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2019年9月16日 (月)

宮廷を舞台にした歴史劇

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 今年のアカデミー賞の主演女優賞、助演女優賞(2人)、作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞、衣装デザイン賞、美術賞、編集賞の最多10ノミネート。そしてオリヴィア・コールマンが主演女優賞を受賞。なんかスゴイねという映画、ヨルゴス・ランティモス監督の『女王陛下のお気に入り』 The Favourite です。「お気に入り」よりむしろ「最愛の人」。The が付きますからね。遅ればせながら観ました。

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 たしかに3人の女優の演技は素晴らしい。国の統治よりも愛に生きる女王アン。女王を操る幼馴染みの権威主義者・サラ。成り上がりを目指す若いアビゲイル。三者三様の個性が見事に表れている。コスチュームや宮殿内部の装飾も華麗だ。もちろん時代考証もしっかりしているはず。深みのある落ち着いた色調は、ほぼ自然光で撮影しているからでしょう。暗いかげりが美しい。

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 18世紀のはじめ、英国とフランスが第二次百年戦争と呼ばれる戦いを続けていた時代。スチュアート朝最後の女王アンをめぐる二人の女の物語です。こう書くと重厚で堅苦しいシリアスなドラマと思われがちですが、実態は笑いどころがいっぱいのコメディです。ただしブラックですが。日本人なら『大奥』の愛憎と『仁義なき戦い』を思い浮かべるかもしれない。

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 戦争を継続するか、和平を推進するか。すでに議会があった英国ではそれぞれの党派が主張をぶつけ合う。最後は情緒不安定ですぐに思考停止におちいる女王のツルの一声で決まる。君主制ですから。その女王を動かすのは側に仕える二人の女官。大臣や議員もまずはこの女官に取り入らないことには意見も通らないので必死です。今もどこかでありがちな話で笑えます。

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 戦争をしていても、宮廷は庶民の疲弊や苦悩とはまったく別世界。優雅で上品なはずのセレブたちはお下劣なバカ騒ぎはするし、ゲスな行いばかりで、モラルのかけらも持ち合わせていない。こんな連中が国の将来を考えることができるのか、と心配になるぐらい。でもそんなやり方でも歴史はちゃんと動いてきた。もしあのとき違う決定が行われていたら、なんて考えはこの映画のテーマではありません。

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