« 2018年6月 | トップページ | 2018年8月 »

2018年7月

2018年7月30日 (月)

モザイクタイルの歴史と未来

Photo_6
 大正時代に始まった多治見市のタイル産業は、戦後大いに隆盛します。モザイクタイルミュージアムでは、実際に全国で使われていた壁面を歴史資料としてコレクション。たとえば解体される銭湯の建物。建て替えられる家庭の風呂や流し台。「そうそう、小さい頃こんな風呂やった!」、「どこの家にもあったけど壊されたんやろなぁ」、と懐かしんでいるのは相当な年配者でしょう。

Photo_7
 えっ、モンロー⁉ 当時は著作権、肖像権の意識があまりなかったのでしょうか。色を合わせて形を整えて、かなり手間と時間がかかる作業です。ステンレスなどの新素材が出てからは、作られなくなってしまったタイル絵。これからちょっと流行るかもしれません。ただし高くなりそうですが。

Photo_8
 これはオブジェでしょうか。屋上の煙突や換気口のデザインでしょうか。とても美しい。そして時間と効率に追われる現代にあって、なにかゆとりを感じますね。身の回りにこんなモノが増えていけば幸せになれそう。役に立つかどうかより、美しいか、おもしろいか。人間はパンのみにて生きるにあらず。

Photo_10
 クルマもモザイクタイルでドレスアップ。ま、これはお遊びですが。この横のコーナーでは、子どもたちがモザイクタイル作りのワークショップで思い思いの造形を楽しんでいる。きっと感性ゆたかな人に育っていくのでしょう。こんな中から多治見タイルの未来を担う人材が生まれればいいなと思います。

Photo_11
 お隣にある多治見市笠原中央公民館のカフェ ド ソレイユも、さすがのタイル使い。(ここのクロワッサンサンドがウマイ!) 町を挙げてタイルを愛しているのが伝わってくる。藤森照信さんの建築が目当てで訪れたモザイクタイルミュージアム。すっかりタイル好きになって帰ってきました。

Photo_12
多治見市モザイクタイルミュージアム

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年7月27日 (金)

多治見のタイルミュージアム

Photo
 今年の猛暑は危険レベルに達しています。なかでも日本有数の暑さですっかり全国区になった多治見。藤森照信さんが設計した多治見市モザイクタイルミュージアムが新たな名所になっている。気温が40℃にもなる日に覚悟を決めて見学に出かけました。夏休みに入っているので、思っていた以上ににぎわってた。

Photo_2
 屋根(?)に松が生えた小高い山を思わせる、土壁のユニークな建築。タイルの原料を掘り出す「粘土山」をイメージしたそうだ。同じく藤森さんが設計した近江八幡のラコリーナにも、似たイメージの建造物がある。近い時期に建てられたのでしょうか。もともと土壁には思い入れが強いようで、多くの藤森建築に左官仕事の土壁が使われている。もっともタイルは土から生み出されるので、このミュージアムにはぴったり合っている。

Photo_3
 土は原始的な素材のひとつだが、光の当たり具合で多彩に表情を変える超未来的な見え方をするからおもしろい。そして多治見はタイル以前から陶磁器の生産地として栄えていた。そんな歴史の記憶として陶片を壁に埋め込んで、デザインの一部にしている。ダリ劇場美術館の壁面にパン形のオブジェを規則的に貼り付けて変化をつけているように。

Photo_4
 最上階の4階吹き抜け部分にはおもしろいオブジェが作られている。色とりどりのタイルの破片を使ってすだれのようにした「タイル・カーテン」。影もクモの巣のようで美しい。ひとつのテーマに特化したミュージアム(ここではタイル)は、やはりインパクトが強く魅力的だ。それに比べてどんな展覧会でもできる汎用性がある美術館は、薄味だと思う。ではその特化した展示内容は、次回ご紹介します。

Photo_12
多治見市モザイクタイルミュージアム

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年7月24日 (火)

木崎湖畔のブックキャンプ

Photo
 7月21日(土)と22日(日)の2日間、木崎湖のほとりでこんなイベントがありました。ALPS BOOK CAMPと alps book cafe。大自然のなかで本を楽しもう、という主旨で今年でもう5年目だそうです。涼しい風が吹く水辺でしかも松林が作る木陰の効果。猛暑の季節だけれど、熱中症の心配もなく気持ちよく過ごせました。
 Photo_2
 松林の中のキャンプ場に、テントや販売用の専用車などで100店あまりが出店している。本屋さんや雑貨屋さん、木工作家や染織作家、アウトドアギアやアンティークの店。あとジャンル分けがなじまないトラベル関連のグッズやイラストレーターや詩人がユニークな表現物を出したり、見ていて飽きないブースばかり。買い過ぎを抑えるのに苦労しますぞ。

Photo_3
 もちろんドリンクやフーズの店もたくさん出ている。しかもどの店もかなりクオリティが高い。こだわりのパンやマフィン、ビオワインやクラフトビール、タンドリーチキンやお総菜。少しずつ飲んでつまんで、いい気分になります。いま流行りのコーヒーでは何店もが焙煎や淹れる技、そして豆を選ぶ目を競っている。

Photo_4
 出店している人たちは、地元の松本や安曇野などだけではない。仙台や下北沢、山梨や高崎からこの企画に賛同してやって来ているそうだ。お客さんも全国各地から。駐車場に停められたクルマを見ても、はるばる遠方から訪れているのがよくわかる。だから特設ステージでのライブ演奏や映画上映など、キャンプの夜も楽しめる企画がたっぷりと用意されている。

Photo_5
 そして何と言っても子どもたちの楽しみは水遊び。ここなら海のように大きい波は立たないし、潮流もない。親も安心して遊ばせられる。第二会場へはモーターボートでの送迎(有料)が楽しそう。夏の信州、北アルプス山麓のアルプス ブックキャンプ。この場所ならではの魅力をいっぱい盛り込んだ、おもしろいイベント企画だと思います。

ALPS BOOK CAMP 2018

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年7月21日 (土)

伊那谷のそば粉ガレット

Photo
 信州奈川から権兵衛トンネルを抜けて1時間。エッ、ウソー! なぜだ! おいしいブルターニュがありました。上伊那地方もそばの産地。そこでそばを使った名産を作ろうと、フランス北西部、大西洋に面したブルターニュ地方名産のガレットで地域おこしをしようと思い立った(らしい)。寒冷なブルターニュでは小麦がとれないので寒さに強いそばを育て、何百年もそば粉ガレットを食べて生きてきた。

Photo_2
 信州伊那谷ガレット協議会という組織を起ち上げ、それはそれは本気で始めた(らしい)。この地域のビストロやカフェ、蕎麦屋さんから和食の店まで20数店が参加してそれぞれ独自の味を追求。そのなかで特別に輝いているのが上伊那郡南箕輪村にある信州大芝高原 味工房。名前だけ聞くといかにも田舎の何でも屋さん、と思うでしょ? ところがどっこい、本場の名店「ル ブルターニュ ブレッツカフェ」が入ってガレットやクレープを提供している。

Photo_3
 伝統的な生ハムやトマトや半熟卵のもの、レタスたっぷりサラダ感覚のもの、ブルターニュ名産の塩キャラメルをジェラートにかけたデザートガレットまで。感動の美味しさがそろっています。じつははここ、ブルターニュ以外にもパリに数店、東京の神楽坂、表参道、銀座、京都などにあるそうです。知らなかったけど。

Photo_4
 店内にブルターニュ王国(フランスに統合される前)の白黒の旗が飾ってあり、店員さんの制服もセントジェームスの白黒バスクスシャツ。そばクッキーや雑貨などを売る木製の販売台にもブルターニュの紋章が焼き印されている。いい雰囲気です。バカにしていてごめんなさい。期待をはるかに超えていました。

Photo_5
 そして忘れてならないのはシードル。ブルターニュ特産リンゴのお酒、天然発酵の本場の「ヴァル ド ランス」が4種類そろっている。湯飲みのような{ボレ」というシードル専用ボウルでサーブされるのもいい。予想をうまく裏切ってくれた味工房。家に帰ってガレットを作るためのそば粉とシードルも買って帰りました。ぜひまた行きたいと思います。※下記にリンクしているサイトのダサさを信じないようにね。

信州大芝公園
味工房×ル ブルターニュ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年7月18日 (水)

ベラスケスの真のすごさ

Photo_3
 ルネッサンスからマニエリスムを経てバロックに向かう時代に生きたベラスケス。フェリペ四世の庇護を受け、ローマに遊学したときに見たカラバッジョの作品に大きな影響を受けたに違いない。そして行きついた西洋絵画の頂点。迫真の描写力は他の追随を許しません。人物の内面を含めた写実という意味では、その後もこんなすごい画家は生まれていない、と言ってもいいでしょう。

Photo_4
 ローマ神話の戦争の神マルスを描いても、それまでの画家のように英雄視して凛々しくたくましい姿にはしない。どこかくたびれたオッサンだ。神話の神も生身の人間と変わらず、おなかも減るし、くたびれるし、年をとる。もしかしたら戦の神が失業するぐらい平和な時代を作った王さまを賛美しているのでしょうか。考えすぎかな? いずれにしても伝統的な絵画作法ではない。

Photo_5
 宮廷画家として王侯貴族とその家族を描いたベラスケス。でもセレブ以外にも目を向けて作品を残している。これは、王子カルロスの遊び相手として仕えていた小人を描いた作品。短い脚、大きな頭、こんな障害を持つ人も、さげすまず嫌悪せず、一人の人間としてありのままにしかも堂々と描いている。近代の人権意識が芽生えるもっと前の時代ですよ。ただ超絶技巧を極めたというだけではなく、物事の本質を見つめ、描く対象の核心にまでせまる表現を追求した点こそ、ベラスケスの偉大さだと思います。

プラド美術館展
ベラスケスと絵画の栄光
2018年6月13日(水)~10月14日(日)
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年7月15日 (日)

プラド美術館からベラスケス

12_2
 17世紀スペインは「絵画の黄金時代」と呼ばれ、スルバラン、リベーラ、ムリーリョなど偉大な画家を輩出した時代。なかでもベラスケスは別格で、フェリペ4世の宮廷画家として栄光の生涯を送った。のちにマネから「画家の中の画家」と称賛されたほど。たしかにその卓越した表現力は西洋絵画史上の頂点だといっても過言ではありません。今回のプラド美術館展はベラスケスの7作品を中心に、同時代の油彩作品が約60点展示されている。

Photo_2
 当時のハプスブルク家スペインはネーデルランドや南イタリア、中南米からフィリピンやマカオ、アフリカ大陸沿岸部などを支配下におさめ、太陽の沈まぬ帝国と呼ばれた。そして美術にも造詣が深く、世界最大のパトロンでありコレクターでもありました。新しい宮殿を飾るため、スペインの作家だけではなくブリューゲル、ルーベンス、ティツィアーノなどインターナショナルな芸術家と作品が集められた。それらが今のプラド美術館の母体になっている。

4_2
 何枚もあるフェリペ4世の肖像画のうち『狩猟服姿のフェリペ4世』が日本に来ている。しゃくれた下あごにタラコ唇、忘れようのない顔です。これはハプスブルク家の王さまの特徴。マドリッドで見ると歴代の王さまにこの特徴が現れているのがよくわかる。近親結婚による病気のようですが、そのせいかしばらく後にスペイン・ハプスブルク家の系統は途絶えます。そしてフランス系のブルボン家が王室を継承することになる。こんな時代に活躍したベラスケス。いまはプラド美術館の正面に銅像になって座っています。

プラド美術館展
ベラスケスと絵画の栄光
2018年6月13日(水)~10月14日(日)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年7月12日 (木)

チャペック兄弟の展覧会

Photo
 チェコの国民的作家カレル・チャペック。第一次大戦と第二次大戦の合間に、SF小説の古典『山椒魚戦争』やロボットという言葉を生み出した戯曲『R.U.R.』、そして『園芸家12カ月』など幅広い著作活動で有名です。その兄ヨゼフ・チャペックも画家として、童話作家として活躍しました。今回の展覧会は二人の共作もありますが、見どころの多くは兄のヨゼフの絵画作品です。

Photo_2
 少年や少女や動物など、小さい生命をあたたかいまなざしで見つめた作品が多い。いきいきとした表情、ユーモラスな情景・・・暮らしの身近なディテールを、ペンで、パステルで、油彩で軽妙に描いている。なかでも『こいぬとこねこは愉快な仲間』や『夏の少年たち』のシリーズは素晴らしい。意外だけれど、キュビズムの影響を受けた実験的な作品など、この時代の画家ならではの創作が200点あまり。

Photo_3
 この展覧会は「子どもたちを描いたチャペック兄弟の創作」をテーマに展示している。だからナチスに追われた、という鋭い社会批評を含む作品は含まれていない。ちなみに弟カレルはナチス侵攻前に病死。兄ヨゼフはナチスの収容所で死亡。難しい時代に生きた才能ゆたかな兄弟だからこそのやさしさ、あたたかさでしょうか。それを想うとジーンときます。

チャペック兄弟と子どもの世界
2018年7月1日(日)~9月9日(日)
芦屋市立美術博物館

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年7月 9日 (月)

ビーチサッカーの日本代表戦

Photo
 ワールドカップ2018、日本代表の活躍で大盛り上がりですね。で、ビーチサッカーにも日本代表がいて、過去のワールドカップ9回全出場を誇る世界の強豪国の一つだと知っていましたか? 監督はあのラモス瑠偉。降り続いた大雨がちょうど小康状態になったので、明石大蔵海岸まで観戦に出かけました。イングランド代表を相手にした国際親善試合。砂の上での熱戦を期待して。

Photo_2
 FIFAのアンセムにのって選手たちが入場し、両国の国歌斉唱。通常のサッカーと同じセレモニーです。でもゲームは1チーム5名、試合時間は12分間の3ピリオドで行われる。選手たちは砂の上で裸足でプレー。だから多くのプレーがボールを浮かせる足技から始まる。オーバーヘッドなどアクロバティックなシュートが多く、一瞬で局面が変わるスピーディな試合展開が魅力だ。ただし選手はすぐに足がパンパンになって大変だと思う。

Photo_3
 明石大蔵海岸公園はJR朝霧駅から歩道橋を渡ったところ。明石海峡大橋を見渡せる景勝地。ここのコートは、鉄分を含まず熱くなりにくい砂を6年前にオーストラリアから持ってきたそうだ。ビーチサッカーに適した環境を整備して、競技力向上にがんばっている。試合のほうは先行されては追いつく白熱した展開。4対3でめでたく日本代表が勝利しました。ニッポン、チャチャチャ!

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年7月 5日 (木)

日本サッカーにリアリズムを

Photo
 優勝するチームただ1ヵ国を除き、必ず負けて終わる。ワールドカップは長い予選期間を含め、すべての国が負けるために戦うゲームなのだ。
 もちろんたった一つの勝者になるために戦うのだけれど、本気で勝者を目指せるのは一握りの選ばれし国々だ。それもみんなわかっている。それ以外はタテマエで優勝を目指すとは言うものの、まずはその一握りに入りたいというのがホンネでしょう。そして一握りの国々は、どこも独自のサッカー文化を持っている。長い時間をかけて築き上げた勝利のスタイルと、一歩一歩真剣勝負を通して重ねてきた経験の歴史。
Photo_2  2018ロシア大会で日本サッカーは選ばれし国々の仲間入りへの貴重な体験をひとつ積み上げたと思う。無力感に打ちひしがれるだけという敗退も多いけれど、今回は未来への希望を見出したのではないでしょうか。それは勝者の文化を構成する大事な要素・リアリズムの概念を歴史に付け加えたから。
 グループリーグ第3戦、ポーランド相手に0対1の負けを選んでプレーした残り10分間。そして逆に、ベルギー戦で残り1分を切った場面でなぜショートコーナーを選ばなかったのか。リアリズムを考えるこれらの経験は未来に大きな財産になるはずです。美しく散るロマンからカッコ悪くても勝つリアリズムへ。日本サッカーが夢の実現へ一歩前進した大会でした。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年7月 2日 (月)

万引き家族と社会の多様性

Photo
 カンヌ国際映画祭で『万引き家族』が最高賞パルムドールに輝いた是枝裕和監督。『誰も知らない』や『そして父になる』などから今作へ、これまでの映画作りの姿勢を語っている言葉をインタビュー記事で見つけました。少し長いけれど引用させていただきます。

Photo_2
 僕は人々が「国家」とか「国益」という「大きな物語」に回収されていく状況の中で映画監督ができるのは、その「大きな物語」(右であれ左であれ)に対峙し、その物語を相対化する多様な「小さな物語」を発信し続けることであり、それが結果的にその国の文化を豊かにするのだと考えて来たし、そのスタンスはこれからも変わらないだろうことは、ここに改めて宣言しておこうと思う。

Photo_3
 是枝監督の基本姿勢がよくわかるでしょ。この映画の中には、万引きをはじめ、児童虐待や過酷な労働環境、老親の年金での暮らしなどなど、この家族を取り巻く「小さな物語」が散りばめられている。これらTVのニュースショーをにぎわす事件は、バブル崩壊後の日本に顕著になった「共同体の崩壊」と「格差社会」が背景にある。わたしたちも見ぬふりをしてきたから、声高に叫ぶ「大きな物語」に呑み込まれて多様な価値観が失われていったのでしょう。

Photo_4
 メディアにも同調的圧力がかかり、社会はますます内向き志向が強くなり、多様性は排除され、伝統的な価値観に基づく人間関係のみが押し付けられる。はたしてそれで幸せになったのか? 家族の絆とは。人間の絆とは。これからもっと真剣に考えていかないと人口減少社会は乗り切れない。血縁の、あるいは戸籍上の、というだけでは「家族」は成り立たないと思う。いろんな制度や常識のほころびと、基本的な人間の優しさと。いろいろ考えさせられることが多い映画でした。
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2018年6月 | トップページ | 2018年8月 »