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2019年3月

2019年3月29日 (金)

不思議の国のアリスたち

 ルイス・キャロルの名作「不思議の国のアリス」にまつわる展覧会が、兵庫県立美術館で開催されている。誕生から約150年。すでに170の言語に翻訳され、毎年途切れることなく世界で出版され続けています。でも英語特有の韻や言葉遊びがいっぱいの物語なので、ほかの言語には翻訳できないだろうと初版当初は言われたそうです。その困難を作品の魅力が大きく上回った、ということ。キャロルの妄想力の勝利です。

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 そして何人もの画家が挿絵を描き、その美術のクオリティでも人気を呼んでいる。ストーリーの面白さ+アートの美しさ。いろんな解釈ができるところがアーティストの想像力を刺激し創作意欲をかきたてるのでしょう。なかでもチャールズ・サントーレが水彩で描いたシリーズがとても気に入りました。それにサルヴァドール・ダリやマリー・ローランサンまでが描いているのは初めて知った。驚きました。

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 やはり作品化する素材として、料理し甲斐があるということ。現代の美術家がアリスをよくテーマに取り上げるのも、同じ理由なのでしょう。草間彌生のシルクスクリーンや清川あさみの立体作品、エリック・カールのアクリル、山本容子のエッチング、ウラジミール・クラヴィヨ=テレプネフの写真etc。多種多様な表現手法で今も生み出し続けられる不思議の国のアリスたち。ほこりをかぶった古典ではないのです。

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2019年3月26日 (火)

アーモンドのお花見

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 桜より10日ほど早いでしょうか、神戸でアーモンドの花が満開です。東灘区深江浜の東洋ナッツ食品。敷地内の庭園に植えられた約60本のアーモンドの木が、サクラによく似た白やピンクの花を咲かせている。1977年にアメリカの農場から贈られた木をスタートに、試行錯誤しながら育ててきたものだ。そして先日アーモンド・フェスティバルが開かれたので、お花見に行ったという次第。

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 アーモンドはバラ科サクラ属。中央アジアから南西アジア一帯を原産地とし、紀元前にはヨーロッパでも栽培されていたという。いまの主な産地はアメリカ、カリフォルニア州だけで100種以上が知られているそうだ。一般に食べられている品種はノンパレル種で、早咲きで白っぽい花を咲かせる。ちなみに今年は3月4日に開花宣言をしたそうだ。もう少し大振りでピンクの色が濃いのは、「品種:不明(交雑)」と表示されている。こちらのほうが遅咲きだ。

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 知らなかったけれど、このフェスティバルは春を告げるイベントとして毎年すごい人気だそうだ。お楽しみはアーモンドをふんだんに使った食べ物の販売。どのブースも長い行列です。なかには40分待ちというものも。揚げたてアーモンドやアーモンドコロッケやアーモンドおにぎりなど、アツアツをほおばりながら会場を巡る。そして「野菜につけるピスタチオ」や「アーモンド オーレ」、「ヘーゼルナッツ ペースト」などユニークな商品をゲット。

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 「みんなで咲かそうアーモンド」と書かれた袋入りの殻付き種を来場者に配っている。発芽させて育ててみるか、でも難しいかも、と思案しつつ帰路に就く。説明を読めば5年ぐらいで花が咲くという。そんなにうまくいくかしらと疑いつつも、文末のひと言「たくさん花を咲かせて ひと足早い春を楽しみましょう!」に勇気づけられて、チャレンジすることにしました。

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2019年3月23日 (土)

フェルメール6作品が大阪へ

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 フェルメールの作品が日本初公開も含めて6点、大阪市立美術館へやって来ました。雨の平日にもかかわらず、かなりの人出です。それでも7年前に「真珠の耳飾りの少女」が神戸に来た時に比べると、だいぶんましです。フェルメールというだけでお客さんが押し寄せる17世紀オランダの画家。現存するのはわずか35点という希少性も人気の秘密なのでしょう。

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 へえ、こんな絵も描いていたのか、という初期の作品も来ている。人々の日常を題材とする静謐な風俗画で高い評価を受ける彼が、独自の世界を確立するちょっと前、24歳ごろのもの。上品な風俗画というよりは賑やかなフーゾク画と呼びたいような.。しかしこのころから腕は確かですよね。

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 吟味された構図と厳格な遠近法。緻密な筆づかいと優しい光の表現。美しく洗練された画風は他の追随を許さない。いち早く市民階級が誕生したオランダでは、貴族や教会など古い権威から解放されて自由になった商人や工場主が、芸術でも新しい表現を求めていた。それにうまくフィットした画家の代表がフェルメールです。

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 スタイルが確立して以来、手紙を書く婦人も牛乳を注ぐ女性も彼の代表作はすべて彼のアトリエで描かれている。向かって左に窓があり、その窓から入る穏やかな光による微妙な陰影は、カメラの原型であるカメラオブスキュラを覗いて描いていたというからとても正確だ。床は白黒の市松模様。これも遠近法による奥行き表現に役立っている。

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 部屋の様子以外にもおもしろい発見があります。彼の絵には同じコスチュームが登場すること。二つ上の手紙を書いている人と同じ黄色の服でしょ。この服は43歳で亡くなった彼の財産目録にも載っているそうです。場所も服も使いまわしてる。奥さんや同居していた姑さんがキツイ人だったと伝わっています。才能ある芸術家も苦労してたんだ。親しみを覚えませんか。

フェルメール展
2019年2月16日(土)~5月12日(日)
大阪市立美術館

 

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2019年3月20日 (水)

ピンク・フロイドの夜

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 時空を超える音芸術と光のスペクタクル TIME TRIP COSMOS with PINK FLOYD が3月16日(土)に神戸税関の中庭で開催された。立川直樹さんの総合プロデュース・構成による2時間あまりの濃い時間。まだ明るい日没前から夜8時過ぎまでたっぷり楽しめました。


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 プログレッシブ・ロックと呼ばれるピンク・フロイドの前衛的な音楽を、究極の音響システムで聴く。宇宙の静寂のようなかすかな音から、爆発的な大音量まで、コンサート会場で生で聴いているような臨場感。

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 レトロな建築様式の回廊で囲まれた中庭は、彼らの音楽にぴったり!(身びいきですかね) 奈良や京都の社寺を使った音楽イベントに負けていません。こんなステキなスペースの使用を許可してくれた税関に感謝です。

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 1967年の「Astronomy Domine 」から2014年の「Louder Than Words 」まで19曲が、イメージに合わせたさまざまな色のライトアップやプロジェクションマッピングで展開される。もちろん歴史的な名アルバム『狂気』や『アニマルズ』からも選曲。音と光が生み出す空間アート。

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 新聞報道によれば観客は約1,400人。みなさん自分の世界に浸っていました。荘厳で哲学的、これぞピンク・フロイドの楽しみ方。素晴らしい企画を実現した実行委員会や関係者の皆さまにお礼を申し上げます。ありがとうございました。
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 なお4月27日(土)~29日(月)に未来を体感する『078 』というイベントも開催されるそうです。これも同じ人たちがかかわるプロジェクトの一環。IT、音楽、映画、ファッションなど、さまざまな実験的なプログラムが神戸の数カ所で繰り広げられる。市外局番「078 」を冠したこのイベントも楽しみです。

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2019年3月17日 (日)

魔性の女か、自由な女か。

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 世界有数の人気オペラ『カルメン』。2月2日に上演された舞台を、METライブビューイング版で観ました。1845年に発表されたメリメの小説を原作に、ジョルジュ・ビゼーが作曲し、1875年に初演された全4幕のフランス語オペラ。クレモンティーヌ・マルゲーヌ(メゾソプラノ)とロベルト・アラーニャ(テノール)が素晴らしい。

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 序曲が始まってたちまちカルメンの世界に引き込まれる。19世紀スペインのセヴィリヤを舞台にした物語です。自由奔放に生きる女と、運命を狂わせる勤勉な兵士。音楽もフルートやピッコロ、オーボエなどをうまく使い、ジプシーの音楽やスペインの舞曲でエキゾチシズム満載です。ルイ・ラングレの指揮もいい。

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 第一幕と第三幕の冒頭に躍られるバレエの使い方に感心しました。赤を背景にした運命の出会い。

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 青を背景にした避けられない死。それぞれのバレエは、これから始まる物語を暗示するイメージを提示している。

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 リチャード・エアは群衆シーンでも見事な演出を見せる。三重のターンテーブルを駆使したダイナミックなシーンは圧巻だ。伝統や社会常識に縛られない自由に生きる強い女、カルメンの強烈な個性を際立たせる。魔性の女か?自由な女か? ご覧になって判断をしてください。

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2019年3月14日 (木)

田舎の道が現代アート?

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 野麦峠スキー場のゲレンデに向かって散歩をしていたら、美しいアートを見つけました。何だろう?と思って立ち止まると、じつはこれ、融雪剤。凍結防止剤とも言われる寒冷地の必需品です。塩化カルシウム、雪道で撒くみんなが塩カルと呼んでいる白い粒々のこと。
 
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 これが水分を含むので、路面が乾いた後も塩カルのまわりは濡れて黒くなっている。白い粒が道路にいっぱい落ちているのはよく見かけるが、グレーの路面に黒と白が散りばめられているのは初めて気づきました。舗装のごつごつした質感もおもしろい。

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 この時期の雪は20センチぐらい積もっても、除雪車が出て1日晴れると雪は消える。そしてこんな見事なアートを創造するのだ。池の氷の上にも雪が積もり、こちらは平らな部分に立体の桟橋が浮き上がり、風景全体が巨大な白いオブジェのよう。

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 そして早朝の風景もアートです。夜明けまえ、落葉した林越しに見える雪山が上から赤く染まります。涸沢カールほどではないけれど、控えめにうっすらピンクに染まるのが奈川らしくていい。冷たく凛とした空気のなかで見るモルゲンロート。ドイツ語で「モルゲン」は「朝」、「ロート」は「赤」だそうです。

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2019年3月11日 (月)

春の雪、なごり雪

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 「記憶にないほど雪の少ない年だった」と、奈川の人たちも言うぐらい今年は記録的暖冬だったのかもしれません。スキー場関係者はあきらめ顔、関係ない村の人たちは雪かきが少なくて良かった、良かった。ま、あらゆることが立ち位置を変えれば見方が変わるという例証でしょうね。

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 スキーシーズンは早々と終わりを迎えそう、と思っていたら・・・なんと私たちが奈川についた夜から雪が降り始めました。しかしその雪も翌日昼ごろに止み、根雪になることはありません。もう春なんだ。『春の雪』。三島由紀夫の耽美的な世界ではありませんが、いつもの奈川のサラサラ雪とは違って水分を含んだしっとり重みのある雪。

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 樹の枝に降り積もっても風でサッと飛んでいくパウダースノーではなく、「どうぞ写真を撮ってください」と言わんばかりの雪の様子。枝も重く垂れている。冬の初めと冬の終わりにしか見られない風景。こんな湿った雪は積もるのが早い。見る見るうちに白い世界に変わる。残念ながら結晶は本でよく見るシンプルな美しさではないと思う。

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 もう一つ思い出すこの時期の雪。イルカの『なごり雪』では、「東京で見る雪はこれが最後ね」とさみしそうに君がつぶやいたけれど、信州の雪はまだまだ最後ではないハズだ。なごり雪は降る時も降る場所も知っているのだ。そうだ!君が去年よりずっときれいになるのを,春は待っているのだ。

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2019年3月 8日 (金)

生と死と、記憶と祈り

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 クリスチャン・ボルタンスキーの[ Lifetime ]と題された大規模な展覧会が国立国際美術館で開催されている。美術館では彼の意図が伝わらないんじゃないか?と危惧していたけれど、さすがボルタンスキー。狭い閉鎖空間ながら、ちゃんと彼独自のアートな世界が展開されている。彼の複雑な頭の中を巡る迷路なのか、と思わせる会場構成。

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 ボルタンスキーは越後妻有アートトリエンナーレや瀬戸内国際芸術祭で、いくつも作品を観てきた大好きなアーティスト。2012年にキナーレで観た古着を使った巨大なインスタレーションや2013年に豊島で体験した心臓音のアーカイブ、2018年の廃校になった小学校の最後の教室など、いまでも深く印象に残っている。それらの作品に関連付けられるものも多数ありました。

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 今回の展示は80年代、90年代からの作品も集められている。ナチスのホロコーストを想起させる肖像写真の羅列。古い記憶を祀った教会の祭壇のような立体作品。パタゴニアやカナダの雪原に無数の風鈴を立てて撮影した映像作品。ほんとに手法を選ばず、おもしろいと思ったら何でもやってしまう。そしてそれがまったく新しい美を生む。現代アートの巨匠たるゆえんだ。

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 この展覧会ために製作されたという、「黒いモニュメント、来世」もおもしろい。真っ黒な四角い柱がいっぱい建てられたスペースに、来世の電飾。電線はその前に垂れている。黒い墓標あるいは廃墟になったビル群といっしょに、世界の終末を考えさせる。会場を出るとき、大阪のオバちゃんらしき二人連れがしゃべっていた。「ようわからんかったね。あっ、これアートちゃう?」 なんだと思って来たのでしょうね。

クリスチャン・ボルタンスキー
Lifetime

2019年2月9日(土)~5月6日(月)
国立国際美術館

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2019年3月 5日 (火)

グリーンブックって何だ?

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 アカデミーの作品賞、脚本賞、助演男優賞を受賞したピーター・ファレリー監督の『グリーンブック』。グリーンブックとは、人種差別の激しい南部を旅する黒人のための施設利用ガイドだそうだ。1936年から1966年まで毎年出版されていたという。この映画はグリーンブックを頼りにディープサウスへのコンサートツアーをする黒人天才ピアニストと、彼に雇われた運転手兼ボディガードの物語です。

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 時は1962年、ケネディ大統領の時代ですね。超インテリで繊細な芸術家、カーネギーホールに住むドクター・シャーリーと、無学でガサツだけれど家族や友に愛されている腕っぷし自慢のトニー・バレロンガ。ニューヨークから差別のきついテネシーやアラバマへ。さまざまなトラブルに巻き込まれながらの珍道中。ハラハラドキドキ、ときどき笑い。

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 生い立ちも性格も正反対。水と油のような二人が次第にお互いへの理解を深め、認め合うようになる。そして固い友情と尊敬で結ばれる。まぁいかにもアカデミー賞というストーリーですが、実在の二人の話だそうです。プロデュース・脚本のニック・バレロンガが「父から聞かされたいい話」を映画化したもの、と言っている。多くの人は観たあとスカッと気分が爽やかになるのではないでしょうか。

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 アカデミー賞受賞については異論や批判も出ているようですが、私は受賞が妥当だと思います。たしかに甘っちょろいかもしれない。白人視点のご都合主義かもしれない。でも、差別意識は一気にはなくならないから、少しずつでも時間をかけて取り組み続けることが大切だ。この愛すべき二人のおじさんの映画も、そんな一歩に位置づけられればいいと思います。

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2019年3月 2日 (土)

日本のバウムクーヘン100周年

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 今年の3月4日は、日本で初めてバウムクーヘンが焼かれてから100年。第一次世界大戦の捕虜として日本に連行されていたカール・ヨーゼフ・ヴィルヘルム・ユーハイム(1886~1945)が、1919年3月4日に広島物産陳列館(のちの原爆ドーム)で開催されたドイツ作品展示会で焼いて販売したのが最初だそうだ。

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 樹木の年輪のような模様がめでたい贈答品として人気を博し、今では「ドイツ菓子といえばバウムクーヘン」と言われるほどポピュラーな存在になっている。でもドイツではあまり一般的なお菓子じゃないらしい(意外です)。各地の名産品をプラスしたり、焼き方にこだわったり・・・。ドイツ本国以上に愛され独自の進化を遂げたご当地バウムが楽しめる日本は、世界一のバウムクーヘン大国でしょう。

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 毎年そごう神戸店で開催されている『バウムクーヘン博覧会』も、100周年記念で例年以上に盛り上がっている。全国47都道府県から120種類以上の味が集結。それぞれのブースを巡って試食したり買ったりできるのはもちろんのこと、自分だけのバウムクーヘン作りにトライする、回転寿司のようにいろんなバウムクーヘンスイーツがレーンを流れてくるのをいただく、などの楽しいイベントも充実。

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 気に入ったのは『バウムクーヘンBAR47』というスタンディングコーナー。47都道府県の自慢のバウムクーヘンから好きな5種類を選んで、一口サイズで食べ比べができます。栃木の「はちやバウムいちご」や宮崎の「マンゴーバウムクーヘン」、濃厚な発酵バターの風味がクセになりそうな福井の「バウムッシュ」などなど。すべての味を制覇したい!と思えるような楽しさです。

Baumcuchen
バウムクーヘン博覧会
2019年2月28日(木)~3月6日(水)
そごう神戸店 本館9階

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