歳末はダンシング『第九』
モーリス・ベジャール・バレエ団と東京バレエ団、ズービン・メータ指揮イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団が創り上げる、ベートーヴェンの第九交響曲の世界。映画「ダンシング・ベートーヴェン」です。ゲーテと並ぶドイツ古典主義を代表するシラーの詩にベートーヴェンが曲を書き、ベジャールが振り付ける。世紀を超えた、なんと豪華な総合芸術。
この愛と生命の賛歌を、ダンサー、オーケストラ、合唱団の総勢350人が繰り広げる大スペクタクル=奇跡のステージを実現するための過酷な練習、度重なるリハーサル、そしてダンサーたちの情熱や苦悩など、1年にわたる制作過程を描いたドキュメンタリー。アランチャ・アギーレ監督、2016年の作品です。
多様な文化的背景を持つキャストたちが一つの目標に向かって懸命に努力する。そしてともに成し遂げる歓び。このプロジェクトそのものが『第九』のテーマなのだ。シラーの詩「すべての人々は兄弟になる 歓びの優しき翼のもとで」。民族、国家、固有の文化などに特有の価値概念や偏見を捨てて全人類を同胞とみなす思想を、ベジャールが『ひとつになれ、人類よ!』と理想をかかげた踊るコンサート。
重力から自由になったかのような肉体の動き。自由に有機的に躍動するドラマチックな群舞。魂を揺さぶるような管弦楽の響き。第九を作曲したころベートーヴェンは耳が聞こえなくなっていたそうだが、バレエで表現した第九を観たらきっと感動したに違いない。芸術は進歩する。文化は発展する。そして美は歓びを生み、異文化への尊敬と異民族との融和を進める力を持つ。そんな希望を感じさせてくれる作品でした。
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