精練所と家プロジェクト
犬島は江戸城、大坂城、岡山城などの石垣に使う花崗岩の切り出し地。石の産地です。明治時代には銅の精錬所が開設される。その遺構を再生したのが『犬島精練所美術館』。三分一博志の建築と柳幸典の作品で構成される。銅を精錬した残りかすを利用した黒褐色のカラミレンガでできた重厚な空間の中で、三島由紀夫の世界観を味わえるアート作品の展示。近代化産業遺産の廃墟としての美しさは三島の滅びの美学に通じるのでしょうか。
最盛期には6,000人もの人々が暮らしていた犬島も、社会や経済状況の変化と高齢化により現在は50人を切っているという。そんな島をアートの桃源郷にしようとする建築家の妹島和世さんとディレクターの長谷川祐子さんが手がける家プロジェクトが見ものです。島内に点在するかつての家の跡地に『F邸』『A邸』『I邸』『S邸』『C邸』の5つのギャラリーと『石職人の家跡』に作品を展示。
作品を展示しているのは、名和晃平、荒神明香、ベアトリス・ミリャーゼス、半田真規、オラファー・エリアソン、浅井裕介など素晴らしいアーティストたち。この島の歴史や身近な自然が感じられる。かつての家の古材や屋根瓦を使ったり、まわりの風景が見える透明アクリル、映り込みの面白さを狙った反射板、発砲させたウレタンフォームなど使用されている素材もおもしろい。
小さい島なので集落を歩いて作品を観て回れる。ちょっと休憩したくなったら妹島和世さんの作品『中の谷東屋』が。アルミの鏡面仕上げの屋根は周囲の風景を映し出し、風が通り抜ける空間は周囲と一体となる。中にはSANAAデザインのラビットチェアも用意されていますよ。キノコの傘の下にもぐったようなこのスペース。あれ、話し声や音がエコーになってる。異次元に入った感覚です。
瀬戸内国際芸術祭 2019
ひろがる秋
2019年9月28日(土)~11月4日(月)
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