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2019年7月

2019年7月29日 (月)

マリメッコ流、日本の美

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 FINLAND MEETS JAPAN「マリメッコ・スピリッツ」という展覧会が東洋陶磁美術館で開催されている。先日ご紹介した「フィンランド陶芸」展と同時開催です。北欧文化と日本文化の親和性、あるいは日本人の北欧デザイン好きにうまくフィットした企画だと思う。よく開催される人気のマリメッコ展のなかでも、今回が視点のユニークさと企画力で群を抜いている。

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 1951年に創業したマリメッコは鮮やかな色彩と思い切ったデザインのテキスタイルで世界を席巻した。創業者のアルミ・ラティアが有能なデザイナーを見つけだす目と、彼女たちの才能をさらに伸ばすプロデュース力を持っていたことで発展する。自然豊かな環境でアーティストが自由に気持ちよく力を発揮できる仕事場は、ライフスタイルを提案する会社にはなくてはならないものだったでしょう。

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 現在マリメッコで活躍中の3人のデザイナーが、この展覧会のためにJAPANをテーマ発表した新作が素晴らしい。そして使用した画材やイメージスケッチなど、アイデアの段階から完成形に至る制作過程がよくわかる資料も併せて展示されていて、とても興味深い。アニメなど日本のポップカルチャーにインスパイアされたもの、自然のなかでワビサビを感じたもの、小紋など伝統的な文様から発想したパターンなど三人三様。

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 そしてマリメッコが茶室をデザイン監修するとこうなるという、ユニークで楽し気な八角形の茶室が会場に設営されている。草庵の様式を踏襲しながら、「ウニッコ」や「湿原」などのファブリックを壁紙に使って北欧デザインが考える茶室建築を目指している。古い文化に新しいさわやかな風を送り込む、面白い試みだと思いました。マリメッコ、やるねぇ!

マリメッコ・スピリッツ
FINLAND MEETS JAPAN
2019年7月13日(土)~10月14日(月・祝)
東洋陶磁美術館

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2019年7月26日 (金)

フィンランドの陶芸って?

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 フィンランド陶芸と聞いても、さっぱりイメージがわかない。それが大多数の人たちの共通認識でしょう。いま中之島の東洋陶磁美術館で開催されている「フィンランド陶芸」展の情報を知ったとき、正直なところ「?」が第一印象。でも観に行ったらクオリティの高さに驚きました。この展覧会は日本とフィンランドの外交関係樹立100周年を記念して企画されたそうです。

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 19世紀末からの英国ウイリアム・モリスが主導したアーツ・アンド・クラフツ運動の影響を受けて、フィンランドで工芸教育の基礎が築かれたという。そして1932年に設立されたアラビア製陶所が、その発展に大きな役割を果たしました。アラビア社では設備の整った環境で作家が自由に創作活動に励むことが認められ、数々の傑作が生まれる土壌となった。いやぁスゴイというか羨ましいというか、日本では考えられないことです。

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 自然の色やカタチにインスピレーションを受けて制作したり、優れたデザインの伝統を持っていたり、アジアの日本人と北欧のフィンランド人は似た文化的素養があるようです。表現にどこか親近感を感じる。陶器で作った彫刻『陶彫』で有名なミハエル・シルキンや、色彩豊かで造形的な作品で人気を博したビルゲル・カイピアイネン、物語性がある陶板で知られるルート・ブリュックなど、才能あふれる多くのアーティストが、芸術作品作りと実用的な商品づくりに活躍した。

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 ここで観られる約130点の作品は、フィンランド陶芸が決してヨーロッパ辺境のローカル美術じゃおさまらない豊かな表現力を持つことを雄弁に示している。森と湖とムーミンの国。だけではない魅力を示してくれた展覧会です。またこの展覧会と並行して同じフィンランドのマリメッコの展覧会も開催されている。そのレポートはまた後日に開示しますので、ヨロシクお願いいたします。

フィンランド陶芸
芸術家たちのユートピア
2019年7月13日(土)~10月14日(月・祝)
大阪市立東洋陶磁美術館

 

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2019年7月21日 (日)

コロンブス交換とグローバリズム

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 トウモロコシってたしか中南米原産だったよねぇ、と先日ブログを書くためにヤングコーンを調べていたとき知った言葉がコロンブス交換(Columbian Exchenge)です。アメリカの歴史学者アルフレッド・クロスビーが1972年に提唱した考え方。1492年にコロンブスがアメリカに到達したことをきっかけに世界は激変したことは、教科書でも習いました。トマトを使わないイタリア料理、ジャガイモがないドイツの食卓が想像できないほど彼らの血肉となっている食材や、ゴムの木やタバコがアメリカ大陸からもたらされたこと。そして馬や牛、羊や豚はそれまでは新大陸にいなかったこと。ヨーロッパ人もアフリカ人も、マラリアや高熱病の病原体までもが海を渡ったことなどをあらわす。

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 そのコロンブス交換をテーマに、サイエンス・ライターのチャールズ・C・マンが膨大な資料と綿密な取材で描き出し、全米でベストセラーになったのが『1493ー世界を変えた大陸間の「交換」』(紀伊國屋書店)。とても興味はあるけど800ページ以上あるし、と思案していた時に見つけたのが、こちら。レベッカ・ステフォフがわかりやすくコンパクトにまとめてくれた『1493ーコロンブスからはじまるグローバル社会』(あすなろ書房)です。銀山の発見、単一作物を作るプランテーション、アフリカからの奴隷売買などが、人類の歴史や地球の生態系に与えた広範な影響が詳細に述べられている。

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 コロンブスの業績については近年特に批判的な見解が目立ちます。たしかに光と影の部分があり、アメリカ大陸側から見れば文化や生活スタイルの破壊など負の側面が強いかもしれません。それでも彼の航海がなければ、現在の世界はありえない。良くも悪くも世界は一つになった。グローバリゼーションの第一歩だったのです。1942年に新世界へ到達し、1493年に旧世界に帰還した地球史的な事件。それ以降の出来事の本質を的確にあらわすコロンブス交換という言葉は、世界の歴史を考える新しい視点を与えてくれました。ただし『交換』と言っても利益と損失が両大陸に公平に分配されたわけではないことを忘れてはならないでしょう。

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2019年7月18日 (木)

これ、なににみえる?

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 いま芦屋市立美術博物館で開催されているコレクション展がおもしろい。ここの美術館は『具体』のメンバーや、その流れをくむ作家の作品が充実しているので有名だ。その豊富なコレクションを、1章 なにで(素材)、2章 どうやって(技法)、3章 どんなふうに(表現)という 3つのくくりで 74点を展示している。これら近現代の作品は、何を伝えようとしているのか理解できないものが多い。いやむしろ作家が観客に伝えることを積極的に放棄して、観客が何を感じ取るかにすべてをゆだねる。そんなアート観や制作哲学をベースにしているから、意味を考えると「現代アートはわからない」、「難しいから苦手だ」となってしまう。

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 今回の展覧会のタイトル『こどもとおとな』は、とてもよくできている。子どもは大人よりはるかに素直だから、理屈抜きで勝手におもしろがる。きれい、すき、きらい、でこぼこ、ぐちゃぐちゃ、おかしい・・・。3つの章の立て方では、意味ではなく素材や技法を説明しているので、かなりアートに親しみやすいと思う。アートに触れるキッカケさえあれば、あとは勝手に楽しめるのだから。子どもたちも興味を持って観て、なにがしか感化されて帰るのではないでしょうか。それがアートを楽しむ醍醐味。

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 いままでになかった表現、誰もやらなかった技法をめざせ。まさに『独創的』に至上の価値を置いたアーティストたちの情熱、時代を超えて輝く作品から受けるエネルギー。これらの作家たちが生みだした芸術は、日本を飛び出ていまや世界中でその評価が高まっています。1950年代から数十年、日本それも関西で、こんな世界的なアートムーブメント『具体』が起こったことを誇りに思います。いまそれを担ったアーティストもどんどん亡くなって、歴史上の出来事になりつつある。これからは、これら先輩たちを超える新たな独創アートが生まれることを期待しましょう。

コレクション展
こどもとおとな
ーこれ、なににみえる?
2019年7月13日(土)~9月23日(月・祝)
芦屋市立美術博物館

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2019年7月15日 (月)

グッバイ、Mr.レッドフォード

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 スポーツ選手は肉体的衰えや精神的疲労から思うようなプレイができなくなったら、現役を引退せざるを得なくなる。でも俳優が引退宣言するって、珍しいのではないでしょうか。病気とかでなければね。ロバート・レッドフォード、82歳。年齢を重ねても、「まだまだ」というか、「ますます」というか、カッコよくて仕事の質も上がっているのに。いい年の取り方のお手本でした。俳優業は引退しても、監督業やプロデューサー業は末永く続けてくれることを期待します。

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 初めてロバート・レッドフォードを観たのはアメリカン・ニューシネマの傑作『明日に向かって撃て!』(1969年)。犯罪者なのに、さわやかでユーモアがあって知的なサンダンス・キッド役が、それまでのハリウッドにはなかった鮮烈な個性を輝かせていた。そして最後になるのが『さらば愛しきアウトロー』のフォレスト・タッカー役。どちらも実在の銀行強盗。本人もアウトローを演じるのが好きだと言っているし、俳優人生を締めくくるにはこれほどふさわしい作品はなかったのかもしれません。

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 時代はちょっとレトロな1980年代。舞台はのどかな中西部の田舎の町々。礼儀正しくジェントルな老人が、誰ひとり傷つけず微笑みながら繰り返す銀行強盗。犯罪者なのに凶悪なイメージとはいっさい無縁で、被害を受けた銀行の担当者たちでさえ夢を見ているよう。そして追っかける刑事まで魅了されていく。ほぼ真実の物語、とクレジットされたこの作品。不思議なキャラクター「黄昏ギャング」を肩の力が抜けた名演技で表現したレッドフォード。これも彼の代表作の一つになるでしょう。



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 この映画は犯罪者を主人公にした作品だけれど、派手なアクションや緊迫した展開で見せるのではない。彼が主演するだけのことはあって、情感に満ちた穏やかな映画に仕上がっている。気のきいたセリフ、美しいトーンの映像、時代の雰囲気を再現したデビッド・ロウリー監督の演出が素晴らしい。そしてケイシー・アフレックやシシー・スペイセクら共演陣も見事な演技で大スターの去り際を支えている。スポーツの名選手の引退を胴上げで送る感じ。それにそれに、劇場のお客さんの入りもよくて、うれしくなりました。

 

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2019年7月12日 (金)

ヤングコーンで知ったこと

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 この時期だけのヤングコーンあるいはベビーコーン。と書きましたが、この時期限定というのはつい先日知ったばかりです。店先でヤングコーンと表示された野菜を初めて見かけたのです。ヤングコーンは小さいながらもコリコリした食感がおいしい。中華料理の野菜炒めや焼きそばにはいつでも入っているから、初夏の一時しかないとは思いもしなかった。あれはどうも缶詰だったらしい。

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 買った店で食べ方を聞くと、「皮付きのままレンチンしても、オーブントースターで焼いてもおいしいですよ」とのこと。両方試してみましたが、どちらもおいしい。甘さはまだ弱いけれど、ちゃんとトウモロコシの味がする。しかも中でびっしりと実を包んでいるヒゲまで食べられる。そのままで、醤油バターで、オリーブオイルと塩コショウで。甘さより、新鮮な初夏の香りが魅力です。

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 よく食べるトウモロコシとは品種が違うのか、と思って調べてみました。そうすると盛夏に出回るいわゆるトウモロコシの未熟果だとわかった。いくつもできる実を摘果して、それぞれの茎で2本だけを大きく育てて出荷するのだそうだ。栄養分をそこに集中させるのか。ではトウモロコシはどんなふうにできるんだろう。そういえば知らない。信州をクルマで走っているとトウモロコシ畑かな?と思うところはあるけれど、実ができているのを見たことがない。あれはきっと家畜に食べさせる飼料用だろうと思い込んでいた。

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 でもススキのようなあれがトウモロコシだったのです。ただし雄花。雌花が実をつけ食用になる部分は、じつは先端ではなく茎の下部にできるというのだ。意外でしょ。米も麦も茎の一番上に実がなるから、トウモロコシもきっと先端に実があるハズ。これが間違いだった。中南米原産、コロンブスがヨーロッパに持ち帰り、世界中に広まった主要穀物。よく食べているのに何も知らなかった。お恥ずかしい限りです。

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2019年7月 9日 (火)

長場 雄の、おもしろ視点

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 すべての線は、名画に通ず。これは POCKET ART SERIES NUMBER ONE 『 YU NAGABA 』(株式会社オークラ出版)のオビに書かれた言葉だ。ベースは「全ての道は、ローマに通ず」。この言葉がすごく輝いているのは、この本がダ・ヴィンチやボッティチェリからキース・へリングやバスキアまで、誰もが知っている古今の名画を味のある線で描いたドローイング集だから。アーティスト長場 雄の自信。

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 ポケットに、手のひらに、いつも持ち歩いて、思いついたら開いて楽しめる。ページをめくりながらユニークな選択にクスッとし、省略のセンスにうなり、線の美しさにうっとりする。極限まで要素をそぎ落としたシンプルな表現なのに、元になった名画の色や深みがしっかり伝わってくる。これは並外れた才能とテクニックのなせる業。

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 いろんな名画が描かれているのに、モネの睡蓮は入っていない。たしかに、あんな絵は線では表現できないですよね。線で表現するのには得手不得手があるようです。でもクリムトやマネはちゃんと出ている。しかも一目でそれとわかる。「あ、なるほど!」、「こんどは、そう来たか」。目の栄養、プラス 頭の体操。ミケランジェロもマチスも、もう楽しくて中毒になりそうです。

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 誰もが知っている、あるいは知らなくても見たことはある、そんな有名なアート作品を独自のスタイルで表現する。これは過去の芸術にもう一度命を吹き込む作業だ。しかも美術の教科書を見るような堅苦しさがなく、すごい芸術作品にお近づきになる入口の役目。アートをもっと身近にしたい、という長場さんの思いで生まれた手のひらサイズの美術書。ぜひ一冊お手元に。

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2019年7月 6日 (土)

日本を継ぐ現代アート

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 『数寄景/NEW VIEW』、サブタイトルに「日本を継ぐ、現代アートのいま」と題された展覧会が、阪急うめだ本店で開催されている。日本文化のキーワードから選んだ「あやし」「見立て」「うつろい」「なぞらえ」「かさね」「ゆらぎ」「今様」「奇想」、これら8つの切り口で17人の現代アーティストとその作品を紹介する企画。日本の伝統を引き継ぐという意味ですが・・・。

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 たしかにこのような切り口で2組のアーティストを対比させて展示するのも、ランダムに並べるより観やすいかもしれない。でもあくまでキュレーターの見方なので、なるほどと思うのもあればウーンとなるのもある。それぞれのアーティストにとっても大きなお世話かもしれない。観る側はその企画に乗るもよし、無視して自分なりの見方で楽しむもよし、ということだと思います。

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 現在もっとも注目を集めるアーティストから新世代のスターまで、今回の17名のアーティストはかなりクオリティが高い。なかでもその創造性と洗練度で日本のアート界をリードしているのが、宮永愛子、池田学、teamLab、淀川テクニック、岩崎貴宏、宮本佳美などなど。それぞれ独自の表現で現代アートの先頭を走る「数寄者」たちの、いまが概観できる。

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 揮発して消えていくナフタリンを素材に使ったり、文明批評的な都市郊外の風景をシンボリックに表したり、ゴミや漂流物でエコロジカルな視点を提示したり・・・。数十色の絵具を混ぜ合わせた黒で描くモノクロームの絵画、最先端のテクノロジーとアートの融合・・・。日本にとどまらず、広く世界へ向けた作品の数々。アートの可能性は無限だと感じさせてくれる展覧会です。

数寄景/NEW VIEW
日本を継ぐ、現代アートのいま
2019年6月26日(水)~7月8日(月)
阪急うめだギャラリー

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2019年7月 3日 (水)

山沢栄子、こんな写真家がいた

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 1899年に大阪で生まれ、アメリカで学び、アメリカと日本で半世紀以上にわたり活躍した写真家・山沢栄子。その生誕120年を記念した展覧会が、西宮の大谷美術館で開催されている。帰国後の1931年に大阪に写真スタジオを開き、1968年には神戸にスタジオを移して、ポートレート写真や広告写真の分野で活躍。1970年代から80年代には『私の現代』と題した個展を多数開催した、と紹介されている。

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 こんな経歴のアーティストだから知っていて当然なはずなのに、まったく知らなかった。自分の不勉強を恥じ入るばかりです。この展覧会では「What I am doing 」と題して発表された、色鮮やかな抽象絵画のようなカラー写真シリーズを中心に、約140点が展示されている。絵筆ではなくカメラを道具に、どうやって新しい表現をするか。撮る対象の質感も生々しいこれらの作品は、もっと評価をされてもいいのではないでしょうか。

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 そもそも写真で抽象とは、自己矛盾があるのではないかと思う。写真というのは、具体的に存在する何かを光で記録したもの。山沢さんは1950年代から写真による写真でしかできない造形の実験を重ね、こういう独自の表現を生み出した。日本で主流の木村伊兵衛や土門拳とはまったく違う写真の道筋。時代を超えた創造性に対する無理解が、『抽象』という言葉でしかあらわすことができなかった一因でしょう。期待以上のおもしろさでした。

山沢栄子|私の現代
WHAT I AM DOING
2019年5月25日(土)~7月28日(日)
西宮市大谷記念美術館


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