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2019年8月13日 (火)

山村コレクションの先見性

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 山村硝子株式会社の元社長、山村徳太郎さんが収集した68作家、167点の作品が、1987年に兵庫県立美術館に収蔵されました。それらは20世紀後半の日本美術を代表する作品群。いま世界的に価値を高めている『具体 GUTAI』を中心に『ネオ・ダダ』のアーティストたち、それに80年代のニューウェイヴ。戦後美術史を語るうえで欠かせない重要作品がたくさん含まれている。ちょっと言葉は古臭いけれど、前衛美術の一大コレクションなのです。(前衛という言葉はいまや死語ですね)

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 「アブストラクト(=抽象)と人間くさい前衛のはざま」という独自の方針で、まだ評価が定まらない新しい表現をコレクションした山村徳太郎。これらがいずれは公共の財産になる、という前提で集めたというからすごい。アート作品は誰のモノ? という問いに、作家のモノでもなく、所有者のモノでもなく、その後の時代その後の社会全体の文化遺産だという答えを持っていたのでしょう。その考え方こそが先見の明だと思う。
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 アートは未来の文化遺産として子孫たちへ残す公共材。そう考えた西宮在住の山村にとって「戦後の関西」はとても幸運だった。「人の真似をするな。今までにないものをつくれ」と吉原治良が主導した具体美術協会の活動が阪神間で盛り上がっていたから。いまでは世界の美術史に名を残すアートムーブメントの面々と、同時代を過ごし同じ空気を吸って交流したからこそ集められたコレクション。もちろん彼の眼の確かさがあってのこと。

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 時代の先をいく人物と、先駆的アートムーブメントの出会い。そこで収集された作品群は、いま見てもワクワクする面白さと美意識を揺さぶられる刺激にあふれています。個人コレクターが集めた同時代のアート作品群を、後の時代に公共の美術館で楽しむ。世界ではフツーにありますが、日本ではまだ珍しい、そんな考え方を具現化した山村コレクション。日本の美術が最も輝いた時代をたっぷり楽しめます。

集めた!日本の前衛 山村徳太郎の眼
山村コレクション展
2019年8月3日(土)~9月29日(日)
兵庫県立美術館
 

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