木崎湖を舞台にアートする
北アルプスという名がついた芸術祭だから、美しい山岳風景や日本の原風景のような里山にインスピレーションを受けたアーティストと作品が多いのは当然でしょう。でも信濃大町の魅力は山だけではありません。湖が3つもあるんです。そのひとつ、木崎湖のまわりにも面白い作品が集まっていた。お天気はいまひとつでしたが、かえって静かで良かったです。
五十嵐靖晃の『雲結い(くもゆい)』は、湖から天に向かって垂直に立ち上げられた組み紐の作品。木綿糸320本を束ねて太い紐を作る。そして8本の紐が高く高く組み上げられた。地元の人々との協働で生まれました。糸の総延長はなんと64km! 北アルプスの雪解け水が湖に集まり、やがて空の雲へと還っていく。そしてまた雪が降るという自然の循環を表現している。山の神、水の神へ捧げられたモニュメントだ。
もうひとつ印象に残ったのが、アルフレド & イザベル・アキリザンの『ウォーターフィールド(存在と不在)』です。カラフルな大漁旗を翻して帰ってきた船団のように、あるいはお祭りの祝い船のように湖に浮かぶ小舟。のように見えていたのが、近づくとプラスチックのバケツや小型家電やすだれ・・・。これらのガラクタ(?)は人が住まなくなった廃屋から集めたものだそうだ。
使っていた人の顔まで想像できるあまりにも日常的な道具たち。いまは使う人もなく、その固有の役割も離れ、ただ波間に漂う。この外国人アーティストの作品は、のんびりした風情とは裏腹に、私たちに鋭い問題意識を提示する。ゴミや資源の問題と過疎化の危機。湖の上でゆらゆら揺られる小舟は現代日本の象徴かもしれない。考えさせられました。
いろいろと刺激を受けた北アルプス国際芸術祭も、もう閉幕です。また3年後を楽しみに。
北アルプス国際芸術祭
2017年6月4日(日)~7月30日(日)
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