タイトルは、月まで三キロ
伊予原新さんの短編集『月まで三キロ』(新潮社)がおもしろい。この「?」というタイトルにつられて、思わず買ってしまいました。「月まで三キロ」、「星六花」、「アンモナイトの探し方」、「天王寺ハイエイタス」、「エイリアンの食堂」、「山を刻む」の6編。今までちょっとなかった趣のお話に新鮮な感動を覚えました。オビには、「折れそうな心に寄り添う六つの物語」。まさにまさに、そんな珠玉の短編集です。SFではありませんよ。
潮汐トルク。遺伝的多様性。樹枝状六花。ノジュール。示準化石。年縞。クォークとレプトン。右巻きニュートリノ。苦鉄質包有岩。マグマ混相流。???なんじゃこりゃ??? という理系マニアックな言葉がいっぱい出てきます。でも作者が描きたいのは、親しい間柄でも分かり合えない哀しみ。人生にふりかかる苦悩。そして難解な科学用語をスパイスに生まれる、ほのかな希望。ほっこり温かくなる現代の人情噺です。
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