ノルマでMETオペラシーズン開幕
メトロポリタン・オペラの今シーズンは、ベッリーニの「ノルマ」で開幕しました。古代ローマ時代のガリアを舞台にした、愛と復讐の物語。METライブビューイング版の第1作はカルロ・リッティ指揮、デイビッド・マクヴィカー演出、10月7日に上演された約3時間半の舞台です。
19世紀前半の作品、ベルカント・オペラの大傑作「ノルマ」は、マリア・カラスのレコードでよく聞いていた。そのマリア・カラスが「全アリアの中で最もむずかしい」と言ったという『清らかな女神よ』を、現代ベルカントの女王ソンドラ・ラドヴァノフスキーが見事に歌い上げる。第1幕の聴かせどころだ。このアリアだけではなく、女として母として部族のリーダーとして複雑な感情表現と高度な歌唱力を必要とするアリアが続くノルマ役。あらゆるオペラのなかで最もむずかしく体力もいる役柄ではないでしょうか。
第2幕ではアダルジーザ役のジョイス・ディドナートやポッリオーネ役のジョセフ・カレーヤとの二重唱、三重唱が素晴らしい。掛け合いから始まり、やがて同じ旋律をそれぞれが違う歌詞を歌う。それらが見事に融け合って一つの歌に昇華する。あぁ、音楽を聴く喜びが体中にしみわたる。
そして最後にノルマがとった行動が感動を誘う。崇高で情にあふれた、まさに気高い女神のよう。こうしてフィナーレを迎えた舞台は、ブラヴォーの歓声と拍手が鳴りやまず。何台もカメラを使い、アップも多用するライブ・ビューイング映像。観る側にとってはこんなありがたいことはない。でも演じる側は大変だと思う。歌がうまい、演技力がある、だけではダメなのだ。見栄えがたいせつ。体が楽器だから、昔のオペラ歌手は太った人が多かった。でも大スクリーンで顔や姿が見える映像時代、悲劇のヒロインが肥満じゃ、ちょっとね。
METライブビューイング 2017-2018
第1作 ベッリーニ 「ノルマ」
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