2017年7月15日 (土)

O JUN ×棚田康司の展覧会

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 画家・ O JUN(おうじゅん)と彫刻家・棚田康司の「鬩(せめぐ)」展が、伊丹市立美術館で開催されている。単なる二人展ではない。タイトルの通り、まさに二人の表現がせめぎ合っている。それにしても、『鬩』なんてむずかしい字は初めて見ました。せめぎ合いの、せめぐ。絵画と彫刻、ジャンルは違っても、一騎打ちのバトルを繰り広げ、しかもお互いのエネルギーの相互作用でもう一段上の展覧会にまで高められている。

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 1956年生まれの画家は、日常の事物や人物、あるいは抽象的な記号をさまざまな画材をミックスさせて描く。1968年生まれの木彫家は、ミステリアスで不思議な存在感の少年少女を生み出す。第3会場の奥の展示室では、随時公開制作も行われている。この日は棚田さんがノミと木槌で大きな木に対峙しておられました。

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 3つの会場と1階2階のロビーも使った128作品。同じモチーフだとすぐにわかる作品の並びもあれば、まったく脈絡なく並べられているように見えて、なにか妙に心が揺さぶらものもある。不安や不穏や喪失感・・・観ている展示空間からは、現代が決してハッピーなだけじゃないことを示している。

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 「絵画は壁に、彫刻は床に」、という常識を打ち破って入り混じって展示する方法も効果的だ。反発し共鳴し調和して、1+1が5にも10にもなる二人の世界。こんなスリリングな二人展は初めて見ました。まさに鬩ぎ合い、一騎打ちの真剣勝負! ちなみにこの展覧会は伊丹市立美術館の開館30周年を記念したものだそうです。

O JUN × 棚田康司
「鬩(せめぐ)」展

2017年7月8日(土)~8月27日(日)
伊丹市立美術館

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2017年7月 9日 (日)

いまあなたは幸せですか?

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 日本ブータン外交関係樹立30周年記念、『ブータン しあわせに生きるためのヒント』という展覧会が開催中です。1972年にブータン前国王により提唱されたGNH(国民総幸福)Gross National Happiness という考え方が、世界を驚かせました。GDP(国民総生産)を重視して経済発展を追求してきたけれど、モノはあふれるほど豊富になったけれど、はたして幸せになったのか? 文明の進歩は善だ、という概念に疑問を抱き始めた先進諸国の人々。国民総幸福という言葉は、とても深く響きました。

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 また2011年11月、福島県相馬市の小学校を訪れた現国王夫妻。子供たちに「龍を見たことがありますか?」と問いかけて話をされた内容。大人が聞いても感動的でした。こんな素晴らしい偉人が生まれる国ってどんなところなのだろう?と調べてみると、ヒマラヤ山脈の東端にある小さな国で、50年ほど前まで鎖国していたそうだ。だから世界の流れに呑み込まれていない。ムリな開発はせず自然環境を大切にし、暮らしの中にある伝統文化を守り、信仰に篤くおだやかな笑顔の人々。

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 「しあわせとは自分の持っているものを喜ぶことです」。「もしあなたが悪いことをすれば、悪いことが自分に返ってきます。もし善良であれば、いいことが自分に返ってきます」・・・。会場に掲出されているブータンの人々の言葉や、VTR映像で見る現地の生活、織物や祭礼用の仮面に見る丁寧な手仕事などに、「しあわせ」のヒントが隠されているかもしれません。

ブータン
しあわせに生きるためのヒント
2017年7月1日(土)~9月3日(日)
兵庫県立美術館

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2017年6月26日 (月)

人類の、のっぴきならない遊動

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 「INEVITABLE NOMADISM のっぴきならない遊動」という気になるタイトルの展覧会を、京都芸術センターへ観に行ってきました。黒宮菜菜、二藤健人、若木くるみ、若手アーティスト3人のグループ展です。
 10万年前にアフリカを出発したホモサピエンス。何万年をかけて世界のすみずみまで拡がった。その過程でいろんな場所に芸術の痕跡を残してきました。動く、遊ぶ、表現する、残す・・・これらはDNAに組み込まれた人類の本能かもしれません。

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 そんな本能を内包した身体性をベースにした平面作品、映像作品、立体作品、インスタレーションの展覧会。会場の京都芸術センターは、1993年に閉校になった明倫小学校を活用した多目的アートスペース。1階から4階までの元教室や階段の踊り場、廊下を使った展示は見ごたえ十分。
 三人三様、それぞれ面白いが、和紙や染料を使って「にじみ」や「ぼかし」で表現する黒宮さんの独創的な絵画にとても感動しました。由緒ある戦前の名建築と渾然一体となった、素晴らしい世界を産み出している。今後の活動に期待したい。

黒宮菜菜/二藤健人/若木くるみ
INEVITABLE NOMADISM
のっぴきならない遊動

2017年5月25日(木)~7月2日(日)

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2017年6月17日 (土)

陶とガラスのインスタレーション

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 田嶋悦子さんという陶芸作家の「Records of Clay and Glass」という展覧会が、西宮市大谷記念美術館で開催されている。
 草間彌生をもっとおどろおどろしくしたような生命力あふれる初期作品から、ガラスと陶をパーツとして組み合わせたミニマルな立体作品へ、そして陶の表面にアジサイの葉脈を転写し板ガラスとセットして並べるインスタレーションへ。1987年から2017年の最新作まで、15点の代表作で構成された展示はとても見ごたえがある。

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 田嶋さんの創作手法のアイデアは、陶磁器を本体を形作る『粘土』と上からかける釉薬つまり『ガラス』とに分解して再構築することにある。ただし、そんな理屈は表には見えない。聞けば「なるほど!」と納得するけれど。魅力的なのはシャープな造形と、おもしろい質感の対比です。
 一貫して花や葉っぱや蔓など植物をモチーフにして陶芸の可能性を切り開く田嶋ワールド。饒舌な表現から寡黙な表現に変わってきてはいるが、その根底にある「生命賛歌」は変わらない。

Etsuko Tashima
Records of Clay and Glass
西宮市大谷記念美術館
2017年6月10日(土)~7月30日(日)

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2017年6月 2日 (金)

恐怖とユーモアのベルギー美術

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 ベルギーの奇想。まず思い出すのはルネ・マグリットですよね。このアーティストの作品はすごく優秀なデザイナーの仕事のようなおもむきだ。お洒落なビジュアルアイデアを表現するリアルな描写力が目立つ。晴れと嵐。昼と夜。あちらとこちら。対立する概念をわざと並べ、既成の見方を揺さぶってくる。シュールレアリストの乾いたユーモア。これも20世紀の「奇想」と呼べるでしょう。

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 ベルギーは地理的にヨーロッパの中心にある。中世以降、強国同士が覇権を争う戦場になってきた歴史から、骸骨💀をモチーフにした作品が目立つ。19世紀後半のフェリシアン・ロップスの「舞踏会の死神」という作品。ジャポニスムの影響でしょうか、日本の着物のようなコスチュームで踊る女性は骸骨です。後ろにぼんやり見えるのが死神でしょう。不気味な絵だ。近代主義、科学万能時代に背を向ける反抗心も見てとれる。

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 骸骨をモチーフにしても、21世紀に入るとこうなるんだという作品。レオ・コーペルスの「ティンパニー」です。理科室の骨格標本(本物の骨じゃないでしょう)を天井から吊るし、ティンパニーにパンパンと打ち付けて音を出す。ここでは💀はもう恐れの対象ではありません。骨や死も医学的にも科学的にも解明され、ただ事実として淡々と受け止められている。
 ベルギーの奇想の系譜、これからどんな方向に向かうのでしょう。

ベルギー奇想の系譜展
2017年5月20日(土)~7月9日(日)
兵庫県立美術館

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2017年5月30日 (火)

ベルギー、幻想絵画の伝統

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 ヒエロニムス・ボス、ピーテル・ブリューゲル、ルネ・マグリット、ヤン・ファーブル・・・チラシにある名前を並べると、たしかにベルギーには不気味で夢があって不思議でシュールな作品を創造するアーティストが輩出している。フランドルの時代からアートの先進地のひとつだったベルギー。奇妙なイメージも受け入れる自由な風土だったのでしょうか。

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 それと商業が発達して、教会や王侯よりも富裕な商人が力を持った。だから伝統的な(中世的な)価値観から解放され、表現の自由度が増し人々もより面白い作品を期待したのでしょう。またヨーロッパの中心に位置し、たびたび戦場になった歴史とも深い関係があると思う。死を身近に感じ、ドクロや悪魔や怪物も現実の世界と同じレベルで存在していたのだ。

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 ポール・デルヴォー、ルネ・マグリットを経て現代のヤン・ファーブルやトマス・ルルイまで、なにか奇妙なのだ。ボスやブリューゲルの作品を動画にして見せてくれたが、これらを見ていて思ったのが、「ベルギーの奇想」って日本のアニメやゲームにすごくセンスが似ている。その昔に映像の技術があったなら、彼らはきっとアニメ作品や動く立体作品を創っただろう。おもしろい切り口の展覧会でした。

ベルギー奇想の系譜展
2017年5月20日(土)~7月9日(日)
兵庫県立美術館

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2017年5月27日 (土)

ライアン・ガンダーってなんだー

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 ライアン・ガンダー展が国立国際美術館で開かれている。サブタイトルは「この翼は飛ぶためのものではない」。1976年イギリス生まれ、新しいコンセプチュアルアートの旗手と目されるアーティストだそうだ。ライアン・ガンダー、初めて知りました。
 会場には若い人がとても多い。外国人も多い。よくある美術館の展覧会はシニアの観客が多くを占めるのだけど、これは違う。ポスターやチラシに使われた「あの最高傑作の女性版」という作品。白い壁面の前に立つと、この目玉が気付いて動く。壁に耳あり、障子に目あり。ユーモアたっぷりだ。

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 例えば「ポートレート」のシリーズ。肖像画そのものはなく、肖像画を描いたパレットがいっぱい並べられた作品だ。それぞれのパレットはそこで使われた色が残っている。その色の違いや組み合わせから、どんな人物を描いたか想像を巡らせる、というアイデアだ。だから決まったイメージはなく、鑑賞者一人一人が自分だけのイメージを作者と共同で創り上げる、という感じ。期せずして犯罪の共犯者に仕立て上げられたような、スリルと喜び。

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 作品だけでなく、作品にまつわる思考や美術に対する概念、見ることについての洞察、日常性への知的な関心など、作品創作の背後にある美と知の世界に鑑賞者の意識を誘導する。普段の生活で遭遇する身近な物事を素材として、オブジェ、インスタレーション、絵画、写真、映像、印刷物など、いままで誰もやらなかった多彩な方法論で制作された作品の数々。私たち観る側も想像力を全開にして楽しみましょう。

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 「ガンダーって、なんだー?」 現代美術は『難解』だ、という人も当然たくさんいると思います。それは決まった見方がないから、ではないでしょうか。でも、現代美術の面白さは、まさに「決まった見方がない、すなわち自分勝手に自由に見ればいい」というところだと思う。そして美術の歴史や過去の作品への接し方や経験によってどんどん面白さが深くなる。世界の見え方まで変わるような、充実した時間を過ごせたら幸せです。

ライアン・ガンダー
この翼は飛ぶためのものではない
2017年4月29日(土)~7月2日(日)
国立国際美術館

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2017年5月 6日 (土)

ジョルジュ・ルオーの凄さを知る

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 あべのハルカス美術館で開催中の「マティスとルオー」展。予想以上に楽しめました。とくにジョルジュ・ルオーの展示が良かった。マティスについてはニースのマティス美術館やヴァンスのロザリオ礼拝堂まで足を運んだし、ほかにも国内外の美術館や展覧会でよく観ている。しかしルオーについては油絵の具を厚く塗り重ねたスタイルがなんとなく重苦しく感じられ、無意識のうちに避けていたのかもしれない。

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 今回は若き日の水彩やパステルの作品から、独自のスタイルを築き上げ宗教画家と呼ばれる晩年まで、約70点の作品を一気に観られてとても楽しかった。キリストやマグダラのマリアを描く現代のイコンのような作品からは、深い精神性と崇高な情熱がじかに伝わってくる。大きな感動を与えられました。「重苦しさ」なんてまったく感じず、ピュアな魂に対面できた喜びで胸がいっぱいになりました。

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 そして驚いたことに、ルオーの展示作品の半分以上はなんとパナソニック汐留ミュージアムの所蔵。こんなに充実したコレクションが日本国内にあったとは、まったく知りませんでした。この展覧会の後も、東京に行けば気軽にルオー作品に出会えるなんて素晴らしいこと。これも今回の発見の一つです。『マティスとルオー 友情の手紙』(みすず書房)刊行記念の展覧会でした。

友情50年の物語
マティスとルオー
2017年4月4日(火)~5月28日(日)
あべのハルカス美術館

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2017年5月 3日 (水)

マティスとルオーは終生の友

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 それぞれ20世紀を代表するフランスの画家、アンリ・マティスとジョルジュ・ルオー。若き日、国立美術学校のギュスターブ・モロー教室で出会って以来、創作の悩みを打ち明けたり、家庭の問題を相談したり、病気の治療法をアドバイスしたりしながら、死ぬまで友情を育み続けたとは知りませんでした。

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 あべのハルカス美術館で開催中の展覧会は、1906年からマティスが亡くなる前年の1953年まで交わされた二人の手紙がいくつも展示され、とても興味深い。二度の世界大戦をはさみ半世紀にわたる交流。創作の方向性は異なっても、お互いの芸術への深い敬意と信頼が伝わってくる。
 あまり見る機会がなかった初期の作品から、マティス『JAZZ』シリーズやルオーのキリスト教をテーマにした晩年の作品まで、約140点を見ることができる。予想以上に充実した展示でした。

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 そしてマティス最晩年の作品で、個人的には最高傑作だと思っているヴァンスにあるロザリオ礼拝堂が、映像で紹介されていた。建物から神父さんの礼拝用のコスチュームまで、すべてがマティスの作品。その礼拝堂のディテールを見ていると、10年ほど前に訪れたときの身体が震えるほどの感動がよみがえった。近いうちにもう一度行かなくては、と強く決意しました。「いつか」なんて言ってると、いつどうなるかわからない年齢になりましたからね。あ、そうそう、マティスでよく出てくるモティーフはワカメのような海藻かな、と思っていましたが、サボテンの一種なんですね。この映像で分かりました。

友情50年の物語
マティスとルオー
2017年4月4日(火)~5月28日(日)
あべのハルカス美術館

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2017年4月27日 (木)

天正遣欧少年使節の展覧会

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 1582年(天正10年)2月20日、長崎を出発。マカオ、マラッカ、インドのゴアを経由。喜望峰を回って、1584年8月10日、ポルトガルのリスボンに到着。2年半におよぶ長旅だ。当時13~14歳の伊東マンショ、千々石ミゲル、中浦ジュリアン、原マルチノの遣欧使節団はマドリードやフィレンツェなど各地で熱烈な歓迎を受け、1585年3月23日ついにローマ教皇グレゴリウス13世に謁見がかなう。このとき教皇は感動の涙を流したと記録に残っている。
 プロテスタントとの戦いが続くなかで、カトリックの優越性を示したいローマ教会とイエズス会の思惑で企画された遣欧少年使節は、ヨーロッパ中に大きなインパクトを与えることに成功する。

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 神戸市立博物館で開催されている「天正遣欧少年使節がたどったイタリア 遥かなるルネサンス」展は、彼らの足跡をイタリアのルネサンス美術作品で浮かび上がらせようという企画。トスカーナ大公国、ヴェネツィア共和国、ローマ教皇領などの肖像画や貴石モザイク、メダルやタペストリー、ブロンズ像や甲冑、書籍や地図、陶器や磁器・・・計75点の展示だ。
 1590年、彼らが帰国したときはすでに豊臣秀吉がバテレン追放令を発布していた。彼らの後の人生は大きく揺らぐことになる。

遥かなるルネサンス
天正遣欧少年使節がたどったイタリア
2017年4月22日(土)~7月17日(月・祝)
神戸市立博物館

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