2018年6月22日 (金)

木蘇皮プロジェクトとは

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 木曽路で開催されている「けものみち」展。山深いこの地ならでは、と思わせるユニークな企画が「木蘇皮プロジェクト」です。山の恵みをクリエイティブに活用していくことはできないか、という思い。自然と共存しながら地域の生活と資源に根ざした文化の創出を目指したい、という願い。これらは明治以降の近代化による自然の破壊と、過疎化による野生の逆襲という、二つの大きな潮流に対してアートは何ができるかという問いへの答えでもあります。

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 有害獣として駆除されたシカやイノシシの大部分は廃棄されているという。これら獣の皮を煮出して膠(ニカワ)をとりだし、煤(すす)と練りこんで墨を作る。毛は筆に使う。そして、なめした皮に絵を描く。これはほんの一例だが、自然と人間が持続可能な関係として循環していくためのヒントになりえると思います。そんな考えも人間の身勝手かもしれません。でも有害鳥獣や害虫などという、自然をリスペクトしない不遜な言葉を死語にするきっかけになればいいと思うんだけど。

木曽ペインティングス Vol.2
けものみち

2018年6月6日(水)~6月21日(木)
長野県木曽郡木曽町/上松町/木祖村

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2018年6月19日 (火)

木曽の「けものみち」展

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 旧中山道の宮ノ腰宿、上松宿、藪原宿の古民家や美術館を舞台に、34人のアーティストによる作品展が開催されている。野生動物と人間の関係、自然と近代化とのバランスなど、山の中の街道とそれを取りまく野生の150年間をテーマにした作品が、宿場町の趣のある場所に工夫を凝らして展示してある。

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 たとえば、サルやシカ,、イノシシやクマなど林業や農業への被害を考えさせられる宮嶋結香の絵画。おもしろい質感だなと思ったら、これらは米袋に描かれている。シワシワの上に絵の具のまだらがいい味を出している。もちろん描かれた動物たちもとても個性的だ。このアーティストはすごく才能があると思います。

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 さまざまな動物をモチーフにした木の造形が色鮮やかな糸で結ばれた伊藤美緒の作品も興味深い。古民家の違い棚や欄間など、昔の建具との対比が新鮮だ。どちらも木を扱う技術が素晴らしい。さすが木の故郷。木曽ならではの技。島崎藤村が「木曽路はすべて山の中である」と書いた時代から百数十年が経った現代、この木曽でこんな企画が生まれるのはいいことだ。

木曽ペインティングス Vol.2
けものみち

2018年6月6日(水)~6月21日(木)
長野県木曽郡木曽町/上松町/木祖村

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2018年6月16日 (土)

「画家の肖像」展だからね

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 いま開催中の「横尾忠則 画家の肖像」展。前回は自画像にまつわる印象を書きましたが、別の階では横尾さんが刺激を受け尊敬する画家たちをテーマにした作品群が展示されている。ピカビア、ピカソ、アンディ・ウォーホル、マン・レイ、キリコ,、マルセル・デュシャンなどをイメージした作品。それがまたよくできている。(生意気なことを言って、横尾さん、ゴメンナサイ)
 
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 やっぱり惚れ込んだアーティストのスタイルや表現の核を、よっぽど深く見ないと特徴はつかめない。このピカソを取り上げた作品も、彼の何人もの奥さんをまわりに散りばめている。しかもそれぞれの女性のイニシャルをつけて肖像画(似顔絵)を描くなんて。冗談きついよ、と言いたくなります。
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 マン・レイはマン・レイだし、ウォーホルはウォーホルだし、ピカビアはまさにピカビア。さすが横尾さん、それぞれの画家のアート世界を見事に表現している。見る目、テクニック、想像力、創造力、すべてそろって初めて描ける作品群だと思う。それにユーモアのセンスもね。観る側は発見の楽しみ満載です。

横尾忠則現代美術館
Y+T MOCA
横尾忠則 画家の肖像
2018年5月26日(土)~8月26日(日)

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2018年6月13日 (水)

横尾忠則の自画像

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 レンブラントやゴッホをはじめ、昔から自画像を描く画家は多い。横尾忠則さんはそんななかでも特別に多作だと思う。グラフィックデザイナーのころから画家宣言をしたあと、そして現代にいたるまで。肖像として描いたもの。作品の中の一つのイメージ要素として登場させたもの、などなど。いつも自己の内面世界を表現してきた横尾さんらしい。自己顕示欲とは違って、興味津々に自分自身の存在の奥底を探検している感じ。

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 1980年代後半はデザイナーとして確立した方法論を捨て、画家としてのまったく新たなスタイルを模索していた時代。キャンバスの布地を切り貼りした、いま見ても面白い作品群がたくさん生み出された。平面だけの表現では飽き足らず、立体的な手法で次元の違う事象をコラージュし、イメージの多重化と融合によって壮大な叙事詩のようなアート世界を構築している。

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 少年時代の想い出、あるいは生まれる前の(前世の?)記憶。横尾さんはごくごく小さい頃から自己探求を繰り返す子どもだったに違いない。そんな自己を見つめた肖像が、1965年の有名なポスターから2018年の「T+Y自画像」まで、90点余りの作品が展示されている。とても見ごたえのある展覧会でした。

横尾忠則現代美術館
Y+T MOCA
横尾忠則 画家の肖像
2018年5月26日(土)~8月26日(日)

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2018年6月 1日 (金)

下村優介のヌーベル切り絵

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 新しい発想の切り絵でアートに新時代を開いている下村優介さん。いま大阪高島屋7階で作品が展示されている。しかも下村さんによるワークショップも行われる。大阪アート&ハンドメイド バザールという企画イベント。切り絵って何となく古臭いイメージを持たれている方も多いかもしれません。でも、ここ5年ほどでガラッと印象が変わりました。

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 そんな新時代の切り絵アートを引っ張っている一人が、この下村優介さん。上の2点はポストカードですが、作品を少し浮かせて影をつけている。小さい画像なので、ちょっとわかりにくいかもしれなせんが。平面である切り絵をこんな立体的に見せる「見せ方」もモダンでしょ。アメリカやスペインでの展示やワークショップでも活躍する彼ならでは。

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 会場にはこんな撮影コーナーが設けてある。これも黒い壁面から少し浮かせて展示している。緻密にカットされた2羽の鳥。向かい合っていまにも跳びかからんとする闘鶏の決定的瞬間、かな? という緊張感あふれる作品です。上のほうの頭より鋭い爪が強調されて迫力がある。でもそれだけではありません。

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 この前に立って記念撮影をすると、ほらご覧の通り。天使になれましたでしょうか。お見苦しい姿でスミマセン。こんな遊び心がそれぞれの作品の随所に現れている。手先の器用さが強調されていた従来の切り絵。それに対して絵のテーマが斬新で、サイズや平面性の束縛から解放された下村アートはまだまだ進化を続けるでしょう。

OSAKA ART & HANDMADE BAZAAR
Collection  in 大阪タカシマヤ

2018年5月30日(水)~6月4日(月)

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2018年5月23日 (水)

新緑の六甲山で野外写真展

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 ROKKO フォトグラフィック ガーデン という変わったタイトルの野外写真展がおもしろい。エッ、野外で写真? と思われるでしょうが、なかなかいい。毎年秋に開催される「六甲ミーツ・アート」の主な会場と同じく、六甲高山植物園やオルゴールミュージアム、カンツリーハウスや六甲枝垂れなどを舞台に展示にもそれぞれ工夫を凝らしている。

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 写真集『未来ちゃん』で大ブレークした川島小鳥の作品「昨日の君、明日のあなた」は、若者の表情がナチュラルでとてもいい。この作家はモデルを自然体にさせる天賦の才能があるようだ。そうして被写体の素の魅力をうまく引き出す。もちろん信頼関係を築くまでに長い時間をかけているのでしょう。

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 そして今回の展示で、新しい発見だ!と興奮したのがヤマモトヨシコの作品「20161206」。レンブラントの肖像画のような、スターウォーズの登場人物のような・・・言葉でうまく表現できないけれど、いままで見たこともない世界を創出している。遠い過去と遥かな未来が同居。永遠の時間を感じる。カッコいい。

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 ヘアメイクアーティストの力量も素晴らしいこの12点シリーズ、重厚なモノトーンの世界が、白日の下にそれも生命の喜びにあふれた新緑のただなかに置かれる。きっと違和感が極限まで高まるだろう、と思いきや。なんとこのギャップが逆にすごく良さを際立たせている。自然の中だから、陽が当たったり陰になったり雨粒がついたり、そんな環境の変化によって印象が変わるも魅力です。

ROKKO フォトグラフィック ガーデン
2018年5月11日(金)~7月31日(火)
 

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2018年5月 3日 (木)

イベール、椿昇、カオルコほか

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 うめきた広場の3点を含めてヤノベケンジの作品は合計7点、せせらぎのみちに「SHIP'S CAT」、北館ナレッジプラザに代表作「ジャイアント・トらやん」や「アトム・カー」も展示されている。これだけまとまって彼の作品を観る機会は、とても珍しいのではないでしょうか。

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 フランスのファブリス・イベール作「TED HYBER」もおもしろい。口から水を吐くグリーンのクマは、自然と人間の関係を考えて作品を構想するイベールの分身のようなテディベア。それにそれに懐かしのキース・へリングも。1983年、東京青山のギャルリー・ワタリでの展覧会、ビルの壁面も内部もすべて使って開催された伝説の個展を再現した展示もあります。なんと今年は彼の生誕60周年だそうだ。

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 そして椿昇がバルーン素材で作った高さ20mの「フラグメンタ」が、吹き抜けの大空間に金色に輝いてそびえています。この牡牛、聖書に出てくるのか、ギリシャ神話に由来するのか。左には伊藤若冲へのオマージュのような「鸚鵡図」。「図」とタイトルされていますが、堂々たる立体作品。やはり現代アートにサイズ感は必須なんですね。

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 今まで述べてきた巨大な立体アート作品とは違って、平面作品だけど存在感があったのが、カオルコの絵画「IDOL」シリーズ。現代を生きる女性を描きながら明治・大正時代の着物の柄をコラージュ。古きも新しきも取り込んで、時代を超越した日本の美を創造している。以上、5月13日(日)までの展覧会です。

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GRAN ART FES
グランフロント大阪
2018年4月26日(木)~5月13日(日)

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2018年4月30日 (月)

うめきた広場にヤノベケンジ

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 大阪駅からグランフロントに歩いていたら、あっヤノベケンジだ!と目に飛び込んできたアート作品。近づいてみると、グランフロント大阪 まちびらき5周年を記念して4月26日(木)から5月13日(日)まで開催されている 『GRAND ART FES』の展示でした。

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 真ん中に置かれた有名な「サン・チャイルド」は高さ6.2m。東日本大震災後に制作された希望のモニュメントです。足をしっかり踏ん張り、前を見据えて暗い世界に立ち向かう子ども像。手には太陽を持ち、再生・復興へむかって光をかざしている。2011年の作品。

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 左には2009年作、放射状にのびる突起物におおわれた巨大な球体 「ウルトラ -黒い太陽- 」が。中では人工の稲妻発生装置が放つ火花が躍っているそうですが、残念ながらこの時は見えなかった。もう一度観に行かなくっちゃ。

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 そして右には2015年の「風神の塔」。小型風力発電によって水を汲み上げ、口に溜まると吐き出すことで水の循環と浄化を起こすモニュメント。原発事故による全村民避難となった飯館村の人々との交流から構想が生まれたという。
 うめきた広場以外の場所にも椿昇やファブリス・イベールなどの作品が展示してあるので、次回また紹介します。

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GRAN ART FES
グランフロント大阪
2018年4月26日(木)~5月13日(日)

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2018年3月15日 (木)

新作は「謎の女」シリーズ

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 今回の展覧会のために昨年と今年に描かれた新作が21点。「謎の女」と題されたシリーズです。描かれた女性は、すべて顔が隠されている。顔の中でもいちばん見たい眼元が見えない。その人の人格や魅力を決定づける要素は、顔や姿や服装だ。なかでも最大の要素は眼だと思う。それだけが見えないことへの苛立ち、その喪失感。

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 「謎の女」は女性のポートレート・シリーズだが、トイレットペーパーやキャベツ、石やカエルなど、まるで関係のない物質で唐突に覆い隠される。それによって私たちが無意識に判断する、優しそうな人、高慢な人、気品のある人、などという属性があいまいになり、不可解な謎の人になってしまう。死後のもう一つの世界の住人は、このようなあいまいな存在なのだろうか。

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 もうひとつ、顔が見えない、あるいは見せないことの意味を考えさせられる作品がある。髪の毛やヴェールで顔は隠れているが、服をはだけてこれ見よがしにオッパイを見せている。このギャップがとてもおもしろい。実体としての肉体は存在するけれど、人格(魂)はそこにはない。まるで「この世」と「あの世」に片足ずつかけているかのよう。横尾さんはこのような回路で、こっち側とあっち側を行き来しているのでしょうか。

横尾忠則の冥土旅行
Jouney to the Next World
2018年2月24日(土)~5月6日(日)
横尾忠則現代美術館

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2018年3月12日 (月)

横尾忠則さんの冥土旅行?

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 「人は死んだらどこへ行くのか?」 誰もが必ず迎える死、でも誰も知らない死後の世界。昔からあらゆる宗教家や哲学者が想像をめぐらし、さまざまなイメージを提示してきたあの世。横尾さんは普通の人以上に死に対する関心が深かった。若いころからずっと彼の作品には死の影と生の喜びが裏表の関係で表現されてきた。そしてダンテの『神曲』を愛読し、ウイリアム・ドレイクやギュスターブ・ドレの挿絵にインスピレーションを受けて作品に引用したりもしている。地獄、煉獄、天国を旅する物語。

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 死のイメージが漂う赤のシリーズの原点は、少年時代に故郷・西脇で見た神戸大空襲で燃える夜空だそうだ。真っ赤に染まった山の向こうの遠くの空。美しく妖しく不気味に見えた印象が強烈だったようで、繰り返し妖しい赤が現れ観る者を不安にさせる。描かれたモチーフが牛若丸と弁慶やシンドバッド、モーツァルトターザン、宇宙蛍や暗夜行路だったとしても、幼いころから身近に感じていた死後の世界が色濃く反映されている。それはかけ離れた世界ではなく、現実のすぐ隣にある、どこか心休まる場所。行ってしまうと帰れない「冥土への旅」ではなく、行きつ戻りつしながら楽しむ「冥土旅行」。そんな旅行代理店ができると繁盛するでしょうね。

横尾忠則の冥土旅行
Jouney to the Next World
2018年2月24日(土)~5月6日(日)
横尾忠則現代美術館

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