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2019年1月

2019年1月31日 (木)

ぼけますから(他人事じゃなく)

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 認知症の母と耳の遠い父と離れて暮らす私 ― とサブタイトルが付いた、信友直子監督・撮影・語りの映画『ぼけますから、よろしくお願いします。』が素晴らしい。二ヶ月ほど前に元町映画館で上映されていたとき満員で入れなかったため、アンコール上映の今回、再チャレンジです。「他人事」ではない中高年たちが、いっぱい詰めかけて盛況でした。

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 信友さんはドキュメンタリー番組のディレクターとして活躍している方で、これが初の劇場公開作品になる。自分の年老いた両親を撮った1200日の記録。肉親だからこそ撮れた、ありのままの老いの姿。あんなにしっかりしていた人が、という思い。周りに迷惑をかけたくないのに、どうしたんだろ私、という思い。悲しく、苦しく、ちょっと滑稽な日々を親密な視線で追う。

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 団塊の世代がオーバー70になるこの時代。もうすぐ認知症と寝たきりと介護疲れが日本を覆うことになる。そしてみんなそれぞれの事情は違う。ある数字では介護を必要とする人644万人。介護する人とされる人を合わせると1,288万通りの物語があることになる。この映画はその中の一つの物語に過ぎない。でも普遍的な時代を超えた物語に昇華されているのは、作家の目と力量があってこそ。

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 人間は歳とともに衰える。脚も腰も、目も耳も、内臓もアタマも。これは生物としての限界でどうしようもない。認知症で壊れていく母親87歳。初めての家事に悪戦苦闘する父親95歳。二人が支えあい懸命に生きる日々を克明に記録した信友直子さんの勇気と深い愛情に感動しました。ドキュメンタリーの傑作、誕生です。

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2019年1月28日 (月)

神戸に新・石炭火力発電所?

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 神戸市灘区に新たな大型石炭火力発電所を建設しようとする動きに異議を唱える住民グループが、映画上映会とセミナーを開催しました。地域住民の健康被害や地球温暖化の加速による気候変動へのリスク。健康と環境という、世界のそして時代の大きな流れに逆行する建設計画に対して、NOの意思表示を続けて来たけれど、計画はどんどん進行している。民事訴訟や行政訴訟も起こしていますが、どうなるのでしょうか。

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 この市民運動は一発電所の事案ではないと思う。どうしたら国や行政や巨大企業などが進めようとする計画を止めたり変更したりできるか、市民の意向を反映させるかという問題です。さまざまなデータや学者を動員して説得にかかる。あるいは発電所問題なら電力不足になったらどうするといった脅しまで。これら強大な力に対し、市民の支持を増やしながら粘り強く運動を続けるしかないのでしょう。

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 会の冒頭に上映された映画『シェーナウの想い』(2008年)に感動しました。チェルノブイリ原発事故をきっかけにドイツの田舎町シェーナウで生まれた市民グループが、「自然エネルギー社会を子どもたちに」という想いから初の「市民による市民のための」電力供給会社を誕生させるまでを描いたドキュメンタリーです。あのドイツでさえ、こんなに苦難があったのか。福島で大事故があったにもかかわらず、あっさり再稼働を認めるこの国ではとてもじゃないけど・・・。

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 でもこの映画は10年もの苦労と努力があったとはいえ、市民の想いがちゃんと実現した事実を教えてくれる。これは大きいことだ。ちなみにシェーナウの会社が操業を始めた翌1998年に、ドイツは電力事業の自由化に踏み切ったそうです。発電所の問題に限らず、独占事業や公共事業をおこなう巨大な体制に市民が立ち向かうには、とてつもないエネルギーと時間と知恵が必要だ。この映画が神戸市民にも持続する勇気と力を与えてくれることを願います。

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2019年1月25日 (金)

奇跡の星の植物館へ行く

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 幹の直径は1m、高さは3.5m。強烈な存在感を放つ奇妙な植物。アロエ・ディコトマと名札がついている。説明によると樹齢約320年、アフリカ南部に生えているそうだ。もちろん名前の通りアロエの仲間。たしかに枝先の葉はアロエだ。けれども昔ヤケドに効くといって鉢植えにしていたアロエとは、姿もスケールもずいぶんイメージが違うでしょ。

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 見たこともないトロピカルフラワーやジュラシックパークに出てくるような巨大なシダ。ここ淡路島にある「奇跡の星の植物館」は、安藤忠雄さんが設計した大きな温室施設で、地球に生きる植物の多様性と不思議さを体感できる。6つの展示室とアトリウム、カフェやフラワーショップ、野外のローズガーデンやきのこ村で構成され、発見と感動を与えてくれます。

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 最初にご紹介したアロエ・ディコトマは展示室1の「プランツギャラリー」にある。乾いた土地で生きるさまざまな多肉植物を見ることができる。展示室2「トロピカルガーデン」ではバナナの花を初めて見た。暗くて湿潤な部屋、乾燥して熱い部屋。いろんな環境を人工的に作り出し、世界の植物を身近に感じられるとともに、自然との共生を考えさせられる展示はおもしろい。

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 特別展示室は『雲南省の植物』を集めていた。中国・雲南省は17世紀に多くのプラントハンターが探検した秘境。たくさんの新種をヨーロッパに持ち帰り、当時の植物界に革命を起こしたという。この「ハイドゥン」というツバキ科の花も、蝋細工のような厚みある花弁と葉が独特だ。こんな特別展示やシーズンごとの空間企画植栽。何度も行きたくなる工夫が凝らされています。

兵庫県立淡路夢舞台温室
奇跡の星の植物館

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2019年1月22日 (火)

昭和な、平成な、アート大集合

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 平成最後の年だからでしょう、こんな企画があらわれました。兵庫県立美術館の「Oh!マツリ★ゴト 昭和・平成のヒーロー&ピーポー」展です。英語表記は、Heroes and People in the Japanese Contemporary Art 月光仮面やウルトラマンに関する展示もありますが、それがメインではありません。軍国少年の英雄から紙芝居の怪人、そして太陽の塔もあります。ヒーローたちのアート性。アートとヒーローたちとの関係性。

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 昭和、平成、振り返れば激動の時代でした。戦争から平和、成長から停滞へと、社会が変化するからニューヒーローが現れるのか。新しいヒーローに感化されて大衆は変わるのか。いずれにしても特別な存在=ヒーローは、私たち一般大衆=ピーポーが直面する困難や願望を映し出す鏡としての役割を担ってきた。それは文化を担ってきた作家たちが、時代の空気をどう消化してきたか、ということでもある。

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 昭和なヒーローたちが社会に与えた影響を踏まえた現代芸術家の作品もおもしろい。会田誠の巨大立体作品「MONUMENT FOR NOTHING V~にほんのまつり~」が表現する、地の底からよみがえる軍国主義の亡霊。しりあがり寿のインスタレーション「ヒーローの皮」は本体と制服・コスチュームの意味を考えさせる。アートがどう社会問題に向き合ってきたのかを検証する、おもしろい視点の展覧会です。

Oh!マツリ★ゴト
昭和・平成の
ヒーロー&ピーポー

2019年1月12日(土)~3月17日(日)
兵庫県立美術館

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2019年1月19日 (土)

淡路島でスイセンが満開です

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 淡路島の南部、灘黒岩水仙郷でスイセンが咲き誇っています。海沿いの急な斜面に野生のニホンスイセンの大群生。約180年前に海岸に漂着したスイセンの球根を山に植えたのが始まりで、だんだん繁殖して500万本にも増えたという。例年、1月中旬から2月いっぱいが見頃です。でもこの冬は暖かいので、いつもより開花が2週間ぐらい早いそうです。

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 駐車場からジグザクにつけられた思いのほか急な遊歩道を、フウフウ息をつきながら登る。一面に咲いた水仙の甘い香りに包まれた展望台からは、真ん前に国産み神話の舞台「沼島(ぬしま)」が望める。白と黄色と緑と青い海。この色の組み合わせは、まさに春の前触れ。こんな厳しい時期にけなげに咲くスイセンは、弱々しく見え、じつはすごく強いのかもしれませんね。

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 スイセンの花って、花弁は6枚だと思っていた。じつは花びらは内側の3枚で、外の3枚はガクだそうです。説明板に書いてありました。見た目は同じだけれど、働きの意味が違うのでしょうね。根には毒があり、だからなのか野ネズミやイノシシにかじられることなく、勢力を伸ばせたのかもしれない。自然界はほんとによくできている。

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 標高608mの諭鶴羽山から海へ続く45度の急斜面の一帯、約7ヘクタールにわたってスイセンが咲く灘黒岩水仙郷。近年はロードバイクで淡路島を一周するのが流行っているようですが、その周回コースに面した灘黒岩。イザナギとイザナミによる国産み神話とともに、これからますます人気が高まることでしょう。

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2019年1月16日 (水)

切り絵でここまでできるのか

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 11人のカミワザ、超絶技巧の切り絵ワールドへようこそ! こんなキャッチフレーズで、「切り絵アート展」が開催されている。アーティストは蒼山日菜、井出文蔵、酒井敦美、関口コオ、辰巳雅章、筑紫ゆうな、倪瑞良、林敬三、百鬼丸、福井利佐、柳沢京子の11人。それぞれが追求している独創的な世界が楽しめます。

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 切り絵といえば、一枚の紙から切り出した白と黒のシャープな世界、と思っていましたが、そんな既成概念は見事に覆されました。何枚もの紙を重ねて切り抜き、そのあと再構成する。切った紙と描いた絵画を組み合わせて作品にする。など、手法もさまざま。道具もカッターだけでなく、切り絵専用のハサミなど、いろいろ。

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 反射光(順光)と透過光(逆光)で違う絵に見える作品もある。これはLED照明を組み込んだ特製の額入り。そして啓蒙主義者ヴォルテールの文章の書き文字を作品にしたものも。こんな発想、信じられませんでした。もう『切り絵』という言葉でひとくくりなどできないほど、『切り絵』の世界は進化しています。

息を呑む繊細美
切り絵アート展
2019年1月12日(土)~3月24日(日)
神戸ファッション美術館

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2019年1月13日 (日)

タイトルは、月まで三キロ

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 伊予原新さんの短編集『月まで三キロ』(新潮社)がおもしろい。この「?」というタイトルにつられて、思わず買ってしまいました。「月まで三キロ」、「星六花」、「アンモナイトの探し方」、「天王寺ハイエイタス」、「エイリアンの食堂」、「山を刻む」の6編。今までちょっとなかった趣のお話に新鮮な感動を覚えました。オビには、「折れそうな心に寄り添う六つの物語」。まさにまさに、そんな珠玉の短編集です。SFではありませんよ。

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 潮汐トルク。遺伝的多様性。樹枝状六花。ノジュール。示準化石。年縞。クォークとレプトン。右巻きニュートリノ。苦鉄質包有岩。マグマ混相流。???なんじゃこりゃ??? という理系マニアックな言葉がいっぱい出てきます。でも作者が描きたいのは、親しい間柄でも分かり合えない哀しみ。人生にふりかかる苦悩。そして難解な科学用語をスパイスに生まれる、ほのかな希望。ほっこり温かくなる現代の人情噺です。

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2019年1月10日 (木)

冬枯れも、また楽し

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 冬の六甲山。秋の紅葉が終わると、落葉した林は見通しが良くなり一年でいちばん明るい季節になります。山麓の日当たりのいい場所には、ススキやセイタカアワダチソウの綿毛が美しい。色といい形といい、ぜんぜん主張しないのにしっかり確立された美がある。枯れ草色の美しさに改めて気づく季節。

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 枯れ草色とともに目立つのが、照葉樹林を構成するつややかな緑。その生命力あふれる緑に映えるのが真っ赤なヤブツバキです。六甲にもたくさんの群落がある。そして少し日陰になった場所にはアオキの赤い実が、やはり緑との対比で目に飛び込んでくる。枝に実だけ残った柿やマユミも見ごたえがある。

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 緑の時期には葉が茂り下草も密集しているため見えなかったもの、気づかなかったものが見えてくるのも冬の山歩きの楽しみだ。伐採した木と切り株に薄茶色の半透明ビニールシートを被せたかたまりに、何か張り紙がある。「マツクイムシの燻蒸駆除」。 へぇ、こんなこともしているんだ。森林の維持管理は大変なのだ。放っておくと荒れる一方だから。

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 修法ヶ原の奥を歩いていると、「少花粉スギ」の植栽を見かけた。まだ高さ2mぐらいですが、兵庫県森林ボランティア団体協議会が平成26年に植えた苗木だそうだ。花粉の量が通常のスギの1%以下だという少花粉スギ。花粉症対策に役立てばいいですね。何もないように思われる冬枯れの山のハイキングも、このようにおもしろい発見や新しい出会いがいっぱいです。

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2019年1月 7日 (月)

マリア・カラス、真実の人生

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 「マリアとして生きるには、カラスの名が重すぎるの」。これはオペラ史上最高の歌手、マリア・カラスの言葉です。ドラマチックな53年の生涯は、音楽界にとどまらず社会的にも広く関心を集め、後の世界に多大な影響を与えた。そんなカリスマ歌姫のドキュメンタリー。

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 この映画は舞台やコンサートの映像、TVのインタビュー、ニュース映像、未完の自叙伝など、すべて彼女に関する事実で出来上がっている。ここには誰か女優さんがマリアを演じた部分はまったくない。それが潔い。それが映画に凄みを与えている。トム・ヴォルフ監督の見事な構成です。

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 女王や大統領も駆けつける圧倒的なステージ。その成功の影に隠された苦悩とスキャンダルやバッシング。愛や家族を切望するマリアと、倒れるまで歌うことをあきらめなかったカラス。そのどちらもが彼女の真実の姿だったのだ。

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 歌に生き、恋に生き(プッチーニ「トスカ」)、清らかな女神よ(ベッリーニ「ノルマ」)、私のお父さん(プッチーニ「ジャンニ・スキッキ」)、さようなら、過ぎ去った日々よ(ヴェルディ「椿姫」)、恋は野の鳥(ビゼー「カルメン」)・・・。歴史的な魂の歌声がライブ映像で楽しめるのは、この上ない幸せでした。

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2019年1月 4日 (金)

最新の、スター誕生

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 監督&主演:ブラッドリー・クーパー。そして主演:レディー・ガガ。過去にジュディ・ガーランドやバーブラ・ストレイザンドが主演した名画『 A Star Is Born 』の、最新リメイク版「アリー/スター誕生」です。大まかなストーリー展開を知っているのに、これだけ感動するなんて思いがけない喜びでした。

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 まず驚いたのは、レディー・ガガの演技力。歌が素晴らしいだろうというのは、映画を観る前からわかりきっていたこと。でもこの難しい役どころを見事に演じ切った。主演女優賞モノの名演技です。ウエイトレスからスターダムを駆け上がっていくにしたがって、顔つきも変わってくる。

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 もちろんブラッドリー・クーパーの演技も素晴らしい。彼にとって初監督作品だそうだが、とても初めてとは思えない堂々とした演出で、深い感動を与えてくれた。ガガが I'll Never Love Again を歌うシーンには涙が止まりませんでした。ラストシーンでこれを持ってくるなんてズルい!いや上手い! 前に進む勇気をもらいました。ありがとう。
 

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2019年1月 1日 (火)

亥年、そして平成最後のお正月

            慶応明治大正昭和平成
            時は流れる 時代は移る
            人は生きる 時間は長い
            人は忘れる 時間は速い
            平成三十一年己亥正月
            五輪万博 いつか見た夢
            季節は巡る 時は積もる

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 平成最後のお正月、と聞くと何かと感慨深いものがあります。とくにこの年齢ともなると、時間のことをよく考えるようになる。いままで過ごしてきた時間。これから残された時間。長いようで短い。遅いようで速い。つかみどころがなく、でも厳然と存在する時間。人間は生まれ、愛し、死んでいく。それは何万年も変わらない宿命。あなたも私も、人間は神さまが作った時間ゲームの駒と割り切れば気楽なんでしょうが、それも難しい。

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 今年は亥年。写真はフィレンツェの「新市場のロッジア」にある青銅製のイノシシ。幸運を呼ぶ彫刻と呼ばれている。毎日たくさんの観光客に触られた鼻のあたりは金ピカです。舌の上にコインを置いて滑らせ、うまく下の穴に落ちると願いが叶うという。何百年もの間、人間の願いや欲望を見てきた彼は、「時間」なんて結論の出ない問題に悩むより、日々を懸命に生きろと思っているのだろうか。アモーレ!マンジャーレ!カンターレ! いい1年になりますように。

 

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