桜の季節のシネマ歌舞伎
『野田版』の歌舞伎はどれもおもしろい。この「桜の森の満開の下」も期待通りの楽しさ。しかも古代史や民俗学の興味深い視点も散りばめられ、一筋縄ではいかない複雑さでいろいろ考えさせられる作品だ。残酷と陶酔。狂気と秩序。饒舌な言葉遊びと笑いが、壮大でシリアスなストーリーの緊張を和らげる。平成29年8月の歌舞伎座公演を映画化したものです。
坂口安吾の妖しく甘美な世界を野田秀樹が見事に紡ぎあげ、中村勘九郎や市川染五郎(現*松本幸四郎)らが歌舞伎役者ならではの表現力で作品に生命を与える。圧倒的な舞台の魅力。しかもシネマ歌舞伎なら、カメラの切り替えやアップの表情をまじえて、ベストポジションで観ることができる(生の迫力には及ばないでしょうけれど)。
繰り返し流れるプッチーニの名アリア「私のお父さん」が、とても印象深く使われている。また、ひびのこづえさんの衣装と堀尾幸男さんの美術が秀逸でした。歌舞伎というエンターテインメントが、伝統芸となって埋もれることなく、新しい血を得てよみがえるのは素晴らしい。野田版だけでなく、漫画「ONE PIECE」にチャレンジする試みなども期待大です。
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