アフリカの希望の風
キウェテル・イジョフォー監督の「風をつかまえた少年」The Boy Who Harnessed the Wind という映画が素晴らしい。2010年に出版された同名のノンフィクション(ウィリアム・カムクワンバ、ブライアン・ミーラー著 文藝春秋刊)が原作です。貧困のために学費を払えず中学校を退学になったウィリアム。その14歳の少年が独学で風力発電の風車をつくり、乾燥した畑に水を引いて村を飢饉から救った奇跡の実話の映画化。
森林破壊や地球温暖化による異常気象でアフリカの最貧国のひとつマラウイで大干ばつが起こる。そして数千人規模の餓死者を出した。そんなころ学校の図書館に潜り込み出会った一冊の本をきっかけに、少年は電気を起こす風車を作ろうと思いつく。ユーカリの木、自転車の部品、廃品のプラスチックパイプなど、身近で入手した部材で風力発電装置を製作。その電力でポンプを動かし、井戸から水を引く。
いまだに祈祷師の祈りで雨を降らせようとするような部族社会。村の大人たちは家族でさえも少年の夢物語に耳を貸すはずはない。でも彼のまっすぐな想いとひたむきな努力が、次第に周りを動かし始める。学ぶことの大切さを、こんなにストレートに、しかも説教臭くなく表すお話は初めてだ。少しアンバー調の美しい映像と、アフリカの大地を思わせる力強いリズムの音楽が、希望の物語を盛り上げる。
21世紀はアフリカの時代と言われ、このところアフリカ関連の書籍もたくさん見かけるようになりました。特に2050年以降は世界の中でアフリカ諸国が占める位置は大きく重要になるという。人口の増加、経済成長、国家や社会の発展、民主主義の成熟。それぞれの国や地域で解決しなければならない課題はいっぱいある。でも着実に良い方向へ変わっていくのでしょう。そう望みたい。
この数百年、世界を支配した西洋近代主義や科学技術や進歩の思想。いろいろ弊害もあらわれているけれど、飢餓や疫病から人々を守るためにはアフリカではまだまだ『近代化』が必要なのだ。負の側面を強調せず、プラス思考で未来を見つめるこの映画。アフリカを応援したくなるとともに、私たちまでとても前向きな気持ちにしてくれる。ウイリアム少年に勇気をたっぷりいただきました。
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