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2019年5月13日 (月)

壮大、華麗、ワルキューレ

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 リヒャルト・ワーグナー。その思想と音楽性がヒトラーとナチスドイツに愛されたこともあり、負のイメージが付きまとう19世紀後半のロマン派の巨匠。その音楽はイスラエルでは現在もタブーだという。『ワルキューレ』は4夜にわたって上演される彼の超大作『ニーベルングの指環』の二番目の楽劇です。そのなかの第3幕の序曲「ワルキューレの騎行」は特に有名。フランシス・フォード・コッポラ監督の『地獄の黙示録』で、ヘリコプター部隊が北ベトナム攻撃に出陣するシーンに効果的に使われていました。

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 2018-19 MET ライブビューイング 10作品の中でも、上演時間が5時間におよぶ屈指のスケールです。北欧神話をベースにした神々と人間が繰り広げる愛と欲望のドラマ。ロベール・ルパージュの演出が素晴らしい。舞台美術はスタッフたちが「マシン」と呼ぶ巨大な24枚の厚板。これを自在に動かしカタチを変化させ、表面にプロジェクションマッピングで映像を映し出す。それは嵐の海になり、森になり、館の壁になり、空翔ける馬になり、岩山になり、炎のバリアになる。

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 お話でおもしろいのは、神は全能ではない、というところ。一神教のキリスト教やユダヤ教、イスラム教の神とはそこが違う。北欧神話もギリシャ神話も日本神話も、いろんな神がいてみんなそれぞれ弱みを持っている。神々の長だって妻には頭が上がらないし、深い苦しみと将来の不安におののいている。笑うと失礼だけど、人間的で可笑しい。その辺にいる誰かの悩みと大して変わらないじゃないか。ね、とても親しみが持てるでしょ。

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 音楽の面では金管楽器を充実させた編成で、勇壮な音をより強調している。華やかな音色、高らかな響き。フィリップ・ジョルダンによるスケールの大きい指揮がドラマを劇的に盛り上げる。ちなみに「ワルキューレ」とは、最高神の娘たちで甲冑で身を包み剣や槍を携えて天馬で空を翔ける、美しき女戦士のこと。日本では戦乙女とか戦女神と訳されている。戦う天女たち、英雄、神や女神が、愛し闘い別れを告げる壮大な物語にふさわしい音楽でした。
 
 

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