2018年10月 2日 (火)

不良在庫ではありません

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 在庫一掃大放出と言っても、決して不良在庫ではありません。たまたま今までの企画展では登場の機会がなかっただけ。これらの作品からは、横尾さんの新しい魅力を発見したり、意外な一面に出会えたりするからかえっておもしろい。どれだけ多彩に、どれほど大量に作品を制作してきたかの結果で、あらためてその量と質に圧倒されます。

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 キャンバスに鏡を張り付ける。額縁に照明を埋め込む。キャンバスを切り刻んで貼り付ける。同じモチーフをいろんなスタイルで描き分ける。などなど。実験や試行錯誤の途中経過までさらけ出す行為そのものがアートだという信念がうかがえる。自身の到達点に一刻も安住することなく、つねに新しい表現にチャレンジしてきたからこそできたもの。

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 聖と俗が混然一体となった作品世界。誕生と死のイメージが氾濫する横には、ユーモアが潜んでいる。まるで呼吸するように、あるいは排泄するように、日々好奇心のおもむくままに森羅万象を描いてきた横尾忠則。テーマを特定しない今回の展覧会は、この作家の巨大さを一番うまく表しているのかもしれない。

横尾忠則
在庫一掃大放出展

2018年9月15日(土)~12月24日(月)
Y+T MOCA
横尾忠則現代美術館

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2018年9月29日 (土)

横尾忠則の在庫一掃セール

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 2012年の開館以来、横尾忠則現代美術館はさまざまなテーマを設定して、作家の膨大な作品を紹介してきた。しかし今回の『横尾忠則 在庫一掃大放出展』は、あえて特定のテーマを設けていない展覧会。展示作を選ぶポイントただひとつは、「まだここで展示されたことがない作品」だそうです。

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 横尾さん一人の作品を展示する美術館なので、次々に展覧会のテーマを考えるご苦労は並大抵ではないと思う。たとえその作品世界にありとあらゆるものが含まれ、いくら作品数が膨大だとしても。もちろん開館するときからわかっていたことだし、今までは「なるほど!」、「そんなテーマがあったか!」と感心することが多かった。

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 そこで今回は、小休止というか、苦肉の策というか、まだ展示されたことがない作品だけで構成する、題して『在庫一掃大放出展』と相成った。係員さんは赤いセールのハッピを着ているし、わざと舞台裏を見せたりして、美術館を特売セール会場に見立てた演出もおもしろい。だけどこの手は一回きりだからね。がんばってください。

横尾忠則
在庫一掃大放出展

2018年9月15日(土)~12月24日(月)
Y+T MOCA
横尾忠則現代美術館

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2018年9月26日 (水)

高谷敏正さんの陶画とは

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 ギャラリー北野坂で始まった『高谷敏正 陶展』。彼の個展は毎回楽しい驚きに満ちている。おっ、おもしろい! へえ~、こんなことができるのか。説明を聞くと、ほお~、なるほどね。と感心することしきり。陶器では不可能だと思える表現に挑戦しながら、「陶展」と名乗る不敵さ。さてどんなワクワクを見せてくれるのか。

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 今回の作品シリーズは『陶画』と名付けたという。陶に絵を描くのではなく、陶で絵を描くのでもなく、陶そのものでの絵画的表現にチャレンジしたそうだ。白い土をキャンバスに、青やピンクや黄色の色粘土を薄めて塗ったものを重ねて焼き上げたもの。だからどの作品も二層、三層で構成されている。

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 上の白い層をカットし、下地の色を見せることによって絵を描く。森や草原を彷彿させる作品。ストーリー展開を思い描く作品。稲光にインスパイア―された作品・・・。旺盛な想像力とそれらをカタチづくる造形力のすばらしさ、最終的に作品として仕上げる技術力に、ますます磨きがかかってきたようです。

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 そして花器やモビールはもちろんお皿まで、白い土と色の土を重ねるという同じ手法で作られている。個展には実用的な作品も必要だ、という配慮からお皿を制作されのでしょうか。でもしっかり作家の個性が発揮された作品になっているのは見事です。
 
高谷敏正 陶展
2018年9月25日(火)~9月30日(日)
GALLERY 北野坂

 

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2018年8月29日 (水)

千住博&チームラボの「水」

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 堂島川のほとり、堂島リバーフォーラムが開館10周年を迎えたそうだ。それを記念して開催されているのが、『滝』の画家・千住博とデジタルアートの最前線を駆けるチームラボがコラボレーションした展覧会です。最強タッグが産み出した『水』をテーマにした作品に圧倒されました。

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 会場全面に次々と打ち寄せる大きな波の作品は圧巻だ。プロジェクター映像が壁に映り、そこかしこに設置された鏡のなかで逆巻く。寄せては砕ける荒波にぐるりと取り囲まれた感覚。そこの世界には自分と波しか存在しない。床に座ってじっと眺めている人がいる。ミニマルな音楽と相まって、展示会場は瞑想の場と化しているのだ。

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 大きな波と言えば北斎の「神奈川沖浪裏」が有名だけれど、この映像作品はそれに匹敵する名作だ。いや比較するものでは、龍安寺の石庭を現代に創り出したと言うほうがイメージしやすいかもしれない。荒々しく、清らかで、神秘的な水に、宇宙を見る。これこそ21世紀の芸術だと思います。

千住博&チームラボ
コラボレーション展「水」

2018年7月14日(土)~9月9日(日)
堂島リバーフォーラム

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2018年8月23日 (木)

ボローニャ絵本原画展です

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 世界のイラストレーションの流れは? どんなイラストレーターが現れた? イラストの新しい技法は? 毎年さまざまなアイデアや、見たこともない表現で、うれしいサプライズを与えてくれる「イタリア・ボローニャ国際絵本原画」展。今年も西宮の大谷記念美術館で開催中です。
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 今年は約70ヵ国 3,053作品の応募があり、日本の10名を含む25ヵ国 77作家が入選を果たしたそうです。その入選作を一気に見られるチャンス! やはりあまり見る機会のない国のアーティストの作品が新鮮で目につきます。それはモチーフだったり色使いだったり。勉強になります。

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 ロシアの作家、ソフィア・ヴェンゼルによる「赤ずきんちゃん」や、スロヴェニアのアンドレア・ペクラールによる「わたしのお月さま」。そしてイランのアリレザ・コルドゥズィヤンによる「玉ねぎの伝説」などが特に印象に残りました。ね、どの国もどちらかと言えばなじみが薄いでしょ。

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 技法もアクリル、水彩、グアッシュ、鉛筆、色鉛筆、エッチング、アクアチント、パステル、チョーク、切り絵、コラージュ・・・と実に多彩。そしていろんな技法を組み合わせて表現力を高めている。ほとんどのアーティストがデジタルで仕上げているのは、時代の流れでしょうか。

イタリア・ボローニャ
国際絵本原画展

2018年8月11日(土)~9月24日(月)
西宮市立大谷記念美術館

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2018年8月20日 (月)

見る!触る!感じる!展覧会

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 夏休み時期に合わせて六甲アイランドで開催されている「魔法の美術館 ― 光と遊ぶ超体感型ミュージアム」。12人のアーティストが創り出す最新のデジタル技術を駆使した21作品に、子どもたちは大喜び! 夢中に遊んでいる。従来の美術館のイメージをガラッと変える展示空間です。

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 例えば、いろんな色のボール(?)が上からゆっくり降りてくる作品。3mぐらい離れた位置にいる人間の行動を感知して、ボールが跳ねたり上に昇ったりする。手でアクションをしたり、ヘディングをしたり、好き勝手にはしゃいでいる。作品のなかに自分も入り込んでいるんだから、そりゃあおもしろい。

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 観客の動きに反応して、光と影、映像、音が多様に変化する。子どもは素直だから、その双方向性のおもしろが本能的にわかっちゃうんでしょうね。すぐにコツを覚えて活発に楽しんでいる。未来のアート作品は観客の参加ではじめて完成する!と思わせられる。見せる側も見る側も、これからもっともっと変わっていくのでしょう。

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 そんなハイテク技術の作品とは違って、ちょっとオトナな作品がダチョウの羽根で作ったシャンデリア形や竹トンボ形のモビール。観客が歩く時のわずかな空気の動きでモビールが揺れ、廻り、動く。照明があてられた作品本体と壁に投影される影の対比で見せる作品に感銘を受けました。こんなおもしろさも捨てがたいですね。
 さあ、五感をフルに使って未来のアートを遊ぼう!

魔法の美術館
光りと遊ぶ超体感型ミュージアム
2018年7月14日(土)~9月2日(日)
神戸ファッション美術館

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2018年8月14日 (火)

銅版画の奥深き世界

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 六甲アイランドの小磯良平記念美術館で、「浜口陽三と南桂子」展が開催されている。どちらもパリを中心に活躍し、国際的に高い評価を得たアーティストだ。浜口陽三はヨーロッパでもすたれていたメゾチントを復興させ、しかもカラーメゾチントという技法を発明した。暗闇でボーッと光る赤いサクランボのシリーズは、世界中から愛されている。

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 浜口はさまざまなサクランボ作品で有名だけれど、サクランボだけではなくテントウムシやアスパラガス、レモン、スイカなども描いている。それらを通して「静謐」という言葉の真の意味を感じ取りました。真っ暗闇にほのかな灯りのように浮かぶ赤いサクランボ。究極の美学です。身近にある小さなモノに宿る大きな存在感に圧倒されます。

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 南桂子は浜口のパートナーで、パリでも日本でもずっと一緒に制作活動を続けたけれど、その作風はまったく違う。お互いアーティスト同士で尊重しあっていたのでしょう。同じ銅版画でもエッティングやドライポイント、たまにはメゾチントもとさまざまな技法にトライして自分自身の美を追求している。特にサンドペーパーを使った背景のぼかしは美しい。

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 もう一つ特徴的なのが、南の作品を見ていると物語を想像してしまう、ということ。彼女自身、絵本や児童文学を創作する作家でもあったからでしょうか。どこかやさしい心情を感じます。彼ら二人が生きた時代、まだ日本は戦争の傷跡から立ち直れず、日々の暮らしで精一杯だったと思います。そんな中で彼らが創り出したものは、奇跡の輝きを放っている。

ーふしぎな世界への小さな窓ー
浜口陽三と南桂子 展
2018年7月14日(土)~9月2日(日)
神戸市立小磯良平記念美術館

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2018年8月 8日 (水)

近代フランス風景画展です

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 旅するフランス風景画、というサブタイトルでプーシキン美術館展が開催されている。国立国際美術館でのこの展示は、おもに18世紀から20世紀初めにかけて約200年間のフランス絵画を、『風景』という切り口で並べている。もともと人物や神話をモチーフにした絵画の『背景』でしかなかった風景。それが印象派前後からもっと前面に現れてくる。こんな流れを、プーシキン美術館が所有する作品65点で手際よくまとめた展覧会だ。

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 自然への賛美、あるいは文明化された都市景観への憧れ。それらは近代市民社会が生み出した価値観や生活スタイルを色濃く反映している。またそれは王侯貴族や宗教的権威だけではなく、一般市民もアート作品を所有できるようになるのと対をなす動きだ。同時に、画家は注文を受けて描く職人から、自分が描きたいものを描く芸術家へ、変貌を遂げることでもあった。

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 やがて身近な自然のなかで新たな光を発見し、ヨーロッパ以外の珍しい風景に刺激され、風景そのものをメインテーマとする表現が生まれてくる。カミーユ・コロー、クールベ、ルノワール、クロード・モネ、シスレー、セザンヌ、ゴーギャン、アンリ・ルソーなどなど。『風景』という視点でとらえた西洋絵画の大きな流れを、そうそうたる巨匠たちの作品がとても雄弁に語ってくれます。

プーシキン美術館展
ー旅するフランス風景画ー
2018年7月21日(土)~10月14日(日)
国立国際美術館

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2018年8月 5日 (日)

天保山で木梨憲武展

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 もとサントリーミュージアムだったところ、天保山の大阪文化館で木梨憲武展が開催されている。自由な精神、おもしろいテーマ、軽妙なセンス、多彩な表現手法・・・。彼のアーティストとしての才能が爆発している、とても素晴らしい展覧会です。

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 ロンドンでの個展で披露した新作を中心に、絵画、ドローイング、映像、オブジェなど約130点を展示。段ボールの表と裏をうまく使ったり、木切れやテープをキャンバスに貼り付けたり。その自由な発想に、へぇー、ほぉー!と感心することばかり。

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 人と人とのつながりや人の暮らしのあたたかさ。住まいを象徴する窓や街並みのぬくもり。手をモチーフにした最新のシリーズなど、木梨さんの人間に対する愛が感じられる。情感もあり、ユーモアもあり、観ていてすごく気持ちがいい。

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 有名タレントの余技かと思っていましたが、とんでもない! ヒトやモノを見る目の確かさと優しいまなざし。これだけの才能は日本美術界にちょっといないのではないか。映画『いぬやしき』主演など、多芸多才な木梨さんはピークの時を迎えています。猛暑のなか出かけた甲斐がありました。 

木梨憲武展
Timing ー 瞬間の光
2018年7月13日(金)~9月2日(日)
大阪文化館・天保山

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2018年7月18日 (水)

ベラスケスの真のすごさ

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 ルネッサンスからマニエリスムを経てバロックに向かう時代に生きたベラスケス。フェリペ四世の庇護を受け、ローマに遊学したときに見たカラバッジョの作品に大きな影響を受けたに違いない。そして行きついた西洋絵画の頂点。迫真の描写力は他の追随を許しません。人物の内面を含めた写実という意味では、その後もこんなすごい画家は生まれていない、と言ってもいいでしょう。

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 ローマ神話の戦争の神マルスを描いても、それまでの画家のように英雄視して凛々しくたくましい姿にはしない。どこかくたびれたオッサンだ。神話の神も生身の人間と変わらず、おなかも減るし、くたびれるし、年をとる。もしかしたら戦の神が失業するぐらい平和な時代を作った王さまを賛美しているのでしょうか。考えすぎかな? いずれにしても伝統的な絵画作法ではない。

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 宮廷画家として王侯貴族とその家族を描いたベラスケス。でもセレブ以外にも目を向けて作品を残している。これは、王子カルロスの遊び相手として仕えていた小人を描いた作品。短い脚、大きな頭、こんな障害を持つ人も、さげすまず嫌悪せず、一人の人間としてありのままにしかも堂々と描いている。近代の人権意識が芽生えるもっと前の時代ですよ。ただ超絶技巧を極めたというだけではなく、物事の本質を見つめ、描く対象の核心にまでせまる表現を追求した点こそ、ベラスケスの偉大さだと思います。

プラド美術館展
ベラスケスと絵画の栄光
2018年6月13日(水)~10月14日(日)
 

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