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2019年4月

2019年4月28日 (日)

台所から見る地理と歴史

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 人間の歴史で住まいとは寝るための場所であり食べるための場所でありました。洞窟で暮らした時代からその基本は変わらない。建築家の宮崎玲子さんは半世紀にわたり、世界の約50ヶ所の伝統的な台所を調査しておもしろい事実を発見したという。その成果が、大阪グランフロント LIXILギャラリーで開催中の「台所見聞録」展のひとつめの見どころ。以下にご紹介するのは、北緯40度を境に北と南では「火」と「水」の使い方に違いがあることを説明するパネル展示です。(スミマセン、下手な写真で見にくいです)

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 北は鍋を吊り、南は鍋を置く文化圏だという。世界地図にプロットした青い丸印は「吊る」文化。オレンジ色の丸印は「置く」文化。なるほど、日本でも東北地方などはオレンジ色で囲炉裏の上に鍋を吊る地域ですね。さらに北では水を使うことが少ないので流しが主役にならず、南では洗う頻度が高いので台所の設えは大量の水を使うことを前提にしている。イヌイット、ドイツ、ロシア、インド、ネパールなどの住まいを1/10スケールで再現した精巧なミニチュアハウスも見ごたえがあります。


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 この展覧会のもうひとつの見どころは、日本の台所の近代化についての展示です。日本では住まいや暮らしは明治から昭和にかけて西洋の影響を受けて大きく変わってきました。なかでも激変したしたのが台所。その当時「立働」「衛生」「利便」という3つの理念が台所改革のテーマだったそうだ。そして1950年代に現れた公団住宅のステンレス流し台が、現在へと続く大きな方向性を決めたという。食べるために必須である台所について、地理的にも歴史的にもとても興味深い展覧会でした。

台所見聞録 ー 人と暮らしの万華鏡 ー
2019年3月8日(金)~5月21日(火)
LIXILギャラリー
大阪グランフロント南館タワーA12F

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2019年4月25日 (木)

アオキの花、ヤツデの実

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 六甲山ではヤマザクラが散りはじめ、ヤブツバキやアセビが終わりを迎えようとしています。美しいピンクのミツバツツジや炎のように赤いヤマツツジも咲き始めている。季節の変化を花で表現すると、そんな感じの春本番。寒くなく、暑くなく、ハイキングにはいちばん気分がいい季節です。ただし小さな虫たちもいっせいに現れて、うっかりしていると目や口に飛び込んでくるからご注意を。今回は普段あまり気にしなかった植物の話をふたつご紹介します。

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 まずはアオキ。ミズキ科の常緑低木で庭木にも使われる。冬枯れの山では緑の葉と赤い実の鮮やかなコントラストでひときわ目立っていました。森の中で大きな木の陰にひっそりと生えている常緑低木なので、ほかの木々が葉を繁らせる夏場は見逃してしまいがち。そんなアオキがこの時期に、赤紫色の小さく地味な花を咲かせている。ヤマザクラの花びらがヒラリヒラリと舞う季節にひっそりと。やはり冬の赤い実が晴れ姿でしょうか。気を付けていないと見過ごしてしまいます。


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 もうひとつはこれも庭木でおなじみのヤツデ。いま実が黒く熟しています。ヤツデはウドやタラノキ、コシアブラなどと同じくウコギ科だそうです。常緑樹でサイズも大きいから印象はまったく違うけれど。でもどれも小さな花が花火のようにはじけたカタチで咲くところが似ています。ウドやタラノキは8月ごろに花が咲いて秋には実が熟す。ヤツデだけは11月ごろ晩秋に花をつけ、春の今ごろ黒く実が熟す。理由はわかりませんが、きっと生存の知恵でしょうね。以上、小ネタでした。

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2019年4月22日 (月)

お台場でチームラボ体験

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 朝から雨が降り続く平日にもかかわらず、長い長い行列。外国人比率が70%ぐらいでしょうか。たぶん30ヵ国以上からお客さんが来ていると思う。その面白さ、その美しさ、その楽しさは、世界にとどろいているのでしょう。映像アートのテーマパーク。チームラボ。Wander, Explore and Discover さまよい 探索し 発見する これが入口にも大きく書かれている、この施設の標語。

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 いちばんの魅力は観客一人一人が作品に参加できること。作品の内部に入って行ける。自分の行為で作品に影響を与えることができる。まぁそんな冷静な分析をするよりも前に、幻想的な美しさと圧倒的な迫力に我を忘れる。壁、天井、床・・・空間のすべてを使って繰り広げられる映像によるパフォーマンスに、大人も子どもも夢中です。

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 光の中のボルダリングに似た体験や光の渦の滑り台。ただ鑑賞するだけではなく、身体を駆使して遊べるのも楽しい。美意識や空想力を鍛え、五感をトレーニングできる。観客は受け身で静かに観るだけ、という堅苦しい美術館とはまったく違う、21世紀のミュージアムの姿の一つを指し示していると思います。

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 チームラボは大人気なので、日本はもちろん世界各地でさまざまな展覧会を開催している。だから観たことのある作品も少数ありました。でもチームラボのための特設ミュージアムのここは、体験できるレベルが違う。そして一度にこれだけの作品に出会えるのはお値打ちだ。デジタルアート。ヴァーチャルリアリティ。これからもさらに進化のスピードを上げる事でしょう。

デジタル アート ミュージアム
teamlabBorderless
東京 お台場

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2019年4月19日 (金)

六本木で現代アート展

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 テクノロジーをつかってみる、社会を観察してみる、ふたつをつないでみる! 日本の現代アートの今を見せたい!とうたった「六本木クロッシング2019展:つないでみる」が森美術館で開催中だ。「おもしろい」と同時に「むずかしい」が混ざった、まさに現代アートらしい展覧会だ。すごく興味を惹かれるものもあり、サッと通り過ぎるものもある。

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 飯川雄大の「ピンクの猫の小林さん」、青野文昭の「ベンツの復元から―東京/宮城」、ヒスロムの「いってかえってー浮力4」、目の「景体」、竹川宣彰の「猫オリンピック:開会式」など、印象に残る作品がたくさんありました。難しく考えることなく、それぞれの作品世界に浸る。単純におもしろがるのもいいし、作家はこんなことを考えたのだろうかと推理しながら観るのも楽しい。

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 キュレーターの説明によると現代美術からファッション、AI、人工生命まで、今日の表現を通して見える「つながり」に注目した展覧会だそうだ。対極のものを接続する。異質なものを融合する。本来備わっている繋がりを可視化する。25組のアーティストが表現するさまざまな「つながり」が、現代の「分断」に向き合うためのヒントになるかも、とも書かれている。

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 企画する側からは展覧会として何らかのまとまりのあるメッセージを伝えたいから、このような難解な説明になるのでしょう。でもアートは観る人が自由に感じればいいもの。なぜなら、作品は展示した瞬間から作家や美術館のものではなくなり、観客一人一人のものになると思うからです。アーティストの意図は尊重するけれど、縛られる必要はない。作家も観客もとことん自由になれる。それが現代アートだと思います。いちファンより。
 
六本木クロッシング2019展
つないでみる
2019年2月9日(土)~5月26日(日)
森美術館

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2019年4月16日 (火)

「切り絵」博覧会が今里で


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 50人以上の切り絵作家たちが、大阪・今里に大集結して開催されている『切り博』。切り絵と聞くと成田一徹さんや滝平次郎さんの額に入った作品を思い浮かべるが、この展覧会でガラッとイメージが変わりました。もはや「切り絵」という言葉でひとくくりにできないほど、急速に「切り絵」は進化し、多様化している。

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 紙をカットする工程は以前と同じでも、それを素材としてどう生かすかが表現の核に変わってきたようだ。多彩な色をまとったり、立体のオブジェになったり、動く彫刻になったり。さまざまな技法を組み合わせて見たこともない作品を創造している。LED電球やモーターなど最新のテクノロジーや素材を駆使してイメージを表現する自由な発想が素晴らしい。

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 カットした紙で空間を埋めるインスタレーション。ウイスキーのボトルの中にケンタッキーやテネシーやスコットランドなどの風物の切り絵が入った作品。カットした紙を型にしてにアクリル板にスプレーで彩色、などなど。切り絵の未来は大きく広がっていると感じられる意欲的な作品群に、大きな刺激を受けました。

第1回 切り絵 博覧会
『切り博 Discovery』
2019年4月1日(月)~4月21日(日)
SAMURAI Gallery Regalia レガリア

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2019年4月13日 (土)

アルヴァ・アアルト、静かな主張

 フィンランドを代表する20世紀の建築家、アルヴァ・アアルト(1898~1976)の展覧会が東京ステーションギャラリーで開催されている。図書館やコンサートホール、教会や市役所、新聞社やサナトリウムなどたくさんの公共建築を設計したアアルト。森と湖に囲まれたフィンランドらしい涼しげな空気感と、木を効果的に使った優しさが特徴です。

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 展覧会のサブタイトルに「もうひとつの自然」とあるように、外観もインテリアもフィンランドの透明な風土と一体になった美しさ。まさに北欧モダンデザインの精華です。個人住宅にはより一層その美学が徹底されている。建築に合わせて家具、壁面タイル、ドアノブなどの細部までデザイン。強く主張はしないけれど、温かく包み込んでくれるように思います。

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 またアームチェアやスツール、照明器具、流線型のガラス器など、彼が手掛けた多くのプロダクトデザインは、いまも世界中で親しまれている。なかでも集成材を使った曲げ木の椅子は、知らない人がいないほど有名だ。デザインだけにとどまらず曲げきの製造方法を研究したスタディも残されていて、これ自体がアートになっています。

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 この展覧会で約300点の展示品を一覧すると、彼がデザインした建築や家具はまわりの環境との親和性が極めて高いことがよくわかる。会場の東京ステーションギャラリーは、空襲で焼け焦げたレンガ壁やアールデコ調の照明器具が残されている。この空間にもアアルトはとてもよくマッチしている。まもなく終了しますが、観ておいてよかった。

アルヴァ・アアルト
もう一つの自然
2019年2月16日(土)~4月14日(日)
東京ステーションギャラリー


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2019年4月10日 (水)

さくら満開、春うらら

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 ちょうど今、神戸ではソメイヨシノが満開です。摩耶山のふもとの桜のトンネルや生田川沿い、王子動物園や須磨浦公園など桜の名所はたくさんありますが、この前の土日はどこも花見客で盛況だったようです。この時期は季節の変わり目でお天気が不順なことが多いのですが、今年はうまくもって業者さんも喜んでいることでしょう。うちの近所にもなかなか立派な桜並木があります。まったく有名じゃないけれど、樹齢40年以上のソメイヨシノが咲き誇っている様は壮観だ。(ちょっと身びいき)

Up

 さてこのソメイヨシノ、すべて一本の原木から接ぎ木などで増やしたクローンだ、というのは有名な話。各地の開花宣言を出す標準木にソメイヨシノが選ばれるのも、同じ遺伝子だから科学的に意味がある。オオシマザクラを片親に、もう片親はエドヒガン系。「系」というのも、エドヒガンの仲間のどの種かはまだ不明だから。大きく整った花形をもつオオシマザクラと、葉が出る前に花が密生して咲くエドヒガンの性質を併せ持つソメイヨシノ。1900年に命名され、いまや日本の桜の8割を占めるそうだが、第二次世界大戦のあと爆発的に普及したという。意外に新しいのですね。

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 ソメイヨシノの本場というか生まれ故郷というか、お江戸は神戸より1週間ほど桜の時期が早い。だから目黒川も満開を過ぎて桜吹雪。緑の葉も出始めています。散った花弁が流れる川面もまた風流なものです。こんな状況ですが夜桜はまだまだスゴイ人出。明かりのついたぼんぼりが並らび、川沿いの店も屋台や露店を連ねてお客さんにサービス。ライトアップは10日までという情報もありましたが、昼間よりずっとにぎわっている。ただ今日10日は寒波の襲来で寒さに注意が必要です。

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 目黒川沿いで花びらのじゅうたんに桜の木の影が映っていました。昼間に撮影したのですが、まだ人に踏まれずキレイなままの花びら。桜にはこんな美しさもあるんだ、とうれしくなった新発見です。でもこれはギャラリーPAXREXで開催した森雅美さんの『翳』という展覧会のイメージが残っていてはじめて気づくことができたシーン。感謝です。

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 桜の開花と時期を同じくしてケヤキの赤茶色い新芽が出て、日増しにグリーンに変わっていく。この涼しげな黄緑も美しい。小さな葉がだんだん大きくなりグリーンも濃くなって初夏を迎える。ソメイヨシノの歴史と同様、植栽の樹種もその時代ごとに流行があり、関西でケヤキが増えだしたのは40年ぐらい前から。それ以前は街路樹では外来種のプラタナスやトウカエデが、公園や学校にはヒマラヤスギが多かったように思う。ケヤキが増えたのは日本の自然の美しさを大事にする傾向が強くなったことから。いいことだと思います。

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2019年4月 7日 (日)

桜の季節のシネマ歌舞伎

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 『野田版』の歌舞伎はどれもおもしろい。この「桜の森の満開の下」も期待通りの楽しさ。しかも古代史や民俗学の興味深い視点も散りばめられ、一筋縄ではいかない複雑さでいろいろ考えさせられる作品だ。残酷と陶酔。狂気と秩序。饒舌な言葉遊びと笑いが、壮大でシリアスなストーリーの緊張を和らげる。平成29年8月の歌舞伎座公演を映画化したものです。

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 坂口安吾の妖しく甘美な世界を野田秀樹が見事に紡ぎあげ、中村勘九郎や市川染五郎(現*松本幸四郎)らが歌舞伎役者ならではの表現力で作品に生命を与える。圧倒的な舞台の魅力。しかもシネマ歌舞伎なら、カメラの切り替えやアップの表情をまじえて、ベストポジションで観ることができる(生の迫力には及ばないでしょうけれど)。

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 繰り返し流れるプッチーニの名アリア「私のお父さん」が、とても印象深く使われている。また、ひびのこづえさんの衣装と堀尾幸男さんの美術が秀逸でした。歌舞伎というエンターテインメントが、伝統芸となって埋もれることなく、新しい血を得てよみがえるのは素晴らしい。野田版だけでなく、漫画「ONE PIECE」にチャレンジする試みなども期待大です。

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2019年4月 4日 (木)

春の妖精に会いに行く



 雪解けの直後、地上に姿を見せ花を咲かせる小さな草花を総称して「春の妖精」と呼ぶそうだ。英語で Spring ephemerai(スプリング・エフェメラル)。直訳すると「春のはかないもの」「春の短い命」という意味だそうだ。ブナ林など温帯の落葉広葉樹林に適応した植物。カタクリ(ユリ科)がその代表選手で、まだ木々が葉をつける前の明るい林床に可憐なピンクの花を咲かせる。

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 キンポウゲ科のキクザキイチゲ(菊咲一華)も春の妖精だ。春先に葉をつけ花を咲かせ、林内の葉が茂って日当たりが悪くなる夏までに光合成で栄養を蓄える。地上に姿を見せるのは、1~2ヵ月ほど。あとは地下茎や球根のカタチで次の春に備えてじっと身を潜めている。そんなことを考えながら観察していると雪が降りだした。暖かくなったり寒さが戻ったり、春の妖精もタイヘンだ。身をすくめています。

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 中国の伝説の生き物「猩々」にに見立てたショウジョウバカマはスプリング・エフェメラルのなかでは例外的に常緑性で、「袴」に見立てたロゼット状の葉を年中つけている。ほかにもイチリンソウやニリンソウ、フクジュソウやエンゴサクなどが妖精の仲間。六甲高山植物園ではこのあとミズバショウが咲き誇る春本番を迎えます。

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2019年4月 1日 (月)

世界へ輸出された超絶技巧

 19世紀後半、幕末から明治時代に欧米で開かれた数々の万国博覧会で大きな注目を集めた日本の工芸品。【木彫】【金工】【七宝】【陶磁】【漆工】【牙彫】【自在】【石彫】 さまざまな分野で人間業とは思えない超絶技巧の作品が大量に作られ、輸出されて貴重な外貨を稼いだという。自然に対する繊細な感受性と洗練された造形センス、それらを作品化する超絶的な技巧で世界を驚かせた明治工芸。いまあらためて注目されているようです。



 畑で採れたばかりに見えるみずみずしいキュウリや、ウロコの一枚一枚までリアルに再現されたヘビ、タカに襲い掛かるカラスを表現した刺繍画。ここまでの完成度になれば、感動を覚えざるを得ない。アーティストというより職人の手わざ、芸術品というよりは工芸品だけれど、そんなジャンル分けはまったく意味がない。イイものはイイのだから。スゴイものはスゴイのだから。素直な気持ちで観ないとソンをする。



 この展覧会のもうひとつの見どころは、現代作家の作品。明治の超絶技巧を引き継ぐような現代のアーティストが何人もあらわれてきて、日本のアートシーンを豊かにしている。高橋賢悟さん、前原冬樹さん、稲崎栄利子さんの作品には特に驚かされました。明治時代の欧米人がびっくりしたように、神が作ったとしか思えない緻密さに私たちが息を呑む。その根気、その執念、鬼気迫る創作欲の一端にに触れることができました。

驚異の超絶技巧!
明治工芸から現代アートへ
2019年1月26日(土)~4月14日(日)
あべのハルカス美術館

 

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