2018年9月17日 (月)

今も新鮮!過去の名作

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    越後妻有 大地の芸術祭。3年ごとの開催だけど、過去の名作がたくさん残されていて今も感動を与えてくれる。しかも3年ごとにその数は増え続ける。開催期間が過ぎれば終わり、という展覧会とはそこが違う。この地に「残る」ということが、まさに大地の芸術祭のキモ! 春や秋にもまたアート鑑賞に訪れたい、と思わせる魅力があるから。アートが越後妻有の地域おこしに貢献していると言われるゆえんだ。

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 たとえば松代のイリヤ&エミリア・カバコフによる「棚田」(2000年)。伝統的な稲作の情景を詠んだテキストと農作業をする人々の彫刻が、棚田を背景に浮かび上がる。鞍掛純一+日本大学芸術学部彫刻コース有志による「脱皮する家」(2006年)は、空き家になった古民家の壁も床も柱も天井の梁も階段も、延べ三千人が彫刻刀で彫ってまるごと作品に。手仕事のパワーに圧倒されます。

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 カサグランデ&リンターラ建築事務所が中里エリアに創った「ポチョムキン」(2003年)は、釜川の土手に建つ万里の長城のようなコールテン鋼の壁。長年ゴミが不法投棄されていた場所を、ブランコやあずまやが並ぶ迷路のような公園にしました。いい色にサビが出て時間が経ってますます趣深くなっている。

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 まつだい農舞台と駅の間には草間彌生の「花咲ける妻有」(2003年)が。色鮮やかに咲き誇る巨大作品で、たくましい生命力にあふれています。この作品は雪景色のなかで見るのもいいそうです。3年にいちどの真夏の芸術祭はもう閉幕ですが、期間以外の空いているときにゆっくり巡るのもいいかも。ジェームズ・タレルの「光の館」など泊まれるアート作品もいくつかありますから。

大地の芸術祭
越後妻有アートトリエンナーレ2018

2018年7月29日(日)~9月17日(月)
新潟県十日町市・津南町

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2018年9月14日 (金)

キナーレにエルリッヒの新作

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 この写真、どこかヘンだと思いませんか? リーフレットに載っているレアンドロ・エルリッヒの新作「Palimpsest:空の池」の写真です。ここは大地の芸術祭の拠点、越後妻有里山現代美術館「キナーレ」。中庭の大きな池を回廊がぐるっと取り囲む原広司の設計です。

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 空や建物の水面への映り込みが不自然ですよね。北斎の逆さ富士と同じく、うっかりすると見逃がしそうですが。柱の影が途中で折れ曲がったり、ブレたように二重に見えたり、位置を少し変えるだけで映る像が変化する。水面は単なる鏡のはずなのに。

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 じつはコレ、池の底にタイルで青空や柱が描かれた作品なのです。巧妙なだまし絵。2階のある一点から見るときだけ、キレイにだまし絵と現実が重なる。虚像と実像が一致する仕掛け。この池に入ることもでき、子どもたちが楽しそうに水遊びをしていました。

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 6年前にこの中庭で「No Man's Land」という巨大なインスタレーションで感動を与えてくれたクリスチャン・ボルタンスキー。2006年から旧東川小学校全体で展開している「最後の教室」に、新作「影の劇場」を追加した。瀬戸内でも収集している心臓の鼓動音が鳴り響く校内。生命の響きとドクロや死神など死のイメージが加わって、さらに象徴性が増したように思います。

大地の芸術祭
越後妻有アートトリエンナーレ2018

2018年7月29日(日)~9月17日(月)
新潟県十日町市・津南町

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2018年9月11日 (火)

ようこそ、アートどうぶつ園へ

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 ナカゴグリーンパークで開催されているのは、約30組の日本人アーティストによるアート作品の動物園です。松本勇馬+わらアートJAPANによる「見島牛」は、体長5mぐらいの重量感ある牛の親子。わらで作った土俗的な力強さが魅力の作品です。

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 村上直樹の「Wind / Poker Face」は凛々しいシカ。素材は太い針金でしょうか、赤茶けたサビ色がまわりの自然とよくマッチしている。最近は増えすぎて里山の厄介者のように扱われるシカだが、この大きな彫像からは生き物としての神々しさを感じる。

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 ホースで作ったホース!? ダジャレではありません。辻蔵人の「ソラウマ」は、オレンジ色のゴムホースにバネや金属部品を組み合わせて作られたサイボーグのような馬。作品タイトルはもしかして「空馬」? 本当に宇宙まで飛んでいきそう。

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 ほかにもビニールでできたヘビに睨まれたカエルや、大名行列ならぬ「大猫行列」など、動物をモチーフにしたユーモラスな作品やファンタジックな作品がずらり。素材も木、わら、金属、プラスチック、ビニールとさまざま。アーティストのアイデアと完成度が試されています。

大地の芸術祭
越後妻有アートトリエンナーレ2018

2018年7月29日(日)~9月17日(月)
新潟県十日町市・津南町

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2018年9月 8日 (土)

土地の守り神「うぶすな」の家

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 十日町市の北エリアにある「うぶすなの家」。1924年築の茅葺き古民家をやきものミュージアムとして再生した施設です。現代陶芸作家が手掛けたカマドや囲炉裏、お風呂などが体感できる。

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 玄関を入ると土間にドーンと置かれているのが鈴木五郎の織部焼のかまど。織部特有の白、黒、緑が美しい。実際には使っていないそうですが、床も煙突も一体となった大きな作品です。

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 お風呂場は澤清嗣の作品。信楽焼の緑釉によって焼成されたバスタブは、ソラマメのようでかわいい。窓から越後の大地を眺めながら入浴すると、さぞ気分がいいでしょうね。

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 一階の食堂は有名シェフがメニューを監修し、周辺の畑で採れる夏野菜やマスなどこの地の恵みたっぷりの食材で地元のお母さんたちが作る料理を味わえる。もちろん器は現代作家のもの。囲炉裏端でいただくと、この囲炉裏も床も中村卓夫の作品。

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 いままで述べてきた作品は2006年から展示されているものだが、毎回新しい企画も展開される。今回は小規模ながら安藤雅信の個展も開かれている。食堂の「うぶすなカレー」も安藤さんのステキな器で提供されている。古民家に現代陶芸。相性ピッタリです。

大地の芸術祭
越後妻有アートトリエンナーレ2018

2018年7月29日(日)~9月17日(月)
新潟県十日町市・津南町

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2018年9月 5日 (水)

アラブドリフトって知ってますか

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 この写真を見て何を思いますか? あっ、危ない! えっ、事故車? 違反運転じゃないか? 危険行為は止めろ! 驚く人はいても、あまり褒める人はいないかもしれません。これはアーメット・オーグットのアート作品「カードリフターズ」。十日町市川西地区の幹線道路沿いに設置されている。

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 車体をドリフトさせて片側の二輪だけで走行しながら、乗っている人が車外に出て踊ったりする行為が、1970年代後半からサウジアラビアなどの裕福な若者たちのあいだで流行しているという。「アラブドリフト」「サウジドリフト」「中東ドリフト」と呼ばれるこの現象と、使う車のほとんどが日本車であることに着想を得て、トルコ人アーティストが創った作品です。

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 越後妻有というのどかな田園風景に、中東のサブカルチャーを体現するトヨタのランクル。舗装をして白線も引いた「道路」に、傾いた車体がドキッとするリアルな情景を生み出しました。驚いた後に大笑いする作品。サプライズがアートの基本だと再認識させてくれます。

大地の芸術祭
越後妻有アートトリエンナーレ2018

2018年7月29日(日)~9月17日(月)
新潟県十日町市・津南町

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2018年9月 2日 (日)

時空を超えて絶景へ至る

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 長いトンネルを抜けると、そこは絶景だった! これは越後妻有アートトリエンナーレ2018のマ・ヤンソン/ MADアーキテクトによる「ライトケーブ Light Cave」という作品です。大地の芸術祭・越後妻有アートトリエンナーレも7回目を迎えました。地域の歴史や文化に根差したアートを作る芸術祭も、始まってもう20年以上、地元の人々にも愛され支えられ、地域おこしに役立っているようです。

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 「ライトケーブ」がある清津峡は、黒部峡谷や大杉谷とともに日本三大峡谷の一つ。溶岩が冷えるときにできる柱状節理と呼ばれる地層で有名です。その断崖絶壁を間近に見ることができるトンネル全体をアート作品にして楽しませてくれる、未来的発想の不思議観光スポット。

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 トンネルは全長約750m。暗く狭い通路は緩やかに上り勾配で、オレンジやブルーの照明に照らされている。ブレードランナーの世界かエイリアンが出そうな空間か。目が慣れてくると天井に小さなブツブツのオブジェも貼り付けている場所もある。まるで天然の鍾乳洞を探検する気分です。

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 途中に三つの見晴所がある。長い坑道のあいだに横穴を掘って柱状節理の断崖をすぐそばでを眺められる見晴所。それぞれにアイデアが凝らされている。宇宙生命体の体内に入ったようなところ。まわりの景色が歪んで映り込む銀色の有機的なデザインのトイレは、内部から外の峡谷も眺められる。

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 トンネルのいちばん先にあるのはパノラマステーション。天井も高く横幅も広くなった大空間です。床には薄く湧水が貯められ、壁にはステンレス板が張られている。床にも壁にも、眼前の絶景が映り込み、天地の境がわからなくなる仕掛け。突端まで歩いていくと、大峡谷がバアーッと広がる。感動の絶景! 21世紀の新観光名所です。

大地の芸術祭
越後妻有アートトリエンナーレ2018

2018年7月29日(日)~9月17日(月)
新潟県十日町市・津南町

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