熊谷守一が映画になった
山崎努と樹木希林が画家・熊谷守一とその妻を演じる『モリのいる場所』が味わい深い。監督・脚本は『南極料理人』の沖田修一。明治13年(1880)岐阜県に生まれ、昭和52年(1977)に97歳で亡くなる熊谷。この映画は何十年も自宅の庭から外に出たことがないという、仙人のような暮らしぶりの、彼のある一日をとらえたものだ。

ベニヤ板にアリやネコやチョウを描いた熊谷。単純化されたフォルム、鮮やかな色彩・・・庭で見つけた小さな命たちを天真爛漫に描く。子どもの絵のようにも見えるその作品、じつは徹底した観察から生まれている。「アリは左の2番目の足から歩き出すのですね」。庭に寝転んでじいーっとアリを観察して発した言葉は有名だ。

金銭欲もなく名誉欲もなく、ひょうひょうと生きる夫婦。文化勲章の受賞も断ってしまう。ただ淡々と過ぎてゆく日々にも、時代の波は押し寄せる。沖田監督は、まわりを取り巻く人々と熊谷家のちょっとした出来事を、あたたかい目線でユーモラスに描く。「へたも絵のうち」と考える画家と彼をささえる妻。敬意と愛情に基づいた素敵な人間関係がじんわり伝わってきます。
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