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2019年2月

2019年2月15日 (金)

日本の森と素木の家具

Soma
 このステキなポスター、北欧家具のブランドを北欧デザインで作成したようでしょ。「SOMA」は岐阜県美濃加茂市にアトリエを構える木工作家・川合優さんが率いるライフスタイルブランドの名称だ。山で働き山に生きる杣人の『杣(そま)』からとったという。いま竹中大工道具館で「SOMA 日本の森と素木の家具」展が開催されている。

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 ふんだんに木が生かされた美しい会場に、シンプルで美しい家具や小物作品が並ぶ。木の美しさや温かさを伝えるために、装飾を廃しデザインは極力シンプルに作り上げる作品は、北欧の名品に通じる。北欧のオークやバーチに対して、日本のヒノキやスギ、ミズナラなどの木目の美しさを強調している。

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 日本では戦後間もないころに植林された木々が有効に使われず、山林の荒廃や生態系の崩壊を招いている。一方安価な木材を大量に輸入し、それは熱帯雨林をはじめ海外の環境破壊にも手を貸している。こんな日本の森の危機、地球規模の環境の危機に対して、木工作家ができることは?と考えた川合。

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 そんな状況を解消する一助としてSOMAを起ち上げ、木や森に寄り添って暮らす日本古来の生活を現代に取り入れる方法を展開している。それは家具の製造販売にとどまらず、森を生かすための活動、ワークショップやフィールドワークなどさまざまなコラボレーションに発展しているそうだ。もっともっと共感する人が増えて、豊かな森が後世に引き継がれることを祈っています。

SOMA 日本の森と素木の家具
2019年2月9日(土)~3月17日(日)
竹中大工道具館

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2019年2月12日 (火)

METの椿姫、新演出です

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 いまや知らない人のほうが多いレーザー・ディスクLD !?で何度も観た「椿姫」。パリ社交界の花と田舎出身のブルジョワ青年の悲恋。「椿姫」の決定版といえば、そのLDだった。1985年、フランコ・ゼフィレッリ監督の作品です。ヴィオレッタをテレサ・ストーラス、アルフレードをプラシド・ドミンゴ、指揮ジェームズ・レヴァイン。その後、いろんな歌手、いろんな指揮者のものを観てきましたが・・・。

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 そのジョゼッペ・ヴェルディ不朽の名作「ラ・トラヴィアータ」が、今回METライブビューイングにマイケル・メイヤーの新演出で登場しました。指揮は新音楽監督に就任したヤニック・ネゼ=セガン。ヴィオレッタがディアナ・ダムラウ、アルフレードがファン・ディエゴ・フローレ、ジェルモンをクイン・ケルシーです。2018年12月15日に上演されたこの舞台が、これから椿姫のスタンダード。と、思わせるほど素晴らしい出来でした。

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 舞台を19世紀から18世紀に移したという。でもフランス近代史に疎いので、違いはよくわかりません。きっと社会通念や個人の権利など、18世紀はより保守的だったのでしょう。ただ社交界の爛熟した人間関係や衣装の豪華さで、ヒロインの悲劇性を際立たせた演出は見事です。METならではの名優、音楽、大がかりなセット。お金がかかった総合芸術の頂点を見た思いです。

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 ライブビューイングならではのオマケが幕間のインタビュー。制作の意図、音楽の狙い、役作りの思いなどを直接聞けるから、物語をより深く理解できる。特に今回よかったのはネゼ=セガンとダムラウが共同作業で役を作り上げるドキュメンタリー。一音もおろそかにせず向き合っていく過程は感動的です。こんな取り組みがあってこそ名作は生まれるのですね。La Traviata(道を踏み外した女)。必見です。

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2019年2月 9日 (土)

石川直樹の THE HIMALAYAS

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 写真家・石川直樹さんがこれまで撮影してきたヒマラヤをテーマにした写真展が神戸元町で開かれている。越後妻有や瀬戸内国際アートトリエンナーレで彼のヒマラヤ作品群を観てきました。素晴らしかったけれど確かにそれらはまだ途中経過だったのかもしれない。さあ、神々が住む高みへ至った人だけが観ることを許された景色へ。

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 地球の偉大さを求めて、石川さんはエベレストをはじめいくつもの8,000m峰を登っている。そしてただ美しい山岳写真を撮るだけではなく、ヒマラヤの過密問題や環境問題にも目を配る。チベットやネパールの人々の村や暮らしを民俗学的な視点でも記録する。自然と人間との関係。人間がいてこその自然。厳しく、美しく、気高い。

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 この展覧会のタイトルになり、ヒマラヤ遠征の総集編となる『THE HIMALAYAS』(TOO MUCH MAGAZINE)、そして連続刊行中のヒマラヤシリーズ最新作『Ama Dablam』(SLANT)と、『この星の光の地図を写す』(リトルモア)の三冊の新刊が発売された。それらを記念した展覧会は、小規模だけど見る価値は高いと思います。

THE HIMALAYAS
Naoki Ishikawa
2019年2月2日(土)~2月14日(火)
strage books
神戸市中央区三宮町3-1-16 三星ビル3F

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2019年2月 6日 (水)

横尾忠則の公開制作とは

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 いま横尾忠則現代美術館で開催中の展覧会。タイトルは『横尾忠則 大公開制作劇場』です。「本日、美術館で事件を起こす」というサブタイトルがついている。長年にわたりさまざまな場所で行ってきた公開制作。この『公開制作』という言葉は横尾さんの表現方法にとって、とても大きな意味を持っている。だから会場の数か所で上映される各地での制作風景の記録映像は重要なのだ。

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 そのベースには、絵画を描く、という行為そのものを芸術にしてしまおうという考えがあるに違いない。いわば横尾絵画は観客と共に作り上げるパフォーミングアート。「人に見られることでかえって余計な自我やこだわりが消え、無心状態で制作することができる」という。もともとはアトリエのなかった横尾さんが制作場所を求めてやむなくとった手段だそうだ。しかしその効用に気づいてからはより積極的に取り入れ、独自の手法になっていく。

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 また横尾さんは公開制作を演劇にたとえている。舞台の上で起こる事件=創造の現場を固唾をのんで見つめる観客と、その熱気やエネルギーを創造=事件に利用する作家。そこに生まれる即興的でスリリングな瞬間瞬間。作家と観客は共犯となって事件を起こし、共同制作者として作品を創造する。この展覧会は、それらの事件の現場検証ということなのでしょう。

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 公開制作をもっと演劇的にしたPCPPP(Public Costume Play Performance Painting)もおもしろい発想だ。横尾さん自身が工事の現場監督や大工の棟梁のようなコスチュームで登場して絵を描く。決してホワイトカラーではないです。なぜなら横尾さんにとって「描く」ということは、まさに肉体的行為なのだから。横尾忠則という巨大な才能の、創造の一端に触れられた気がします。
 
横尾忠則 大公開制作劇場
2019年1月26日(土)~5月6日(月・休)
横尾忠則現代美術館 Y+T MOCA

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2019年2月 3日 (日)

ん?世界で一番ゴッホを描いた男

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 ん?どういうこと? 不思議な、そしてキャッチーなタイトルに惹かれて元町映画館へ出かけました。ユイ・ハイボーと娘のキキ・ティンチー・ユイの共同監督による映画「世界で一番ゴッホを描いた男」。独学で油絵を覚え、ゴッホの複製画を20年もの間描き続けている画工チャオ・シャオヨンを追ったドキュメンタリーです。英語のタイトルは CHINA'S VAN GOGHS 。日本語の翻訳が絶妙だと思いませんか。

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 「おい、オランダから『夜のカフェテリア』の注文が300枚入ったぞ、40日以内、急げ!」 こんな調子でシャオヨンは弟子たちを使い働きづめで働いているが、生活は苦しい。彼の工房は、世界市場の6割、1万人以上の画工が複製画づくりに従事する深圳の「油画村」と呼ばれるところにある。印刷技術も進歩しているのに、こんな仕事、こんな町があるなんて驚きだ。

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 画集や写真を見て描くだけの彼は、いつしか本物のゴッホをこの目で観たい!と強く願うようになる。ゴッホの芸術の高みにもっと近づきたい。ひたむきに描き、日々苦悩する彼は滑稽でありながら、その真摯な姿勢に心を打たれる。「僕は貧しくて中学にも行けなかったから」と慟哭する彼。オリジナルと模倣。芸術家か職人か。それらを理解していない無知を笑えない。

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 念願かなってアムステルダムを訪れた彼が見たものは? そしてアルルの精神病院やゴッホと弟のテオの墓参りで感じたことは? 本物のすばらしさに衝撃を受けた彼は、自分の人生を、これまでの仕事を見つめなおすようになる。そして自分自身の作品を作ろうと一歩を踏み出す。世界で一番ゴッホを敬愛する男というユニークな視点から、芸術の崇高さを考えさせる優れた映画でした。

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