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2019年9月28日 (土)

滝の霊性と横尾忠則

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 横尾忠則さんのモチーフのひとつが滝。展覧会でたくさんの作品を観ていると、メインでないにしても背景に滝が流れている絵が多いことに改めて気づく。滝は昔から日本人の信仰を集める存在でした。那智の滝などは滝そのものが熊野神社の別宮・飛瀧神社のご神体。高い山や巨岩や大樹などに霊力を感じ、自然を崇拝するアニミズムが生活に根づいていた日本人だからでしょうか。なかでも横尾さんは霊性に感応する能力が特に高い人なので、滝に強く反応したのでしょう。

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 おもしろいのが世界中から集めた一万数千枚の滝の絵ハガキを使ったインスタレーション。部屋に入ると四方の壁も天井も滝の絵ハガキで埋め尽くされている。床も鏡面のステンレスなので全身が滝に包まれている感覚。ラグビー日本代表のベテランSH田中史朗選手が、ワールドカップをめざして厳しい滝行をする姿をテレビ番組で見ましたが、メチャ簡易版の滝行みたいです。こんなことを言うと真剣に修行する人に失礼ですが。豊島横尾館の円塔とはまた違った魅力です。

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 滝のインスタレーションを構成する絵ハガキが、芸術作品ではなく観光用お土産用なのがいい。決してアーティストのポストカードではないのだ。その哲学がさまざまなスタイルでアンディ・ウォーホールを描いた60点の作品『A.W. Mandala』につながっていると思う。もちろん横尾さんが多大な影響を受けたウォーホールへのオマージュに違いない。そしてそれは私たちの時代に滝のように降り注いだポップアートの霊力や大量生産・大量消費に対する批評にもなっている。ちょっと、うがちすぎかな。

横尾忠則 自我自損展
2019年9月14日(土)~12月22日(日)
Y+T MOCA 横尾忠則現代美術館

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