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2018年8月

2018年8月29日 (水)

千住博&チームラボの「水」

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 堂島川のほとり、堂島リバーフォーラムが開館10周年を迎えたそうだ。それを記念して開催されているのが、『滝』の画家・千住博とデジタルアートの最前線を駆けるチームラボがコラボレーションした展覧会です。最強タッグが産み出した『水』をテーマにした作品に圧倒されました。

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 会場全面に次々と打ち寄せる大きな波の作品は圧巻だ。プロジェクター映像が壁に映り、そこかしこに設置された鏡のなかで逆巻く。寄せては砕ける荒波にぐるりと取り囲まれた感覚。そこの世界には自分と波しか存在しない。床に座ってじっと眺めている人がいる。ミニマルな音楽と相まって、展示会場は瞑想の場と化しているのだ。

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 大きな波と言えば北斎の「神奈川沖浪裏」が有名だけれど、この映像作品はそれに匹敵する名作だ。いや比較するものでは、龍安寺の石庭を現代に創り出したと言うほうがイメージしやすいかもしれない。荒々しく、清らかで、神秘的な水に、宇宙を見る。これこそ21世紀の芸術だと思います。

千住博&チームラボ
コラボレーション展「水」

2018年7月14日(土)~9月9日(日)
堂島リバーフォーラム

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2018年8月26日 (日)

スターリン後のドタバタ闘争

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 1953年スターリンが急死した後、ソ連の中枢で何があったのか? このあたりの知識も記憶もほとんどない。当時のソ連は大切な情報ほど隠して、表に出さなかった。そして私自身がまだ小さい子どもだったから。アーマンド・イアヌッチ監督の映画『スターリンの葬送狂騒曲』は独裁者の死後の熾烈な権力争いを描いていておもしろい。

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 どこまでが真実かわからないけれど、独裁者を支えてきた側近たちはどいつもこいつもろくでもないヤツばかり。そんな彼らが命がけで策を弄する姿は涙ぐましく滑稽だ。なにせ権力の座にとどまるか、外れるかは、彼らにとって文字通り死活問題。辛辣なブラック・コメディだけど、単純には笑えない。

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 一般論として、社会主義国は自由や人権に対する意識が低い。一人に権力が集中していく体制なので、独裁者が生まれやすいのだ。そしてその権力は秘密警察と粛清という恐怖と暴力によって維持される。それは昔も今も変わらない。こんな国でも選挙はある(たとえカタチだけのものにせよ)。大事な政策は合議制で決める(ただし全員一致で)。自由に意見を述べると死だ。

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 じつはこの映画、ロシアでは上映禁止になったそうだ。ここに登場する権力の亡者たちの直系の末裔であるプーチン大統領には許しがたい映画なのでしょう。これは旧ソヴィエトの半世紀以上も前の話。表現の自由、人権の尊重が当たり前の時代に育った私たちからみれば、すごく特異でいびつな社会です。

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 スターリンや毛沢東だけではなく、たくさんの権力者の死後に、こんな争いが起こっているのでしょうね。今もきっと世界のどこかで。ばかばかしく滑稽だけれど、笑いとばせない怖さがあります。長い時間をかけて築き上げてきた社会も、何かのきっかけでこうなる恐れはある。そして最近世界中がこんな方向へ変わりつつあるような気がして心配です。杞憂であればいいのですが。
 

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2018年8月23日 (木)

ボローニャ絵本原画展です

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 世界のイラストレーションの流れは? どんなイラストレーターが現れた? イラストの新しい技法は? 毎年さまざまなアイデアや、見たこともない表現で、うれしいサプライズを与えてくれる「イタリア・ボローニャ国際絵本原画」展。今年も西宮の大谷記念美術館で開催中です。
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 今年は約70ヵ国 3,053作品の応募があり、日本の10名を含む25ヵ国 77作家が入選を果たしたそうです。その入選作を一気に見られるチャンス! やはりあまり見る機会のない国のアーティストの作品が新鮮で目につきます。それはモチーフだったり色使いだったり。勉強になります。

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 ロシアの作家、ソフィア・ヴェンゼルによる「赤ずきんちゃん」や、スロヴェニアのアンドレア・ペクラールによる「わたしのお月さま」。そしてイランのアリレザ・コルドゥズィヤンによる「玉ねぎの伝説」などが特に印象に残りました。ね、どの国もどちらかと言えばなじみが薄いでしょ。

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 技法もアクリル、水彩、グアッシュ、鉛筆、色鉛筆、エッチング、アクアチント、パステル、チョーク、切り絵、コラージュ・・・と実に多彩。そしていろんな技法を組み合わせて表現力を高めている。ほとんどのアーティストがデジタルで仕上げているのは、時代の流れでしょうか。

イタリア・ボローニャ
国際絵本原画展

2018年8月11日(土)~9月24日(月)
西宮市立大谷記念美術館

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2018年8月20日 (月)

見る!触る!感じる!展覧会

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 夏休み時期に合わせて六甲アイランドで開催されている「魔法の美術館 ― 光と遊ぶ超体感型ミュージアム」。12人のアーティストが創り出す最新のデジタル技術を駆使した21作品に、子どもたちは大喜び! 夢中に遊んでいる。従来の美術館のイメージをガラッと変える展示空間です。

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 例えば、いろんな色のボール(?)が上からゆっくり降りてくる作品。3mぐらい離れた位置にいる人間の行動を感知して、ボールが跳ねたり上に昇ったりする。手でアクションをしたり、ヘディングをしたり、好き勝手にはしゃいでいる。作品のなかに自分も入り込んでいるんだから、そりゃあおもしろい。

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 観客の動きに反応して、光と影、映像、音が多様に変化する。子どもは素直だから、その双方向性のおもしろが本能的にわかっちゃうんでしょうね。すぐにコツを覚えて活発に楽しんでいる。未来のアート作品は観客の参加ではじめて完成する!と思わせられる。見せる側も見る側も、これからもっともっと変わっていくのでしょう。

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 そんなハイテク技術の作品とは違って、ちょっとオトナな作品がダチョウの羽根で作ったシャンデリア形や竹トンボ形のモビール。観客が歩く時のわずかな空気の動きでモビールが揺れ、廻り、動く。照明があてられた作品本体と壁に投影される影の対比で見せる作品に感銘を受けました。こんなおもしろさも捨てがたいですね。
 さあ、五感をフルに使って未来のアートを遊ぼう!

魔法の美術館
光りと遊ぶ超体感型ミュージアム
2018年7月14日(土)~9月2日(日)
神戸ファッション美術館

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2018年8月17日 (金)

真夏の元町水曜市

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 毎月第三水曜日に開催される「水曜市」。兵庫県を構成する五国、「但馬、丹波、播磨、摂津、淡路」の採れたて野菜や海産物、名産の加工食品や手作り雑貨などを販売するお店が商店街に並びます。とびきり安くて新鮮。しかも生産者の方から直接おいしい食べ方を教えてもらえる。8月は休みかな、と思っていましたが開催してました。

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 毎月これを楽しみにしている人も多い人気イベント。熱中症の恐れがあるなかでも、けっこうな人出です。でも、ここはアーケードのある元町商店街。直射日光は当たらないし、まわりの店のクーラーの冷気が暑さをやわらげてくれるし、真夏でも思いのほか快適なのです。次々とお店をめぐりながら、掘り出し物を物色。

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 いつも買うお気に入りは、安富町のゆず大福、新温泉町から出店しているアイガモ農法をやっている農園の合鴨スモークに淡路のタマネギ。夢前町の卵かけご飯にできる玉子は残念ながら夏場は売っていない。ここで初めて知る新しい野菜も楽しみだ。あれやこれやで、つい買い過ぎてしまうのが欠点か。

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 ちょっと話はそれますが、今回気づいたのは、ずらりと並ぶイニエスタのバナー。「アンドレス イニエスタ選手 ようこそ神戸へ!」。写真はスペイン語版だが、日本語版も英語版もある。本業のサッカーでも2戦連発と絶好調。スタジアムの入場者数はスゴイことになってるし、神戸の街おこしにも大いに貢献しているようです。
 

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2018年8月14日 (火)

銅版画の奥深き世界

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 六甲アイランドの小磯良平記念美術館で、「浜口陽三と南桂子」展が開催されている。どちらもパリを中心に活躍し、国際的に高い評価を得たアーティストだ。浜口陽三はヨーロッパでもすたれていたメゾチントを復興させ、しかもカラーメゾチントという技法を発明した。暗闇でボーッと光る赤いサクランボのシリーズは、世界中から愛されている。

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 浜口はさまざまなサクランボ作品で有名だけれど、サクランボだけではなくテントウムシやアスパラガス、レモン、スイカなども描いている。それらを通して「静謐」という言葉の真の意味を感じ取りました。真っ暗闇にほのかな灯りのように浮かぶ赤いサクランボ。究極の美学です。身近にある小さなモノに宿る大きな存在感に圧倒されます。

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 南桂子は浜口のパートナーで、パリでも日本でもずっと一緒に制作活動を続けたけれど、その作風はまったく違う。お互いアーティスト同士で尊重しあっていたのでしょう。同じ銅版画でもエッティングやドライポイント、たまにはメゾチントもとさまざまな技法にトライして自分自身の美を追求している。特にサンドペーパーを使った背景のぼかしは美しい。

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 もう一つ特徴的なのが、南の作品を見ていると物語を想像してしまう、ということ。彼女自身、絵本や児童文学を創作する作家でもあったからでしょうか。どこかやさしい心情を感じます。彼ら二人が生きた時代、まだ日本は戦争の傷跡から立ち直れず、日々の暮らしで精一杯だったと思います。そんな中で彼らが創り出したものは、奇跡の輝きを放っている。

ーふしぎな世界への小さな窓ー
浜口陽三と南桂子 展
2018年7月14日(土)~9月2日(日)
神戸市立小磯良平記念美術館

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2018年8月11日 (土)

日本の美、ピース・ニッポン

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 その土地の気候や自然環境は、その土地固有の文化形成に決定的な影響を与える。食文化や生活習慣は言うに及ばず、宗教観や美意識など無意識の領域にまで作用する。そして独自の歴史をたどり独自の人間をつくり出す。堅苦しく言うと、そういうことだ。

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 みんなよく知っている風景。でも見たことのない美しい瞬間。ほとんどの人は知らないけれど、本当に美しい絶景。中野裕之監督が8年の歳月をかけて全国をまわりまとめ上げた、後世に残したい日本の美。111分に込められた思いは、素直な日本賛歌だ。

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 第一部「日本の精神」 第二部「日本の四季」 第三部「一期一会の旅」の三部構成でできている。世界が内向きになり、東京オリンピックも近付いたいま、なにか思想的に偏った企画に見えなくもないが、ドローンなど最新技術を使った4K映像は文句なしに感動的だ。

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 こうやって見ていると、つくづく日本は水の国であり、火の国でもあることがよくわかる。おかげで変化に富んだ景観と多様な生命相に恵まれている。それは反面、災害の多さにつながる。台風、洪水、地震、火山の噴火。そして恐ろしい自然災害と付き合いながら生まれてきた無常観なども含めて、私たちの美意識を形成する。

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 また美意識は時代とともに変わる。自然観も変わる。特に明治以降、西洋文明を積極的に取り入れだしてからは、それまでの日本人が気付かなかった「美しい景観」が生まれてきた。歴史の節目節目に、他の文化の刺激を受けるたびに美意識は磨かれ豊かになってきた。

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 自然が自ら作り出したものが景観の基本だが、人間が手を加えたり新たに作った人工的構造物にも、美を発見してきた。自然は善で人間は悪、といった単純な見方からは何も生まれない。モノの見方も考え方も、絶対はない。移り変わっていくことにこそ、美が存在する。こんな考えこそ、まさに日本的かもしれない。

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2018年8月 8日 (水)

近代フランス風景画展です

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 旅するフランス風景画、というサブタイトルでプーシキン美術館展が開催されている。国立国際美術館でのこの展示は、おもに18世紀から20世紀初めにかけて約200年間のフランス絵画を、『風景』という切り口で並べている。もともと人物や神話をモチーフにした絵画の『背景』でしかなかった風景。それが印象派前後からもっと前面に現れてくる。こんな流れを、プーシキン美術館が所有する作品65点で手際よくまとめた展覧会だ。

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 自然への賛美、あるいは文明化された都市景観への憧れ。それらは近代市民社会が生み出した価値観や生活スタイルを色濃く反映している。またそれは王侯貴族や宗教的権威だけではなく、一般市民もアート作品を所有できるようになるのと対をなす動きだ。同時に、画家は注文を受けて描く職人から、自分が描きたいものを描く芸術家へ、変貌を遂げることでもあった。

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 やがて身近な自然のなかで新たな光を発見し、ヨーロッパ以外の珍しい風景に刺激され、風景そのものをメインテーマとする表現が生まれてくる。カミーユ・コロー、クールベ、ルノワール、クロード・モネ、シスレー、セザンヌ、ゴーギャン、アンリ・ルソーなどなど。『風景』という視点でとらえた西洋絵画の大きな流れを、そうそうたる巨匠たちの作品がとても雄弁に語ってくれます。

プーシキン美術館展
ー旅するフランス風景画ー
2018年7月21日(土)~10月14日(日)
国立国際美術館

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2018年8月 5日 (日)

天保山で木梨憲武展

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 もとサントリーミュージアムだったところ、天保山の大阪文化館で木梨憲武展が開催されている。自由な精神、おもしろいテーマ、軽妙なセンス、多彩な表現手法・・・。彼のアーティストとしての才能が爆発している、とても素晴らしい展覧会です。

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 ロンドンでの個展で披露した新作を中心に、絵画、ドローイング、映像、オブジェなど約130点を展示。段ボールの表と裏をうまく使ったり、木切れやテープをキャンバスに貼り付けたり。その自由な発想に、へぇー、ほぉー!と感心することばかり。

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 人と人とのつながりや人の暮らしのあたたかさ。住まいを象徴する窓や街並みのぬくもり。手をモチーフにした最新のシリーズなど、木梨さんの人間に対する愛が感じられる。情感もあり、ユーモアもあり、観ていてすごく気持ちがいい。

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 有名タレントの余技かと思っていましたが、とんでもない! ヒトやモノを見る目の確かさと優しいまなざし。これだけの才能は日本美術界にちょっといないのではないか。映画『いぬやしき』主演など、多芸多才な木梨さんはピークの時を迎えています。猛暑のなか出かけた甲斐がありました。 

木梨憲武展
Timing ー 瞬間の光
2018年7月13日(金)~9月2日(日)
大阪文化館・天保山

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2018年8月 2日 (木)

ストラディヴァリウスを聴きに行く

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 たんば田園交響ホールへ古澤巌さんのコンサートを聴きに行ってきました。古澤さんはポスターにもあるように、ストラディヴァリウスの愛称「サン・ロレンツォ」を弾いていることでも有名だ。クレモナの楽器職人アントニオ・ストラディヴァリ(1644~1737)が1718年に製作した「サン・ロレンツォ」は、フランス王妃マリー・アントワネットのお抱え演奏家ジョバンニ・バッティスタ・ヴィオッティが所有していて、王妃が毎日のように聴いていた(だろう)楽器だという。

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    またヴァイオリンの側面には「Gloria et divitiae in domo eius」(栄光と富は神の家にあり)と、アントニオ直筆の文字が記されているそうだ。約600現存するストラディヴァリウスでも、直筆文字があるのはこの一挺だけ。そんなこんなで曰く因縁が多い最高峰の名器なのだ。(このあたりのウンチクはネットでいっぱい出てきます、はい)

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 おっと、楽器の話ばかりで失礼いたしました。「神のヴァイオリン」と呼ばれる古澤さんはクラシック音楽だけにこだわらず、さまざまなジャンルのアーティストと共演し、自ら作曲もし、つねに新しい音楽を創造してきた。まさに現代を生きている音楽家なのです。そしてTVドラマなどにも出演してマルチな才能を発揮。型のはまらない自由な生き方が魅力的で、艶やかで伸び伸びとした音色にもそんな個性が現れている。

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 「世界でいちばん響きが好きなこのホールで、今年300歳を迎えたサン・ロレンツォを弾けるのは無上の喜びです」とステージで語る古澤さん。この日のプログラムもチャイコフスキー、サン=サーンス、ドビッシー、ショパン、パガニーニ、クライスラー、バッハ、フォーレから、ご自身作曲のオリジナル曲までじつに多彩。自らを「ヴァイオリン弾き」と称されるように、ヴァイオリンが好きで好きでたまらないという気持ちがよくあらわれた素晴らしいコンサートでした。来年もまた聴きに来たいと思います。

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