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2018年8月11日 (土)

日本の美、ピース・ニッポン

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 その土地の気候や自然環境は、その土地固有の文化形成に決定的な影響を与える。食文化や生活習慣は言うに及ばず、宗教観や美意識など無意識の領域にまで作用する。そして独自の歴史をたどり独自の人間をつくり出す。堅苦しく言うと、そういうことだ。

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 みんなよく知っている風景。でも見たことのない美しい瞬間。ほとんどの人は知らないけれど、本当に美しい絶景。中野裕之監督が8年の歳月をかけて全国をまわりまとめ上げた、後世に残したい日本の美。111分に込められた思いは、素直な日本賛歌だ。

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 第一部「日本の精神」 第二部「日本の四季」 第三部「一期一会の旅」の三部構成でできている。世界が内向きになり、東京オリンピックも近付いたいま、なにか思想的に偏った企画に見えなくもないが、ドローンなど最新技術を使った4K映像は文句なしに感動的だ。

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 こうやって見ていると、つくづく日本は水の国であり、火の国でもあることがよくわかる。おかげで変化に富んだ景観と多様な生命相に恵まれている。それは反面、災害の多さにつながる。台風、洪水、地震、火山の噴火。そして恐ろしい自然災害と付き合いながら生まれてきた無常観なども含めて、私たちの美意識を形成する。

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 また美意識は時代とともに変わる。自然観も変わる。特に明治以降、西洋文明を積極的に取り入れだしてからは、それまでの日本人が気付かなかった「美しい景観」が生まれてきた。歴史の節目節目に、他の文化の刺激を受けるたびに美意識は磨かれ豊かになってきた。

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 自然が自ら作り出したものが景観の基本だが、人間が手を加えたり新たに作った人工的構造物にも、美を発見してきた。自然は善で人間は悪、といった単純な見方からは何も生まれない。モノの見方も考え方も、絶対はない。移り変わっていくことにこそ、美が存在する。こんな考えこそ、まさに日本的かもしれない。

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