。那智の滝などは滝そのものが熊野神社の別宮・飛瀧神社のご神体。高い山や巨岩や大樹などに霊力を感じ、自然を崇拝するアニミズムが生活に根づいていた日本人だからでしょうか。なかでも横尾さんは霊性に感応する能力が特に高い人なので、滝に強く反応したのでしょう。

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 おもしろいのが世界中から集めた一万数千枚の滝の絵ハガキを使ったインスタレーション。部屋に入ると四方の壁も天井も滝の絵ハガキで埋め尽くされている。床も鏡面のステンレスなので全身が滝に包まれている感覚。ラグビー日本代表のベテランSH田中史朗選手が、ワールドカップをめざして厳しい滝行をする姿をテレビ番組で見ましたが、メチャ簡易版の滝行みたいです。こんなことを言うと真剣に修行する人に失礼ですが。豊島横尾館の円塔とはまた違った魅力です。

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 滝のインスタレーションを構成する絵ハガキが、芸術作品ではなく観光用お土産用なのがいい。決してアーティストのポストカードではないのだ。その哲学がさまざまなスタイルでアンディ・ウォーホールを描いた60点の作品『A.W. Mandala』につながっていると思う。もちろん横尾さんが多大な影響を受けたウォーホールへのオマージュに違いない。そしてそれは私たちの時代に滝のように降り注いだポップアートの霊力や大量生産・大量消費に対する批評にもなっている。ちょっと、うがちすぎかな。

横尾忠則 自我自損展
2019年9月14日(土)~12月22日(日)
Y+T MOCA 横尾忠則現代美術館

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2019年9月25日 (水)

横尾忠則の自我自損?

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 「自画自賛」ではなく「自我自損」。『画』ではなく『我』。『賛』ではなく『損』なのだ。ゲスト・キュレーターとして自身の展覧会を企画した横尾忠則。彼は、エゴに固執すると損をする、という自画自賛をもじった造語でこの展覧会をくくりました。サブタイトルにも、THE END OF EGO と入っている。同一作家とは思えないほど大胆にスタイルを変化させてきた横尾さん。それは絶えざる自我の否定から生まれたのでしょうか。

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 自らの旧作に何のこだわりもなく手を加えて、新たな作品へと変貌させる試みがたくさん見られる。いや、むしろ極めて強いこだわりがあるからこそ、つねに新たな目で見直して作品の完成度をより高めようとしているのかもしれない。時間が経てば人は変わる。考え方も、ものの見方も変わる。変わらないことは、生きていないに等しい。だからすべてが現在進行形で終わりがない。言い方を変えれば、その時その時のベストがあり、その時のベストを追求するのが作家だという考え方。

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 そんなことを考えていたら、1970年の大阪万博の「せんい館」を思い出した。横尾さんがディレクションしたこのパビリオンでは建築用の足場がオブジェとして扱われていた。「え、まだ工事中⁉」という驚きはすごかった。建築途中を凍結して見せることは、未完成ならではの美しさの発見だった。完成が善だという常識への挑戦。そして完成の姿や万博終了後の撤去まで時間の経過を強く意識させる表現だった。どこか似ていませんか。

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 そんな特徴をありのままに展示する試みだから、この展覧会で観た作品が完成作なのかどうか、横尾さん自身にもわからないにちがいない。作家も鑑賞者も、今日のところはこの辺で、みたいな感じ。展示されている70点近くの作品を観ていくと、人間ってこれほど多方面に興味を持てるものなんだと感動する。しかも自分の作品(過去)を破損させてまで新たな表現を追求する執念に感服です。

横尾忠則 自我自損展
2019年9月14日(土)~12月22日(日)
Y+T MOCA 横尾忠則現代美術館
 
 

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2019年9月22日 (日)

千住博、40年余の歩み

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 六甲アイランドで隣り合う神戸ゆかりの美術館と神戸ファッション美術館を会場に『千住博展』が開催されている。高野山金剛峯寺に奉納する襖絵の完成を記念して、そのお披露目と合わせて世界で活躍する千住博の画業40年余りの歩みを展覧するという企画。さまざまな見事な作品があるなかで、やはり目立つのは『瀧』の作品です。

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 そう、千住さんと言えば瀧。1995年のヴェネツィア・ビエンナーレで東洋人で初めて名誉賞を受賞。世界中から高い評価を受けました。エアブラシを日本画に持ち込んで瀧を描き、日本画を世界に通用する芸術へ高めたのです。蛍光塗料を塗りブラックライトで照らすことによってモノトーンの滝が青く幻想的に浮かび上がる大作『龍神Ⅰ、Ⅱ』は、夢の世界に入り込んだような感動です。

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 今回の展覧会はルネサンス絵画に影響を受けた1980年代の初期作品から、最新作の奉納襖絵までまで27点が展示されている。27点と言うと少ないようですが、一点一点がとても大きいから展示に場所をとる。2つの美術館を使っているのはそのためだ。しかも2会場に分かれていても散漫な印象はまったくない。中身が濃い。

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 2会場を巡っていると、千住さんは40年余りの間、つねに新しい技法やテーマに挑戦し続けたことがよくわかる。そして瀧にも、断崖にも、桜の樹にも、そのものが持つ存在の本質が感じられる。これは40年変わらない。無機的な自然の風景にも、その奥に宿る精霊とか生命力の存在。そんなアニミズム的な世界観こそ、モチーフや技法が変わっても不変の表現の核なのかもしれません。

高野山金剛峯寺 襖絵完成記念
千住博 展
2019年9月14日(土)~11月4日(月)
神戸ゆかりの美術館
神戸ファッション美術館

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2019年9月19日 (木)

千住博の高野山奉納襖絵

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 高野山が開創1200年を迎えた2015年から約3年をかけて制作された2点の襖絵および障壁画。総延長17メートルの『断崖図』と25メートルの『瀧図』が、2020年に高野山金剛峯寺に奉納されることになりました。この展覧会は、奉納前のお披露目。金剛峯寺には狩野探幽などの襖絵もあり、これで千住博さんも歴史の一部になるのでしょう。下の写真は部屋の四方を囲む絵を一面に並べた形。
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 作家自身が画業40余年の集大成として位置付ける渾身の大作は、見応え十分です。『断崖図 Cliff』は大主殿の「茶の間」に襖18面。胡粉で下塗りした和紙をクシャクシャにシワをつけ、天然岩絵の具とプラチナ泥で描いたそうだ。襖絵なので平面作品なんだけど、凹凸があり、割れ目がある。まさに岩石の表面のような質感は立体だからこそ生みだせたのだ。

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 『瀧図 Waterfall』は大主殿の「囲炉裏の間」に。襖、床の間の壁画で合計24面。焼き群青で描いた限りなく黒に近いブルーグレーの下地に、胡粉を流し、その上から水を流し、さらにエアブラシで飛沫を吹き付ける。ほんとうに流れる水で表現した瀧。計算できない偶然性が液体としての水をよりリアルに見せる。写実ではないけれど、瀧の本質、霊性を写実以上に感じさせる表現力は素晴らしい。

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 これら奉納襖絵をニューヨークのスタジオで制作する様子を記録したVTRがとても面白い。千住さん自身が解説する独自の技法や創作の秘密が、「ここまで語ってもいいの、盗まれるんじゃないの」と心配するぐらい丁寧で分かりやすい。まぁ、いくら説明を聞いても同じようには出来ないと自信があるからでしょう。このVTRは10分ほど。展覧会場の外ですが、ぜひ忘れず見てくださいね。


高野山金剛峯寺 襖絵完成記念
千住博 展
2019年9月14(土)~11月4日(月)
神戸ゆかりの美術館
神戸ファッション美術館

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2019年9月13日 (金)

抽象へ? 建築へ?

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 版画の技法を応用した型の技術や釉薬の厚みによる独自の表現を確立したルート・ブリュック。1951年にはミラノ・トリエンナーレでグランプリを受賞するなど、国際的にも大成功を収めました。ところが彼女は50歳ごろから大きく作風を変えていく。具象的な陶板から、抽象的で立体的な作品へ。その理由は今も分からないらしい。あくなき美の追求から、と言うしかないのでしょう。

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 彼女が編み出した独自の方法は、大小さまざまなピースを焼き上げて、それを組み合わせで作品にするというもの。同じ北欧つながりでデンマーク生まれのレゴブロックに考え方は少し似ている。とは言え似ているのは組み合わせて作るというだけで、もっと複雑なカタチや素材感やサイズ構成。光や影の効果も活用してとても重層的な表現を可能にしている。陶磁のモノとしての存在感がベースにあるので、カンディンスキーやモンドリアンの抽象とはまったく違う。

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 正方形、円、六角形などシンプルな基本形。凹と凸のピースや、色あざやかな釉薬の有り無し。一つ一つは小さなピースだけれど、たくさん集めて組み合わせることによって、多彩な表情を持つ作品に統合させる。もともと建築家志望だったという彼女の明晰さと関心は、美術作品を制作するという感覚的な行為より、壁面を創造するといったもっと構築的な作業に向けられたのかもしれません。

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 さらに晩年にかけては、ヘルシンキ市庁舎やフィンランド銀行、大統領公邸のモザイク壁画など、フィンランドを代表する建築の一部を構成するような巨大な作品制作に移行。もはやセラミック・アーティストというジャンルをはるかに超えた現代アーティストの姿です。しかし一見ミニマルで抽象的なこれらの作品も『流氷』や『色づいた太陽』などのタイトルに見られるように、持って生まれた抒情性はずっと健在だったのでしょう。必見の展覧会です。

ルート・ブリュック 蝶の軌跡
2019年9月7日(土)~10月20日(日)
伊丹市立美術館・工芸センター


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2019年9月10日 (火)

多彩! ルート・ブリュック


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 フィンランドが生んだ偉大なセラミック・アーティスト、ルート・ブリュック(1916―1999) 彼女の没後20年、日本フィンランド外交樹立100周年を記念した展覧会が、伊丹市立美術館で開催されている。7月26日のブログ「フィンランドの陶芸って?」でご紹介した大阪市立東洋陶磁博物館の展覧会でも中心的な作家のひとりでした。今回は200点以上の作品を網羅した充実の個展です。

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 設備の整った環境で作家の自由な創作活動が認められたアラビア製陶所の美術部門。そんな夢のような環境で、彼女は専属アーティストとして約50年にわたって創作活動を続けた。新しい技法への挑戦、思い通りの色を出す釉薬の研究。売るための製品デザインを要求されることなく、自由に作家性を発揮できる環境。東洋陶磁美術館の展覧会では「芸術家たちのユートピア」というサブタイトルがついていました。

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 スクラッチや石膏型を使った描線の盛り上がり。表面の凹凸や釉薬の厚みによる色の深み。艶やかにとテカる面とマットな地肌。ルート・ブリュックの作品は陶器のイメージを超えて、セラミックを使った立体作品だ。物質としての存在感がすごい。それについては同じ職場のビルゲル・カイピアイネンやミハエル・シルキンの影響も強い。お互いが良い刺激を与えあいながら、三人それぞれ素晴らしい傑作を世に送り出している。

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 幼いころの思い出を抒情的に表現した若いころの作品。イソップ物語や聖書にモチーフを得た多くの作品。どれも深みのある色や物語性のある表現が特徴的にあらわれています。また鳥や魚や果物なども、カタチを変え表現手法を変え、いくつもいくつも作られる。これらは北欧のみならず世界中でいまも高い評価を得ています。

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 カレリア地方の夏の生活やイタリアへの旅行からも多大なインスピレーションを得ていたようだ。知らない光、知らない色、知らない景色。あふれる好奇心と、みずからの内なる創作意欲を高めるための追求は、生涯を通じて止まることはなかった。そして彼女は50歳ごろから大きく作風を変える。後半の作品については次回にご紹介しましょう。

ルート・ブリュック 蝶の軌跡
2019年9月7日(土)~10月20日(日)
伊丹市立美術館・工芸センター

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2019年9月 4日 (水)

今年もボローニャ絵本展

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 西宮市大谷記念美術館で『2019 イタリア・ボローニャ国際絵本原画展』が開催されています。世界で唯一の子どものための本の見本市『ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア』で開催される絵本原画コンクールを日本に持ってきた展覧会。このコンクールの特長は、キャリアは一切関係なく、5点一組の絵を用意すれば誰でも応募できる公募展だということ。そして世界から選ばれた編集者やイラストレーター、出版関係者、教育者によって審査される。すでに絵本として発表された作品も未発表のものも、すべて平等に審査されるのがおもしろい。

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 インク、鉛筆、リノカット、水彩、油彩、シルクスクリーン、パステル、墨など、使う絵具も技法もさまざま。布のパッチワークや刺繍で絵を創った作品もある。62ヵ国2901作品から選ばれた、日本人10名を含む76作家すべての入選作を展示。みんな目新しい技法や色使いで創作しているので、見ごたえたっぷりだ。そして絵と物語の発想は国際色豊か。ベネズエラやセルビアなど普段なじみが薄い国からも多数入選。お国柄というのか、民族的な違いというのか、それぞれ地域の歴史と自然環境に根づいたユニークな表現に、世界の広さと文化の多様性を感じられる。

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 ここでの入選をきっかけにプロの作家としての一歩を踏み出す人も少なくない。いわば新人の登竜門。そしてアーティスト以外に編集者や出版関係者も一堂に集まるこのフェアは、重要なビジネスの場でもある。版権の売買、企画の相談、出版や翻訳の交渉が数々行われる。だからこのフェアの参加者はみんな真剣だ。原画展のクオリティの高さはそんなところからくるのかもしれません。小学生や中学生の団体が、とても熱心に鑑賞していたのが印象に残りました。この子たちの中からボローニャで入選するアーティストが生まれるかもしれません。期待しましょう。

イタリア・ボローニャ国際絵本原画展
2019年8月17日(土)~9月23日(月・祝)
西宮市大谷記念美術館

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